くっちゃべり
「と、いうわけであとはカンナしだいだからね。取り敢えず先に進みます。異論ある人ー」
「ありませーん!」
「…ない。今のところは。」
というわけで出発することになった。この状態のカンナを前衛に据えるほど鬼ではなかった僕は前向きにロッサを前衛にしつつ、僕が元々あったミニマップ機能をレベル2にレベルアップ+常時鑑定眼EXを発動させてさらに新スキル
『俯瞰風景』《ふかんふうけい》上空より自分の視力と同等の視界で見渡した情報を得ることができる。
を組み合わせて作った即席レーダー探知機スキルにより周りの情報が手に取る様に入るようになった。多分カンナにバレたら殺される…。常時発動が基本だが知り過ぎてはいないように細工するのが大変だ。それと、一番レベルの低い状態異常レジストスキルを取ったらドライアイも防げるようになった。全く死角がないぞ。僕様強い!もちろん自分が強くなるようなスキルは一つもとってはいないので戦闘になると彼岸花頼りだ。
っていうか3KMくらい離れてる次の小屋も普通に見えてる。ちょっとこのシステム最強すぎはしないだろうか。
「とりあえずあっちね。」
「おいリコリス。この雪崩の後始末はいいのか?」
「どうしろって言うんだよ。普通に立て直せないだろ。帰りに村によって説明するしかない。別に俺たちが原因って訳じゃないんだしな。」
とりま、歩くしかない。カンナがだんまりなのでロッサと二人で元気に会話してみる。
「そういえばロッサはしばらく体鍛えてたんだよな。何かできるようになったの?」
「いえ、筋トレと走り込みが主だったのでスキルは何も。ステータスは冒険者ではないのでいくら強くなったかはわかりませんし。」
「あれ、自分でステータス見れないの?」
「見れませんよ。神殿で高いお金を払うか、冒険者様とパーティを組んで見てもらうかです。」
「そうかー。やり方わからんけど、また誰かに聞いてステータスの見方覚えとくな。」
「はい!敏捷度と体力は上がっている気がします!」
「いいね。あとは器用度上げなきゃな。まぁ前衛の育成はカンナに任せてるから色々教えてもらいなよ。俺はもちろんロッサにも期待してるんだからな。」
「ボクにもですか?」
「そりゃそうさ。何れは前衛系…タンクは無理かもだけど、短剣持ってシーフスタイルでダメージディーラーしてくれるといいよね。」
「半分くらいわかりません!」
「タンクはガッチガチの防具に固めて相手を挑発してパーティの壁になる係だな。」
「痛そうですねぇ、」
「それに立って居れば良い訳じゃない。味方の被害を全部食い尽くすくらいの気概がないと何の意味もない出来人形だね。今は便宜的にカンナが請け負ってくれてる。ただ、前衛系の作業をすべて任せるには負担がデカすぎるからな。僕が魔法を捨てて最前列で敵の憎しみを一手に請け負う係でも最悪はいいかな。ちょうどステータスはVITに全振りしてるからな。」
「ダメージディーラーっていうのは?」
「それこそ前衛でごりごり敵を潰す係だな。タンクが敵を引き付けてそれを弱点ごと切り落とす。戦闘の花だな。これ、がカンナ今の仕事になるかな。」
「本当の仕事があるんですか?」
「うん。5人集まればね。中衛に下がって前衛と後衛の悪い所をフォローする。卓越した技術が必要だ。」
「人数が一杯になったらリコリスさんは何をするんですか?」
「味方のHPとSPの管理。どのスキルが後何回打てるのか。前衛が今のダメージ量で何分保つのか。前衛と中衛の入れ替えタイミング。やることは山積だぜ。」
「はー。ボクに出来る事はありますかね?」
「あるよ。最終的には前衛に配置したい。今はポーターしてくれるとありがたいなぁ。」
「ポーター?」
「ドロップアイテムの管理。食料や水分の管理。マップを元に道案内。その辺ができればどこででもやって行けるようになる。」
「ボクはお二人と居たいです。」
「そうだなその為には強くならなくちゃなあ。さぁ、到着だ。」
流石に雪崩の被害はここまではなかった。何の気なしにドアを捻ろうとするとその手を覆うようにカンナが首を振っている。
「嫌な感じがする。出来るだけ戦いたくはないが避けられないのなら私が一番初めに入る。」
「…もんだいないのか?」
「精神的に落ち込んで、肉体的にはぼろぼろでなんとか魔法の力で立って居る。」
「おいおい」
「大丈夫。だからこそ『ベストコンディション』だ!」
「そうか、じゃあ信じる。」
なにかがいる。そんなあやふやなカンみたいな物によって順番を変わったが警戒はおろそかにしない。めったにないがもしかしたらカンナより強い可能性もあるからな。
次回『双炎の姉妹』




