前払いの宝払い
「うわぁぁぁ!姉さん!武器!凄い武器!たくさん!」
「おおお、落ち着け今回は奪い取る必要はない。きちんと身に着けて役立てられると判断できる範囲なら幾つか譲ってもらえるらしい。」
「すごいね姉さん。コボルト意外とリッチだね!」
テンションが上がり過ぎてキャラが崩壊しつつあるファイアーシスターズはもう、ほっといてもいいだろう。僕はあいつらの保護者じゃない。知らん。
「1000人のコボルトと協調して、少なくても百年単位でこの山を略奪後管理してきたイエティどもから山を奪還まで付き合うだと?正気かリコリス。私たちがモンスター狩りをするのとは訳が違うぞ。それに、この村を護衛するのとももちろん訳が違う。分かっているのか?それはもう戦争だ。」
「分かっているともカンナ。そして、これが戦争だというのなら、小競り合いの経験しかないコボルト族よりも、個人戦から多くても48人戦に重きを置き続けてきた僕達他のパーティメンバーよりも適任な人間がいる。と、思うんだけど。どう思う?一群のカンナ。」
「大規模戦闘には詳しくない。そういうのはそう言うのが好きな奴が担当していたから。私はあくまでも動かない頭領か、完全に最前線に立つ1兵卒だ。1000人の敵は1VS1で1000回倒せばいい。それで終わるし、それしか知らない。」
久々に獣少女全開である。脳筋通り越して逆に清々しい。ここまで、はっきりとカンナに拒絶の意思を見せられるのは久しぶりである。
「やりたくない?」
「やりたくないというよりはゲームの域を超えている。と私は思うんだ。1プレイヤーの分を遙かに超えている。出来るかできないかと言われたら多分できる。でも…これは戦争ゲームじゃないだろ。あくまでも大人数参加型のロールプレイングゲームだ。私はそのつもりでやってきたし。。。私は間違ってる?」
「いや、間違ってないし、カンナが嫌なら方向転換するよ。戦争はコボルトに任せればいい。僕達は僕たちに出来る事をやるだけでいい。」
「私達に出来る事?」
「あの時、僕達に攻撃を加えてきた襲衣兵。それに報復戦を仕掛ける。やられることや後手に回ることは常であっても、やられっぱなしは性に合わない。違う?」
カンナちゃんはニヤッと笑った。
「OK.そこまで落とし込めれば納得ができる。楽しいケンカをしましょう。」
そこで、ご満悦のファイアーシスターズがこちらに絡んできた。
「おい、リコリスゥ。これみろよ、このシミターは魔法の武器だぜ。しかも、説明文がイカしてる。『三千世界の烏に血に濡れたこの剣を持つものは、その呪いにより噎せるような血の中でも微睡みの中から逃れられない。』主と朝寝をしてみたいだとよ!バッドステータス付与されるが、それ以上の効果がある。私はこれをメイン武器にするぜ。」
いや、お前は炎に関係した物にしろよ。名が泣くぞスカーレット。
「へぃリコリスー。いいとこに連れてきてくれたね。私コボルト大好きになっちゃった。それにここにあるのは一部なんだって?敵の本拠地にはお宝がたんまり?私達ももちろん連れて行ってくれるんだよねぇ?」
もちろん。大事な捨て駒ですので。楽しそうで何よりだよパイロスターター。
「楽しそうだな。私のメイン武装はこの愛剣で行くが、サブの武装が欲しいと思っていたのだ。リコリスももちろん貰うのだろう?」
そう、僕の武器は長い戦いのうちで失われ、今や初期装備すらも失われている。魔法使いだとしてもあんまりな武装だ。素手はないだろ。そうだな。刀剣の類もカッコイイがメイン武器は火力増強できるような杖とかその辺りを探したい。
「じゃあ、ちょっと見繕ってくる!やっふぅ!」
「あーずるいぞリコリス!私も見る!」
整然とした宝物庫に似つかわしくはない嬌声が響き、しばし僕たちは鋼の宴を楽しんだ。