お友達の家へのご挨拶
あらすじとか書いてみた。時々思い出したように書く予定。
前回のあらすじ
母の病を治すため、火の車の家計を立て直すためコボルドのロッサ君は幼馴染のキッスちゃんと旅に出ました。が、村から1時間もせず雪山エリアに侵入し碌な防寒対策もしていなかった二人は寒さに倒れたのでした。そこに現れたのは詐欺師と暴力装置の二人組。意識のない二人はそのまま流されるように連れ去られあれよあれよと言ううちに、本格的に村から出されることになってしまいました。どうなるロッサ!
「なんか主人公なのに、あらすじにひどい扱いを受けた気がする…。」
「何言ってるんだアンタは。熊みたいなコート着てるくせに繊細なこと言ってると違和感バリバリなんだけど。あと主人公って面か。」
にやにや笑いながら言ってくるカンナ。顔のことは言われたくないな。獣みたいな面しやがって。
「着きました!ここです!」
我がPTにて、現在唯一の癒し系を務めているコボルトのロッサ君が尻尾をふりふり教えてくれる。可愛い。超もふもふしたい。
「母さんただいま!」
そして元気よく中に入っていく。
二人で顔を見合わせて中に入るべきか一瞬戸惑うと、何事もないようにキッスちゃんが中に入っていく。
「失礼します、おばさま。お加減はいかがですか?」
そのタイミングで入ればよかったのだが、ゲーム内とはいえ他人の家に入るという行為にちょっとまごついてしまう。
「なにやってるの?」
「いや、ちょっと…ほら、人の家に入るのって緊張しない?」
「さっきから村長の家やら宴会場やらうろつき周ってるやつがいうことじゃないでしょ…。」
「いや、招かれればね?問題ないんだけど。友達のうちに遊びに行くなんて最近マジでなかったから…。」
我ながら圧倒的な情けなさを発揮してみる。
「引きこもりって訳でも無いんだろうに…ちゃんと友達は大切にしろよ?」
一々男前なカンナがガシッと僕の手を握り、ずるずると僕を引きずっていく。
「おっじゃましまーす!」「お、おじゃまします…。」
先ほどまでとは完全にイニシアチブを逆取られ、元気なく挨拶したのが僕だ。
「あ、ごめんなさい。お迎えもせず。どうぞお入りください。」
そういって迎えてくれたのはロッサ君…じゃない!毛並みがかなり乱れ、所々毛が薄くなっている…ちょっと大きなロッサ君っぽいお母さんだ。
「ダメだよ、母さん寝てなきゃ!」
「何言ってんだいアンタは。アンタが友達なんて連れてくるのはキッスちゃんを除いたら何年ぶりか分からないんだから。ああ、すみません。汚い四阿ですがどうぞお入りください。」
再び頭を下げられる。実に恐縮である。
「いえいえ、夜分遅くにすみません。あ、これつまらないものなんですが…もし宜しければ皆様でお召し上がりください。」
カンナが割合洗練された感じで挨拶をしつつ、こちらをちらちら見る。あ、お土産か。すっと、コートから色々なものを取り出してテーブルの上に並べる。
「こ、こんなに!いただけませんわ!」
大量の飲食物にキョドるお母さん。それを見てやっと緊張が解けてきたので、話をしようと前に出ると代わりにカンナがスッと下がった。ううむ。なんだその気遣い。そんなの出来るのかカンナ。
「ご挨拶が遅れました。現在ロッサ君とPTを組ませていただいている、リコリスとカンナです。見ての通り人族ですが、偏見がなければどうぞお母さんとも仲良くさせていただきたいと思います。」
「これはこれはご丁寧にありがとうございます。サングリア・カレンです。それで、あの…。」
そこそこ大量の食料を見やるカレンさん。
「あ、ご迷惑でしたか。すみません。友人の家に土産として持ち込む適量がちょっと分からなくて…。」
しょんぼりと仕舞おうとする僕に慌ててロッサが声をかける。
「あ、いや。すごくありがたいです。ねぇ母さん?保存が効くものもあるし、迷惑なんてことはないです!」
「えぇ、ごめんなさいね。こんなにたくさんの食べ物を目にしたのは久しぶりだったから少し驚いてしまって。迷惑なんてとんでもない。ありがとうございます。」
気を遣わせてしまった。今日の僕はなんて気が利かない奴なんだ。
「本当にご迷惑じゃありませんでしたか?」
「本当に大丈夫です。ありがとうリコリスさん!それと…その…さっき友達って…。」
ロッサがもじもじしながら聞いてくる。しまった!迷惑の二乗か!
「あ、ごめん。僕は友達のつもりだったんだけど…そうだよね、僕みたいなやつに友達なんて言われたら迷惑だよね。」
しぼむわー。超しぼむ。と思っていたら後ろから小突かれる。
「アンタ一個上手く行かないことがあったら途端に元気なくなるね。村長の家みたいに堂々としてればいいのに。」
「ご無体な。あれは交渉だったからブラフとして偉そうにしてただけで…。」
「交代!」
「はい…。」
前後交代させられる。後ろでちょっとしょんぼりしながらカレンさんとカンナがはきはきと話をしているのを聞く。ううむ。これはこれで新鮮だ。と、袖を引っ張られ振り向くとロッサがいた。ちょっと体が硬直する。
「あのですね、リコリスさん。僕なんかが友達でいいんでしょうか。コボルトだし貧乏人で迷惑ばかり掛けているっていうかお会いしてから迷惑しかかけてないんですが。」
「?」ちょっとよくわからない。
「なぁロッサ。それはどれも友達になる障害にはならないぞ。迷惑ってんなら僕は今、カンナに迷惑をかけてる。」
そういってちらっと目線を向けるとカレンさんと話に花を咲かせていた、意外と話術も高いハイスペックカンナちゃんが同じく目線を合わせてカレンさんに見えないように口の動きだけでこう言った。
バーカ
それを見て噴き出す僕たち。
「な?」
「うん。そうですね。えっと、先ほどはすみませんでした。よかったら僕と友達になってください。」
そういって手を差し出すロッサ。
「うん、よろしく。」
照れくさいのでちょっとぶっきらぼうに挨拶をして僕たちは硬く握手を結んだ。肉球がぷにぷにだった。
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