鬨の声を聴く
お久しぶりです皆さま!ごくを潰して生きておりました。働いているのかサボっているのか…人の見ようによって世界中の価値観などは一変するのです…!
うそです、どう見ても梅雨の気圧にやられてヘロヘロでした。ですが本日より7月!夏ですよ夏!上がりますねぇ。また再開をしていきたいのでよろしくお願いします!
その日、天より声が降り注ぎ。
村はさながら終末のラッパが鳴り響いたかのように喧噪に包まれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もとよりイエティという種族はそこまで好戦的な種族ではない。雪の降る山里に隠れ住み、細々と狩猟で得たモノを生活の糧として生きている。もちろん他の種族と争いが無いとも、清廉潔白に生きているとも言わない。それでも慎ましく逞しく生きる山の民の一統である。それが何故コボルトの生存圏を奪い本来の性分である狩猟よりも遺跡探索に精を出しているのかと言えばもちろん理由がある。人には言えないような理由が。
「報告を聞こうか。」
とある村のとある家。村長の家だの有力者の家だのという立派な建物ではない。どこにでもあるただの平屋の一軒屋。しかして、そこには村の真なる支配者が住んでいた。狩衣という服装をご存じだろうか。嘗ては日本の平安時代より用いられ狩衣とも呼ばれる伝統的な服装である。その衣を纏った者が4名。ひざまづくイエティを尻目に、自分たちだけ高座に。しかも上座に座ってふんぞり返っている態度の悪さを止める者はいない。少なくてもここにはだ。
「コボルト共の村を襲撃致しました。地上にある建物はほぼ壊滅させ、掻き集められるだけ略奪も行ないましたが収穫は少なく…また村の護衛を含めて気がつけば居なくなっておりました。」
「すると、なにか?村一つ襲っておきながら貴重品を持って村人達にはえっちらほっちらと逃げられたと。つまりは君たちはそう言いたいのかね。」
イエティは地面に血が出るほどに額を擦り合わせた。襲撃自体には成功しているため、失敗とは言えないはずだが今や彼らの主である狩衣どもには通じぬ道理であった。彼らは収穫を求め、自分たちは持ち帰れなかった。それが全てだ。
「ふむ、それでおめおめと帰って来たわけだ。私たちは君たちの遺跡管理の腕を大いに買っている。…だがコボルト関連では今ひとつ成果が上げられないようだ。私たちはこれを怠慢とみるがどうか。」
もとよりさほどのやる気もない仕事だ。支配し頭ごなしに命令を下してくるこの者どもに殺意を感じたことも一度や二度では無い。それでも彼らが平伏しているのは女子供を人質に取られているからだ。それもこの雪山にすらいない。麓の渇いた街で単純労働をさせられているそうだ。それでも命の危険が無く、食事も十分に与えられている。そのような状況で反乱を起こせるほどに彼らは強くは無かった。心も体もだ。彼らはゆっくりと命令に従い枯れるように滅んでいくのだろう。それとも街で育っている次世代がこの運命の軛を…そう考えてうっすらと笑いながら被りを振った。自分たちに出来ない事を子供に託すのはもはや借金を押しつけるのと変わらない。この村は膿んでいるのだ。致命的なところまで。最近は冒険者を自称している人間共まで村に入っている。もはや自治もままなるまい。
そんな村の最も深い闇の中にも終わりを告げる声は聞こえる。
「東西、東ー西!(とざい、とざーい!)」
イエティも、狩衣の者も、冒険者達にも。同様に聞こえる朝告げ声。それは長く続いたイエティたちの夜を切り裂いて。黎明となるか黄昏となるか。
ゲームするべきか、溜まっている本を読むべきか、アニメを見るべきか。それが問題だ。