静かならざる幕開け
おーっと!両者リングの上に上がりました!熱い!熱い戦いが幕を開けようとしています!闘技場で誰かが戦うとき!何が起きるのか!
そう、賭け事です!(ダメ人間)
「やぁ、カンナちゃん。いい夜だね。僕に酷い目に遭わされる覚悟はしてきたのかな?」
「冗談だろリコリス。圧勝という言葉が陳腐化するくらいの史上でも稀に見る惨敗を君に捧げてあげよう。鼻をへし折るのは実は私の得意技なんだ。鼻をへし折り、腕をへし折り、最後に心をへし折ってあげる。」
「おーっと!勝負前の舌戦では先に仕掛けたリコリス君が、すでに勝負をする前に惨敗を喫したような顔で周囲に助けを求めるように見渡しています。策士弱い!策士メンタル弱いぞ!ちなみに実況はファイアーシスターズの長女ことスカーレットこと紅子と。」
「次女であるパーロスターターことパロ子です。解説は赤忍者さんをお招きしております。」
「忍者でござる。本日はよろしくお頼み申す。」
「ボクは…?」
皆で振り向く。子犬がプルプルしている。
「ボクだけ何も役割なしですか?」
「いやいやいや、そんなわけ無いでござる。解説を拙者と一緒にするでござる。ちゃんと話を振られたらそれっぽい感じで答えるでござるよ?」
「あ、はい!頑張ります!」
ぱーっと背後に花を散らして喜ぶロッサの純真さに一同は目を合わせられなかった。
「さて、前情報によると、リコリス殿は新スキルをひっさげての登場のようでござるな。かなりいい笑顔で秘密だと言われたので多分、全年齢だと引っかかるようなえぐみのある戦いを披露してくれると思われるでござる。」
「そもそも、あの二人は初遭遇戦で無言で首を掻ききったり、炎で全身を燃やしたり、安心させて毒を盛ったりしてたらしいですよー!」
「うわ、改めてリコリスのえぐみが強調されるエピソードですね。こうしてみると驚くほど悪役ですリコリス君。汚い。さすがリコリス汚い。」
「まぁ姉。勝負に汚いも綺麗もないよ。確かにどん引きするのは事実だけどね。」
「さて、対するカンナ殿はリコリス殿に結構なレベル差をつけての登場でござる。ステータスポイントでは圧勝。このゲーム以前の戦闘センスと共に、もはや正当派ヒロインなど通り越してただの暴力装置と化しているでござる。殴られたら拙者でも普通パンチでゲージ半分くらい削られると思うでござるよ。」
「ロッサ君はどっちが勝つと思う?」
「…うーん。普通に戦ったらカンナさんに勝てる存在自体が中々想像できないんですけど。リコリスさんが勝算の無い勝負を受けるとも考え辛いですよね。一発逆転の一手を考えているというよりは、これから先も見据えて常勝する為の、どんな相手にでも通用するようなスキル構成をしてきていると思います。それを踏まえた上で、踏み抜いてカンナさんの勝ちに賭けます!50z!お小遣い全部賭けです!」
「ばか、ロッサ!賭けてるって言ったら怒られるだろうが!あと私もカンナに賭ける。200z。」
「私もカンナさんですね。倍賭けしてもいいですよ。400zです。」
「それじゃあ賭が成立しないでござろう。あいや分かった。では拙者がリコリス殿に賭けるでござる。まとめて650zでござるな。」
「いいんですか?顔真っ赤にしてお金を払うことになりますよ?ドスカオマッカオ!ですよ?」
「いや、お金の問題よりもそんな良く分からない挑発をしてしまう子にAI教育してしまった拙者たちの責任の重さをずっしり感じているでござる。」
「おーっと、赤忍者さんとロッサ君がなにやらごにょごにょやっている間に、双方準備が整ったようです!戦闘開始のゴングが鳴り響きます!」
「ゴング、ゴング鳴らせ!!!」
解説席のアルコールでも一杯引っ掛けたようなテンションに押し流されるように、勝負の幕は開く。高き鐘の音は遠くまで響き渡った。
ちなみに賭け事は事前に知らされていなかったので、後日カンナちゃんに没収されることになるだろう。というヨチじみたハツゲンを残してホンジツはシメヤカにバクサンします。イヤーッツ!!
感想、評価はいつ何時であろうとも、24時間365日受け付ける!あ、嘘です。頭を垂れてお受け致します。(殊勝)




