ロッサ君、その生い立ち(1)
僕のお父さんは雪山研究の第一人者だ。…って話は大昔に父さんに直接聞いた、つまり自称で。周りの人からは、ふらふらと山に入り込んでは遊び惚けているドラ息子みたいな扱いだったらしい。そんな父さんと母さんと僕はまぁ適度に周囲からの冷たい目線を浴びながらもそこそこ楽しく過ごしていた。変わったのは1年前。
「聞けロッサ!大発見なんだよ!」
父さんが言うには雪山の中腹、点在する小屋を抜けて入った洞窟にそのお宝はあったらしい。
「俺は機械の専門家ではないがその価値はなんとなく分かる。これでようやくこんな雪山暮らしとはおさらばだ。」
そういって完全防備。つまりうちにある全財産をはたいて買った物を持って失踪した。
失踪した!大事なことだから二回言った!それからもともとそんなに裕福じゃなかった僕たちの生活はさらに貧困し、生活の負担は母の肩に深く圧し掛かった。僕も村の発布するPTに参加して薬草採集等に精を出したが家計は火の車だった。
正直、それこそお宝にでも縋らなくては何ともならないジリ貧ではあった。それでも父さんを憎めないのは、僕にも冒険へのあこがれが分かるからだ。
そして、売り言葉に買い言葉で寒く険しい雪山に幼馴染と二人で飛び出したが。速攻で挫折した。そしてクレバスに落ちかけた。もうろうとする意識の中、体にきゅっとロープが巻きつけられ、落ちる心配がなくなったとことで僕の意識は完全に落ちた。
ロッサ君。行動力は計画性はない。坊ちゃんみたいだ。




