情報収集(される方)
流石に拙者たちがダンジョン攻略したからイエティが何か怒ってるとか、そういうのはちょっと問題になりそうだったので伏せたでござるが(どうやらロッサ殿も内緒にした様子でござる)それ以外は結構洗い浚い聞かれたでござる。いやー吐いた吐いた。
「あの、夕立さん。コボルトの僕が言うのも何なんですけど、あんなに全部話して大丈夫だったんですか?」
いや、普通に考えて大丈夫なはずがないでござる。が、ここは粋がってみるでござる。
「あれは、尋問を受けて情報を吐いたように見せかけて、情報を誘導していたのでござるよ。ほら、今の話を聞いたらもう聞く前より行動も誘導出来るでござるよ。」
「いや、間違いなく行動の自由度は増してると思いますが…。」
いや、実はちょっとした実験も兼ねているでござる。
リコリス殿が行ったスキル組み合わせ実験。
カンナ殿が行った、システム外能力の実証実験。
そして、これから拙者が行うNPCに『想定外』の情報を与えた時の行動を観察する、NPCのAI観察でござる。これが上手く行けば二人が持っている情報と交換、もしくは有利に立てる可能性もあるでござるよ。夢が広がりんぐでござる。
「まぁ、行ってしまった情報提供は仕方ないでござる。さぁそちらの情報をキリキリもらおう。」
「ふむ、まぁそういう条件じゃからな。何が聞きたい?」
「この村の成り立ちから洗い浚い全て。何もかもでござる。もちろんこの地下室についてもな。」
「強欲じゃの。では、まぁ成り立ちなど面白いものでもない…。」
ワンダント殿による1時間にわたる情報提供は、まぁ情報としては大した価値はなかったでござるが個人的に大いに知的探求心を満足させられたと明記しておくでござる。拙者大満足!
もちろん、満足したからには仕事もするでござる。リコリス殿への報告書はまぁこんな感じ。
「グラシアス村観察日記。天気快晴。村は絶賛壊滅中でござる。村長宅地下に作られていた貯蔵庫という名前の地下シェルターには80人程度のコボルト族が難民化している最中でござる。村長のヴィヴィット殿は村の若いのを数名連れて隣村に移動中。村長の代わりとなって健気に村人に尽くす村長の娘のキッス殿はまだ若すぎて村をまとめ切れている印象はない。現状維持が最優先といった感じでござる。
そして、このような時に立つべき前村長のワンダント殿は貯蔵庫を離れて単身行動中でござったところに拙者はロッサ殿の先立ちにより突撃インタビューを敢行したでござる。その結果、逆に鹵獲されてしまったでござる。座標はココ!ロッサ君に手紙を渡すから助けに来てね!」
という手紙を持たせてロッサ君にリコリス殿の所に行かせたのが30分前。
「いや、おまえ、いい加減にしろよ夕立。情報収集しに行って情報収集される忍者がどこにいるんだよ。ロッサに聞いたぞ!いい加減にしないと契約解雇するぞゆうだ…ってうわぁ、この地下室すごいぃ!」
うんうん、流石リコリス殿、善い反応でござる。
「内緒の話をするには地下の方が良いのでござるよ主殿。ニンニン。で、この武器だけではないでござるよ主殿。コボルト族の戦闘力について、今後の展望について、一度主殿とワンダント殿の間で早期に会見する必要があると感じたので、報告書には書かなかったでござるが、ここに報告するでござる。」
そう言って、拙者は背筋を正した。
「ここに眠るのは代々のコボルト族が少しずつ『取り返してきた』かつての宝の一部でござる。聞いてびっくり、あのイエティども自分たちが管理人で拙者共が盗掘者のような面で襲い掛かってきたでござるが、ところがどっこい。正当な管理者であるはずのコボルト族から奪った宝と地下に眠る遺跡群で力を溜めただけの異邦人どもであった。」
「という設定のクエスト。」
「受けるでござるか?破棄するでござるか?」
さぁさて、リコリス殿の選択はいかに。