選択と回収
思えばここが選択地点だったのだ。そう、フラグ分岐点…。
「こっちです!」
脈動回復により蓄積ダメージから解放されたロッサは、こちらを振り返りながら2足歩行で雪山を駆けていく。意外と小器用にちょこまかと歩き廻る姿はとても愛らしい。愛らしいが不安だ。別に雪の中は4足歩行でもいいんじゃないのかねロッサ君。
「いや、2足歩行に慣れてないといざって時に困るってお母さんに言われたんです。コボルトの子供はみんな、こうやって歩くのに慣れていくんですよ。あ、いざって時っていうのは両手を使うときです。」
むむ、なんと。そのぷにぷにな肉球で何か作業ができるのかね。けしからん。僕はその様子を観察する義務がある!
「ないだろ。あんまりロッサ君を困らせるな。君の命は鴻毛より軽いが、ロッサ君の命は地球より重いんだぞ。」
そんなバカなことがあるか。人命軽視しすぎだろ。僕の命だって地球と同じくらいには重いはずだ。って言うか暴言を吐くなよ、花の女子高生。
「後、アンタな。一々人に会う度にキャラ変えるつもりか?もうすでにさっきのちょっと偉そうなキャラ崩壊してたじゃないか。」
「してませーん。キャラがブレない事が僕の美点なのデース。」
カンナがイラッとした目でこちらを見る。しかし、怖くてもうそちらを見ない僕と目が合うことはないのだった。残念。
「そのうち、後ろから刺されるぞ。グサッってな。」
ちょっとビビって後ろをちらっと振り向いてみる。足跡が残るだけの見慣れた雪山だった。
「なーんだ、誰もいないじゃん。び、ビビらせやがって」
なぜかニヤニヤしながら僕の横を通り過ぎて、ロッサ君の横に並び何かを話しかけているカンナを見ながらなんとなく嫌な予感が止まらない。
と、右手の雪山が少し崩れる音がした。
「おい、誰かいるのか!」
少し大きな声で警戒してみる。が、反応はない。
がさがさっ!
今度は左手に大きく見えるクレバスのほうで音が聞こえる。
ガサガサッ!
「!!」
「・・・・・兎か、ビックリさせやがって・・・・」
前を歩く2人から「ビビってるよあいつ…。」とか「少し疲れてるんですかね?休みましょうか…。」
なんて声が聞こえる。ばかな、俺はビビってなどいないし、疲れてもいない!
くっ、なんなんだ。さっきから正常な判断が鈍ってきている気がする。寒さのせいか?バッドステータスはついていないようだが。
「あの、もう少し歩くと小屋があります。そこで少し休みませんか?」
ロッサ君が声をかけてくれるが少し疑心暗鬼気味な僕は疑いの眼差しで見てしまう。いかん。何故かその小屋に近づいてはいけない気がする。
「お前たちと一緒になんかいられるか。俺は部屋に戻って一人で休む!」
そういって僕は二人とは違う方向に向かって歩き出した。
こんな雪山で部屋ってなんだ?
何らかの大きな意思から逃れるため主人公は一人立ち去るのだった。
そう、先ほどから彼の発言が…死亡…フラグに…ザザザ…
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