利己主義と功利主義
リコリス君は決心したようですが、カンナちゃんはカンナちゃんで別の思いがあるのです。上手く噛み合うには凸同士ではダメなように。別に二人の行動理念が違っても良いんです。たぶん。てへぺろ。
私だ。江戸沢かんなだ。カンナちゃんと呼んでくれて構わないぞ。私は慣れ親しむ事をヨシとする人間だからな。リコリスみたいな腹黒功利主義者とは違うのだ。
さて、今回の戦いの始まりから紐解こうか。私たちのパーティのリーダーにして、私の現行バディであるリコリス君と何故私が戦うことになったのかと言う話だったな。ハッキリと言える理由が有るわけではない、ただずーっと私が考えていたことなんだが、あの男は別に利己主義者ではないという事に尽きると思うんだ。詳しくはそもそも知り合ってから1ヶ月やそこらの私などの知る由もないが、過去にリコリス君の価値観を決める何かがあったんだろう。それが彼を駆り立てて居るのは傍目にも分かり易い。
それが間違っていたんじゃないのか?と言う話だ。そもそも利己主義者なんて奴らにはおおよそ碌な奴が居ない。大体において利己主義者の定義とは、『人の行為は自分自身の利害に動機付けられるべき』であるという考え方だ。一見するとリコリスはそれに近いように見える。だが、あれは常に『最大多数の為の最大幸福』に固定されている。それはエゴイストとは言わない。その為に自分を平気で犠牲に出来る場合は特にだ。
ん?私が賢そうなことを言うと何故か皆が一様に不可思議な顔をするのだが、別に私はIQが低いわけではないのだ。暴力で解決できる事案は簡便に解決するだけで、考えなくてはならないことは考える。深く、深く。
おっと、話がそれたな。といっても実は全然こんなことは戦いの理由になんかなってない。リコリスの
主義主張が何であれ、別に一緒にゲームするだけの関係であれば全く問題ない。楽しく狩りをして、時にダンジョンに潜り、そしてさようならだ。ゲームなんだからそんなもんだろう。ぜーんぜんリコリスに問題なんてない。
あるとすれば私の方にだろうな。ハッキリ言って私の方が超利己主義なのだ、行動原理が自分の利害以外には全く結びつかない。「自分が自分が」ってやつだ。そして、そのこと自体には全く困っていない。だって世界中見渡しても私より強い奴なんてそうそう居ないんだから。ゲームの中で、私が不慣れな環境であると言うことを計算に入れてやっと私と同じくらい強い奴がぽろぽろ居て嬉しいくらいだ。ライバル、敵対、大歓迎だ。私は誰の挑戦でも受け付ける。24時間いつだってな。だから、私の行動を分析するとすれば驚くべきことにたった一つの事に行き着く。行き着いてしまう。
私は自分の為にしか行動しない
↓
リコリスを改心させるのは特に私の為にはならない
↓
ならば、何のために?
↓
リコリスが功利主義者であることが私の不利益になる
↓
???
ってな具合だ。話が長いって?じゃあシンプルに纏めちゃおう。私はリコリスに見てほしいのだ。『誰か』ではなく『私』を。皆じゃなくて私の事をだ。あぁ恥ずかしい。顔から火が出るようだ。私は認めなくてはいけないだろう。
人間の行動原理の一番初めはいつだって愛なんだってことをさ。好きで好きでたまらないリコリス君の為に一肌脱ぎたくって仕方ない乙女心ってやつを。
補項すると、自分の利益を追求する利己主義と、社会的最大幸福を追求する功利主義ってことになりますか。なりませんか?まぁいいんです。大体のニュアンスで。『みんなが幸せになる』のと『みんなで幸せになる』のもちょっとニュアンス違いますよね。リコリス君に飲ませたい欲求。ふふふ。愛ですね。
感想、評価どんとこいです!いや、お待ちしています。割と真剣に!




