炎宴の後で
有り体に言えばいつも通りの魔力の枯渇だった。今までで一番疲れた戦いの後で、傍にあり意外と損傷のない、小屋の藁敷きのマットの真ん中に倒れこんで手招きでロッサを呼ぶ。
「ねぇ、そこらへんに赤い色の忍者がいるとおもうんだけとひこずってきてくれない?」
「あの人たち敵ですよね?大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。同意の上での決闘で捕虜ルール守らない奴はいない。演じるの根幹だからな。ただ情報は漏らすなよ?詳しい話はリコリスとしてくれとか僕には知らされていません。とかで誤魔化して最悪逃げておいで。どうしようもなくなったら僕が出るから。」
「あいあいさー!」
元気の子、ロッサ君が走っていくのを見て本当に意識を手放すくらいに脱力する。ワラ敷のベットにシーツをしただけの簡素な作りだが手触りがよく大変に勝利の余韻に浸らせてくれる。時間的には赤忍者、カンナ、炎姉妹くらいか。特に駆けてくるであろうカンナの帰還を前に体裁を整える必要がある。愛すべきベッドに別れを告げてベッドの端まで転がって手に着いた壁に体を起こして寄りかかってみる。傍らにナイフを置けばいつでも気を抜かない堅ゆで卵の完成だ!まぁ見た目だけだが。
気が付けば周りには人が一人、また一人と小屋の中に思い思いに戻ってきていた。敵も、味方も、り。言葉少なく暖炉の前でぼーっとしている。僕はこの感じが大好きなんだが一応の勝利者として名乗りを上げる必要がある。
「全員そろったようだね。まずは重畳。知っての通り僕がリコリスだ。聞きたいこともあるだろうがまずは僕から話させてもらおう。」
「口火を切るって奴ですか。それは私の十八番なんですがね。」
と妹が茶々を入れてくるがファイアージョークは長くなるので適度に放置する。
「さて、今回のバトルロワイヤルは取り敢えず僕の勝利で終わりとさせていただこうと思う。特に賠償を、などと言うつもりはない。ただ一つだけ提案がある。僕たちはこれからダンジョンアタックを敢行する予定がある。出来れば君たち『紅組』にも参加してもらいたい。ちょうど6人で1PT上限でいいバランスだと思う。どうかな?」
「雪山のダンジョンアタックですか。宝の匂いがするなぁ妹。」
「油断しちゃだめですよ姉。今PTにさりげなくNPC混ぜて自分の利益を上げようとしましたよリコリス。」
「でも、これは考えようによってはチャンスでござるよ。某たちはお宝求めて山に登ってきたのは間違いないが、BOSSの情報もダンジョンの情報も持ってないでござる。ここは正当な歩合を持って取り敢えず交渉してみるのは手でござる。」
「いや公平はない。負け犬ども。負けた癖に偉そうにするな。利益を6人で割ったら16.7%だ。お前らには一人10%で仕事の依頼をしたい。それ以上の報酬を期待するんならお前らは要らねーから雪山で好きに遊んでろよ。もう理解できてると思うがダンジョンまでの道案内がいてこの短時間で1PT単独とはいえフルパーティで参加出来る事なんてそうそうない。それに加えて前衛後衛のバランスもかなりいい。」
「私は面白いと思うね」と姉が言った。
「じゃあ止める権限が私にはありません」と妹が肩を落とした。
「二人が行くなら拙者も行くでござるよ」と忍者が全く忍ぶ様子無く快活に語った。
「二人は?」
「私みたいな負け犬にも声をかけてくれるのかいリコリス。優しいんだなぁ。いいよ、君の方針に従おう。」とこの世の終わりみたいな顔をしてカンナが言った。こいつの撃たれ弱さッたらないな。
「ボクはもちろん行くですよ!案内は任せてください!」
こうして即席だが6人の臨時PTは組まれ、やっとこさダンジョンに向かう算段が付いたのだった。
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