紅き忍者との誓い
「ただいまー。」
「戻ったでござるー。」
スカーレットと忍者が帰ってきた。と言うよりはこの村には二人とも初めて足を踏み入れるので、やってきたが正しい気がする。
「ようこそ廃墟へ。」
「いやいやー中々の燃えカスっぷりでござる。復興とか胸熱でござる。」
忍者が中々に失礼な事を言っている。人様の村を捕まえて燃えカスって何だ燃えカスって。
「なにを微妙な顔をしてるでござるリコリス殿。え、復興しないのでござるか?」
引っかかってるのはそこじゃないんだけど。
「いや、するけど復興。しまくるけど。でも気が早すぎるだろ復興。何考えてるんだ忍者。」
「はー素人臭い事言うでござるなぁリコリス殿。仕方がないでござるなぁリコリス殿。拙者がちょっとだけレクチャーしてあげるでござる。」
「例えばゲームじゃないリアルの方で、何か地震でも台風でも日常生活が通常通り送れない事態が起こることは日常茶飯事でござろう?なんとかかんとか日本は、叩かれても叩かれても起き上がる稲のようにやってこれているでござる。でもそれは日本が超凄いからでござる。周辺国は無理でござるよ。なんかあったら直ぐに埋めて無かったことにする国やら、他人の不幸で飯が美味い、人の不幸をお祝いするような国もあるんでござるよ。」
「いや、それはそうかもしれないけど。」
「ちなみにこの村は日本ではないでござる。」
「?」
「黙ってても被災したら上げ膳下げ膳でボランティアが周囲からワラワラ助けに来てくれて、世界中から支援物資が届くような国とは違うのでござるよ。スカーレット殿に聞いた話では地下の倉庫にある程度の蓄えもあるようでござるが、それはどのくらい持つのでござるか?リコリス殿確認した?」
「…してない。」
「別にリコリス殿を責めているわけじゃないんでござるよ。今回は正体も完全には掴めていない敵襲なんだから仕方ないって言えるでござる。現にリコリス殿は周囲警戒を完ぺきにこなしたでござる。ひ・と・り・で。」
「今回の襲撃はもしかしたら僕たちがダンジョンアタックをしたことが原因かもしれないんだぜ?どの面さげて協力を頼むって言うんだよ。」
「そこでござる。」
そう言って忍者は人差し指を揺らした。
「なんでリコリス殿が責任取るでござる?ここは確かに襲われた。「もしかしたら」拙者共に原因の一因があるかもしれない。みんな凹んでいて誰かが動かなくちゃいけない。」
「だ・っ・た・ら!そこで恩を売るんでしょーが。普段のリコリス殿ならばその程度とっくの昔に思いついているでござろうが。なにを感傷的になっているんでござるか、しょうもない。あるものをある様に使って手駒をガスガス増やす。それがリコリス殿の凄い所だと思っていたんでござるが?見込み違いでござったかなー。雑魚リスどのに旗手が出来ないんだったらファイアーシスターズ旗頭にして拙者がやっても良いでござるよ?」
「だれが雑魚リスだクソ忍者。いいんだな、僕の事を焚き付けた奴で後悔しない奴はそうそういないぜ?」
「いいでござるよー。真ん中に座るのを許可してやろうなのでござる。仕方がないから、今までは面白そうだったからファイアーシスターズの陰で暗躍していたでござるがこれからはリコリス殿を主と仰いでやるでござる。条件は3つ。」
「…なんだよ。」
「1つ、どちらかが見切りをつけた時点で契約は終了でござる。」
「2つ、双方はお互いに常に利益をもたらせ続けることを意識するでござる。」
「3つ、プライベートには立ち入らない。」
「曖昧すぎない?」
「いいや、拙者が求める主はこんなもんでござる。ゲームでござるしな。さぁどうする?」
「わかった。忍者、今日からお前は僕の忍者だ。契約の証などはないが、せめて僕の誠意を捧げよう。」
「リコリス殿」
「なんだよ、誠意じゃ不満かい?」
「拙者の名前は『夕立でござる。名前を持って拙者の誠意とするでござる。それと、隠蔽スキルで隠していたから分からなかったと思うでござるが拙者女でありますからして。」
「なにぃ?」
「ご配慮ください…なんちゃってでござる。さぁ、最初のご命令をどうぞ?主殿。」
「夕立。良い名前だ。よし、じゃあ最初の命令はさっきお前が言っていた内容を全てこなせ。」
「いきなり抽象的で最高に難易度の高い命令をありがとうでござる。では拙者これにて。」
残されたスカーレットと僕。颯爽と立ち去る忍者、もとい夕立。
「えっと、つまり忍者は女で、リコリスの部下になったって事?え?私達サイドじゃなかった?」
「そんなこと言われても困るんだけどスカーレット。っていうかおまえら姉妹は契約してなかったの?あいつと。」
「そんなこと、露とも言われなかったけど。どうするんだよ、私達姉妹の衣食住は完全にあいつ任せだったんだぞ…。」
頭を抱えるダメ人間を横目で見つつ、僕は僕で急展開すぎる主従関係に頭を悩ませるのであった。
よし、これでようやく主従関係作れた…忍者が自由度高すぎて全く目的通りに動かないんだもの…よかったよかった。
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