閑話(8)カンナちゃんの停学日記B
その夜、私の家のリビングにはこの間のメンツが全員集まっていた。紙工副席官、公安警察の御津刑事、父、母そして佐川教師、さらに私。まぁ呼んだのは私なんだけど。
「ということになりました。」
「悪化してんじゃねぇか。どういうことだよお嬢ちゃん。」
「いえ、大したことはありません。ただ、ちょーっと一部が過激派と化しただけだから。そして、最初に言っていた通りに従わない奴は天誅ですので。」
「天誅って…で、なんでここに俺たちを呼んだんだ?そりゃあ報連相は大事だが、そんなタマでもないだろうに。」
「根回しですか?」
紙工さんがつぶやく。察しが宜しい。まぁそれ以外にないんだが。
「出来る限り穏便に過激派を解体…したいと思ってる…私はね?それで、警察にはそれまで出来る限り刺激しないようにしてほしいの。北海道以外はとりあえず問題ないはずだし、多分。北海道も実質的には、ほら!反政府組織の情報も全部流すし、winwinでしょ?」
「全く要領を得ませんね。数日でオーラが全くなくなってますよ。」
「気が付いたら事態が私の手を半分離れてるのよ…それでいて、一応私の意志に沿って物事が動いているからなんとも言い難いのよね…。」
「大丈夫なのか。不安だぜ。俺の首も掛かってるってことを忘れるなよ江戸沢。」
私の方が不安だということを大人たちは理解してほしい。私だって私が世界の中心だと思ってたら、実は自分が本当に暴力しか能がない暴力装置だったと言われている気分だ。不安だが今の私にできることが根回しだけだとするなら根回しくらいはする必要がある。
「ところで先生は呼んでないんですが…。どうやってここに集まると知ってたんですか?」
「大人には大人の連絡網があるということだ。子供には子供の付き合いがあるようにな。反政府なにがしは知らないが、それ以外は穏便に済ませてもらいたいものだな。あと、課題はやっているのか。遊ばせるために謹慎をやってるわけじゃないってことぐらいは言わなくても分かるな?」
そう言いながら席を立つ佐川教師。
「帰るんですか?」
「あぁ、繁華街の夜回りの日だからな。」
そんなことまでしてたとは。熱血教師恐るべし。
「では後は任せます。どうかよろしくお願いします。」
「はい、先生もお気をつけください。何かありましたら最寄りの交番にご一報を。」
そんなこんなで情報を交換したり、課題をしたりしながら私の停学の夜は更けていくのであった。




