山の上の遺跡
2か月ぶりの再開…!完全復活です。よろしくお願いします!
僕たちは雪の中を歩いていた。その意義は失われ、足取りは重く、果ての無い白銀の世界で僕たちはただの異邦者として冷たく世界に晒されていた…。
「おい、ロッサ。」
「…」
「ロッサ!お前言ってたよな。小屋と小屋との間を縫うようにして進めば良いって。迷う事なき一本道だって。」
「…」
「なぁ、もう最後の小屋を出てから2時間くらい経つんだけど。」
「…さい」
「何か言ったかロッサ。吹雪で声が聞こえにくいんだが」
「うるさいって言ったんですよ!迷いましたよ?迷いましたとも!」
「言い切ったなロッサ!そこになおれよ!」
「リコリスさんみたいに鼻がきかないヒト族には分からないと思いますけどね!」
と、怒った犬そのものみたいな顔で睨んでくる。つまり可愛い。
「だって、雪の臭いしかしなくて、僕一人で頑張って探知してるのにリコリスさんは皆とくっちゃべってばっかりで!正直、リコリスさんがアドバルーンよろしく空中から探してくれたら全く苦労はしないんですけど!」
「それは違うな、ロッサ。僕は一応曲がりなりにもこのPTのリーダーだぜ?他にも忍者とかいるだろ?上手く使えよ。ほら、命令するのだ。」
「や、だめっす…僕人見知りするんです。新しい人に慣れるには、まだ時間がかかるんです。特に忍者の人はなに考えてるのか分からないからMAX怖いです。」
「拙者は怖くないでござるよ?ほーら偵察命令するでござるヨー」
「ほーら、忍者は怖くないぞ、命令してみろって!」
と、パワハラごっこを楽しんでいたら横から思わぬ邪魔が入った。いや思った通りの邪魔だった。
「おい、リコリス。何をロッサ虐めてるんだ。簀巻きにして高低差300mのスカイダイビングに紐なしで挑戦させてやろうか?」
でた、やりかねない人カンナ様である。さっきの戦闘で少し元気がなくなっていたがちょっとロッサと戯れていたらすぐに元気になって帰って来た。決して虐めてない。ごっこであるとここに強調しておこう。しかし、紐なし300mバンジーとは強気に出たな。ここはなだらかな山だから、300mも下ろうと思ったらかなりの勢いで地面に削られながら行く必要があると思うんだが。畜生か。
「あの、カンナさん。リコリスさんは本気じゃなくて、だから300mのスカイダイビングは勘弁して上げて下さい…。」
消え入りそうな声でカンナにお願いをしてくれるロッサ可愛い。もう正ヒロインもロッサで良いわ。オスでしかもコボルトだけど。
「良いかロッサ、優しさと甘さは違う。こいつらの悪ノリを悪意だと感じた瞬間に「アレ」をぶち込んでやると良い。基礎はもう会得したはずだ!」
「はい、カンナさん!いえ、師匠!僕は立派なコボルトになります!」
暑苦しい師弟愛を見ながら「アレ」とやらがなにか。自分に対処できる物だったら良いなぁ。などと思っていたら忍者が耳打ちをしてきた。
「多分、もう15mも進んだ先に不自然な盛り上がりがアルでござる。感からすれば人工物の可能性が高いかと。」
もう、忍者便利で、しかたがない。いいじゃんもう忍者ゲーで。お殿様プレイみたいじゃんかよ。
その事実を遊んでるカンナたちに告げるか、それともテンションが下がって全く会話に付いてこない炎熱姉妹に告げるかを考えながら雪道を進んでいく。時間は午後4時。思ったよりも麗らかな山の天気に、黙って誰かが気付くか見守ろう。そう、考える性格の悪い主人公だった。




