雪山、一人ぼっち
一人は寂しいけどな。
僕は、有り体に言えば困っていた。自分の意志ではない何かに突き動かされているような感覚。それは例えば1本道のRPGをさせられているような、バッドエンド一直線の物語を強制的に読まされているような。そんな感覚だ。ステータス異常ではない…と、するとスキル干渉を受けているのか?それすらも不明な状態で『おおもと』の意志を外すため、僕は少し突飛な行動に出ることにした。
「お前たちと一緒になんかいられるか。俺は部屋に戻って一人で休む!」
部屋って何だ部屋って。そういう突っ込みを少しは求めたのだが残念ながら子犬と脳筋には難しかったらしい。
「何を言ってるんですか?一緒に行きましょうよ。」
「お前ひとりで何ができる。」
ロッサは親切心から言っているのだろうが、カンナはこちらの意図に多少気づいて居るな。協力は必要ないのか、と暗に言っている…んだと思う多分。
「僕は一人でいい。今までも一人だったし、これからも一人だ。」
いつも通りの戯言で返す。と、横をすれ違いざまに袋に入った冒険者セットを一式手渡す。
「手切れ金代わりだ。せいぜい小屋で便利に使うことだな。」
「いいんですか!?お友達ではないのですか?」
「いいんだよ。好きにさせておけ。私たちはお友達なんかじゃないしな。」
口の中で多分何かカッコイイことを言ったんだろう男前カンナちゃんもまたロッサに案内を任せて雪山を歩き出した。
それだけ言って僕は本当に立ち去る。ミニマップにはまだ小屋の存在が出ていない。そこまでは少し離れてスニークする必要があるだろう。きっちり5m距離を詰めて腹部に収納しているもふもふを背部に移動させて地面に伏せて少しずつ雪にまぎれるように移動する。多分カンナは気づくだろう。だが多分何も言わない。言わない…と思うんけど。
と、雪山の中をミニマップとカンナたちを交互に見詰めながら進んでいた俺はようやく小屋を発見する。2人が中に入ったのを見計らって僕は大きく息を吸った。
男には一人でやらないといけないこともある…のさ!
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