遺跡突入(赤忍者視点)
赤忍者つよーい(棒読み)こいつは相当の悪ですぜ。
俺…ではなかった。あっしがこのダンジョンに違和感を覚えたのは入って10秒もしないうちでござった。気配察知スキルで歩いて数分もしない所で行き止まりになっているのを感じる。いや、これは相当に大雑把なスキルなので本当に「感じた」だけでござるが。
言うべきか言わざるべきか。
PTの利ではなくどちらがより「美味しいか」についてを判断基準にしてしまう辺りは自分でも業が深いとは理解しているつもりである…じゃなかったござる。
「ロッサ殿」
「はい、なんでしょう?」
きょとん顔でこちらを見るコボルト族の子供に、服の端をつかませる。
「ここ握っておくでござるよ。断ると困るのはきっと自分でござる。」
「なにかあるんですか?」
しっかりと服の布地を(肉球で!)つかみながら何かに勘付いたように尋ねてくる。なかなか聡い仔であるな。どうしてこのPTに着いてきているのかは知らないが、どう考えてもプレイヤーではありえないでござる。ならば、命は一つ限り…無駄に散らさぬが華でござろう。
「何が起きるかはあっしも知らないでござる。あぁ、でも多分あれでござるね。このPTメンバーは自我が強すぎて全く周囲に対する警戒心が薄いのが問題でござる。リコリス殿やパイロスターター殿がその辺りの担当であろうに適当でござるなぁ。」
「それ、忍者さんのほうが担当ですよね…。」
聡いコボルトの仔…もといロッサ殿は周囲に危険を促そうとする。でも残念。もう遅いのでござる。
「みなさーあーーーー!」
ほら。予想通り分断系の転移罠でござった。きれいに分断され、周囲にはあっしとロッサ殿以外は居なくなったでござる。
「もー!忍者さん絶対タイミング図ってたでしょう!」
「もちろんでござる。物事には最高のタイミングというものがあるでござる。さぁ行くでござるよ。」
「え、どこに?」
混乱したように尋ねるロッサ殿。ふむ、愛玩動物的な可愛さは強いでござるな。デフォルメしてフィギュアにすれば大儲けでござる。うはうは。
「各々、どうやら別個に別れてしまったでござるな。まぁ仕方ないでござる。不幸な事故、もとい罠でござる。あっし達はボス部屋を目指して一直線でござる。それが一番『美味しい』でござる。」
困ったように眉を顰めたまま、それでも健気に着いてくるロッサ殿に警告しておく。
「ちなみにロッサ殿?」
「まだ何かあるんですか?」
「うん、実はあっし。戦闘力無いでござる。」
「は?」
「スキルは気配察知と気配を消すこと、それに相手の状態異常に特化しているでござる。武器は普通にナイフしかないでござるし。普通の生物相手ならそれでも余裕でござるが…」
曲がり角を指さす。もう目前の角からは、鉱石で出来た小さなオオカミのようなモンスターがこちらに…あ、今気づいたでござる。
「あんな感じの無機物っぽいの相手にはほとんど役立たずでござる。」
「え、じゃああれどうするんですか?」
「いい感じで処理するしか無いでござろう。あっしが目晦ましと麻痺の状態異常をかけるのでロッサ殿が倒すでござる。ちょっと思ったでござるがロッサ殿がもう少し強くなった方がお二人にはいいと思うでござる。」
もちろん後付けでござる。
「え、でもアレはどう見ても石なんですけど。」
あっしはウインクをして、こう言ってやるでござる。
「だって、その方が『美味しい』でござるよ?」
「基準が分かりません!!」
今日のダンジョンにはコボルトの悲鳴がよく映えるでござる。
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