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エンデバーエンドワンスオンライン  作者: 言離 猫助
第ニ章。大スノー域戦登録!
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疾駆潰走

走る。走る。それがお姉ちゃんを助けることに繋がるのなら。


一つ目の角を右へ。直進10m。次は左。教えてもらった道をひたすらに突き進む。視界の左上に起動させたタイマーがわたしに残り時間を教えてくれる。お姉ちゃんが再ログインするまで残り7分。多分復帰の瞬間には間に合わないだろうと思う。でも、私は私に出来る事をやるのだ。だから、私は走るのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


残ったはいいが、僕に出来る事なんてあまりなかったり。

そこら辺に転がっている石をいくつか試して、壁に人型を書いてみたり、地図マップを確認して凄い早さで走っているカンナの光点を見ていたりだ。チャット機能が生きていたら誘導もスムーズに行くんだけど残念ながらこのダンジョンに入った瞬間にPTチャットは断絶されている。ズルは出来ないのだ。


しかし、こちらにも制限時間と言うものがあって…っていっても僕が勝手に決めたんだけど、残り7分程度でスカーレッドが復帰してしまうのだ。あ、姉の方ね。そうなるともう色々厳しい。再び手だけが生えている状態になってしまうと流石に申し訳ないのでもう、殺すしかなくなってしまうのである。土葬から火葬である。妹ちゃんのパイロスターターには見せられないのである。


なんて言っている間にも、カンナちゃんは近づいてくる。3、2、1っとそっちじゃない!直前の曲がり角を器用に僕たちのいない方に走っていこうとするカンナに…しまった。合図する方法がないぞ。もう一周回ってくるのを待つなんて流石に出来ない。僕は咄嗟に叫んだ。


「ワン!」


行き過ぎた光点が戻ってくる。僕の姿を見て彼女はジトッとした目線を向けてくる。


「リコリス、君はなんて声で鳴くんだ。一瞬ロッサ君かと思ったじゃないか。」


はい、僕も今のはおかしかったと思います。はい。


「それどころじゃないんだ、カンナ聞いてくれ。」


「こっちもそれどころじゃない。ロッサ君はどこだ?合流してないのか?」


あぁ、カンナが本気でダッシュしてたのはロッサを心配してだったのか。


「ロッサは忍者と一緒にいるし、パイロスターター…あの姉妹の妹の方を迎えに行かせている。それよりも急用なんだ。この壁を壊してくれないか?理由は後で話す。」



「なんだ、造作もない。今話してよリコリス。」


壁の方を振り向きざまに、手にした刀を三閃。壁を切りつけたと思うと勢いを載せてヤクザ蹴りを白い人型の印に叩き付ける。と同時に壁が吹き飛んだ。比喩ではなく吹き飛んだのだ。僕の衝撃がお分かりいただけるだろうか。いくらこれがゲームの中だからとはいえ、こんなもの人間様のする攻撃ではない。


「ほかに何か会話の障害になるものはあるか、リコリス。」


「いえ、ありませんカンナさん。いえ、カンナ様。あ、もしよかったらお座りください。立たせてお話などトンでもございません!」


あわてて、少し大きながれきを勧める僕に大きくため息をつくカンナ。いや、カンナ様。


「君はその時々、突拍子もなく卑屈になる癖を直した方がいいぞリコリス。立ち話で大丈夫だから簡潔に状況を説明してくれ。」


状況を説明して欲しいのは僕なんだけど、状況は僕にそれを許してはくれない。仕方なくそのまま簡潔にありのままにあったことを話す。ついでに今目の前で起きた不可解な破壊現象についても話してみる。


「おおよそ理解したよ。どうだろうね。そんなにいきなり強くなる道理はないんだけど。ステータスもスキルも触ってないよ。それどころじゃなかったんだ。ロッサ君の事を考えると不安で不安で。途中にいたモンスターの残骸からアイテムを探ってくるのを忘れちゃったくらいだ。惜しい事をしたな。後で取りに帰るかい?」


はい、間違いなくそれでしょうカンナちゃん。


「モンスター…何匹くらいいた?」


「え、覚えてないよ。ごろごろいた。」


「石っころじゃないんだからごろごろなんて表現してくれるなよ恐ろしい。君はあれだ、ロッサ君なら普通に殺されてしまうくらいの強さのモンスターを『ごろごろ』倒してきたんだろ、しかもPTメンバーに分配されることなく一人で。そりゃあ強くなっててもおかしくはないだろう。ちょっとステータス見てみなよ。レベルいくつ?」


「レベル?ええっと…20だね。」


僕があまりの衝撃に目を覆って天を仰いでいるとカウンターが0になり、スカーレットが復活する。特に体が石になっているとかそういうこともなさそうだ。


「取り敢えず、立ちなよスカーレット。もうすぐ君の妹含む他のメンバーが合流してくる予定だ。立てるかい?HP減少以外に体の具合が悪い所は?ない?そうよかったね。ちなみにこいつのレベルが目を離したすきに20レベルになっているんだけどどう思う?」


僕の手を取って立ち上がったスカーレットは、僕の話を聞いて立ち暗みを起こしたように膝に手を突く。


「なんだそれ、ありえねぇ。」


状況が共有できる仲間がいるというのは素晴らしい。二人で絶望しているとこの場で唯一問題を問題だと認識していない女が首をかしげている。可愛いが、可愛いよりも普通に恐ろしい。


「とりあえず、ダンジョンからの脱出を提案するよ。もうそれどころじゃないだろ。あっちもこっちもひっちゃかめっちゃかだ。」


「うーす。」

「わかった。リコリスの提案に従おう。」


そうこうしていると、残りのPTメンバーが合流してくる。パイロスターターが無事な姉の姿を見ながら駆けてくるが、もう全くそんな気分ではない姉に軽くあしらわれている。


「とりあえず、一回撤退しよう。ダンジョン探索は一回立て直しが必要だ。」


僕の話に否定的なものは一人もおらず、大人しく全員で撤退することになった。ちなみに帰り道は僕の地図スキルで最短距離で帰ることができた。モンスター?カンナちゃんが一掃したさ。それこそ疾風のような潰走劇であったとここに記しておこう。潰走したのは結局僕とスカーレットの精神状況だけであったとも記録に残しておかねばならないだろう。

はい、カンナちゃん無双でした。パワーレベリングってレベルじゃねーぞ。


感想、評価を心からお待ちしております。はい!

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