獣少女かんなちゃんの事情(1)
2016/08/21更新しました
ヒロインを作ろうと思って書いてたら気が付いたらすごい枚数になってたので分割して一回流します。これ、ヒロインか?って疑問は置いておきます。カンナちゃんは鬼強い!
私は子供の頃から、体を動かすのが好きな活発な生き物だった。
色々なスポーツを始めてはめきめきと上達し、良い所までは行くのだが、すぐに飽きてしまうような可愛い生き物だった。いや、あまり周囲から可愛いと言ってもらえない悪ガキだったので自分で言ってみたんだが意外と恥ずかしいな。
そう、話を戻そう。私は、別のスポーツに手を出しては、家中にスポーツ用品を溢れさせていたのだが、何となく思い出が籠っているような気がして飽きてしまったとしても、私は物を捨てるのが嫌いだった。
なので、親に頼んで2階の一室を借り、私室とは別に物置にさせてもらっていた。スポーツ用具売り場ばりに物が揃っており時々私は思い出と共に、それらを磨いている。だがしかし、悲しい事に小学校を卒業するころには、スポーツ荒らしとして私の名前は近隣に知れ渡り、スポーツ少年団や運動部からは敬遠されてしまっていた。
当然といえば当然である。私でも予め来ると分かっている災厄からは逃れたいって気持ちはわかる。スポーツを続けてエースとしてチームを支えるのならば兎も角、主戦力級になるころに辞めてしまうのだからいい迷惑だ。
これが、言うならば1回目の手詰まりだった。
そこで私を拾ってくれたのが剣道の師匠だった。私の教育に手を焼いた両親に紹介を受けた師匠は、その日のうちに道場に招き入れ、見学もそこそこに、出会った初日から私のことをぼこぼこにした。そう。そりゃあもうコテンパンに。
自分で言うのもなんだが、私はそこそこ見た目にも自信があったし、学校の勉強もまぁ出来た。その上で運動神経は同年代では飛び抜けていたから圧倒的な敗北など初めての経験だった。
そこで止めておけば良いものを、私という愚か者は毎日毎日、竹刀を持って師匠の道場に向かい、ぼろぼろになって家に帰っていた。負けず嫌いというのもあったが、単純に圧倒的な敗北というものが物珍しかったのだ。変態か私は。そして、母は自分が紹介したくせに1週間もしないうちに心配し始めて、道場に通うのをやめさせようとした。
私の母には、そういうところがある。心配性なんだか…いや、心配性は違うか。心配性な人間は自分の娘を剣に心を捧げるような鬼に渡したりはしない。
まぁ、当然のように私が折れることはなかった。残念ながらあの頃の私は、人の話を聞かなかった。
その晩、母に説得されて父が出張ってきた。剣道で勝負をして、私が勝ったら剣道を続けて良い事になった。父は有段者だった…つまり有段者が中学生の娘に本気で竹刀で殴りかかって来た訳だが、家庭環境としては如何なもんだろうか。ひょっとして私が悪いんじゃなくて親が悪いんじゃないか?
が、勝負のあとに見るも無残に中学生の娘に、ぼこぼこにされた父は食事も喉を通らないくらいに憔悴した。心と体が悲鳴を上げる…とは父の後日談だ。まぁ自分で挑んだ勝負だから仕方ないけどね。
そして道場の中でも段々と格付けが上がっていき、師匠は剣道だけではなく色々な格闘技や戦闘術を教えてくれるようになった。世界中、古今問わず様々にだ。
今思えば師匠は私を何にしたかったのだろう。人間兵器か?
何になりたいのかが分からないままに私は強くなって行き、やがて師匠以外に私の相手ができる人はいなくなっていった。私の序列が道場で2番目になった日に師匠は道場を締め切って私と二人っきりになり(中学生の女の子と二人っきりって凄く犯罪臭がする!!!)
すごくいい笑顔で中学生の女の子に向かってこう言った。
「道場にあるものは何を使ってもいいぞ。真剣もありだ。本気でかかってこい!ヴァーリツゥードだ!」
確かに師匠は強かった。だが同時の目は節穴でもあった。師匠は気づいていなかったのだ。私が「剣道」では道場で2番目の強さになっていたことに。そして何でもありなら師匠ではもう相手にならなくなっていたことに。
それに師匠が気付いたのは、道着を棒手裏剣で床に縫い付けられ、超いい笑顔で女子中学生が木刀を振りかざしてくるのを呆然と眺めながらだったのだ。流石に真剣では切り掛からなかった、私の優しさは何故か、誰も認めてくれない。
次もカンナちゃんのターン!
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