獣少女かんなちゃんの事情(3)
2016/08/21更新しました。
風呂敷広げ過ぎカンナちゃん。口に合うだけの本物の実力はあります。
もう回想も飽きてきたし、そろそろお仕舞に向かおうか。結果だけ言えば私は私と同格の人間を見つけられなかった。時に別の学校で、時に町の暗がりで、様々な町道場や大会で。私は原石を求め、さ迷い歩きそして小粒でも才能あるものをスカウトした。自分の組織というのは便利な言葉だ。システムを構築して互いに磨きを掛けあえば自然と淘汰される。私はただのスカウトマンで、悪の首領で、正義の使者でもあった。
だがしかし、そこまで八方手を尽くしても、ライバルもおらず、後継者も見つけられなかった。既に、私は花の女子高生になっていたが、周りには男女問わず脳筋が集まり、もう手が付けられなくなっていた。いや、私の集めた奴ははっきり言って粒ぞろいだ。
強い奴はいたし、頭がいい奴もいた。情報を集めるのが上手い奴もいたし。でもそれが私の求めるレベルには達しなかったってだけだ。私は24時間誰の挑戦でも受けるし、教えを請われれば何でも教えた。私はもうはっきり言おう。敵が欲しかったのだ。
勿論、仲間内での協力や切磋琢磨できるような環境は整えた。上が下に辛く当たるような奴は要らなかったのできちんと矯正したし、基本は横の繋がりを大切にするようないい組織が出来たと思う。
でも私の目的は組織を作ることじゃなかった。誰かと敵対していい勝負したかったのだ。でもダメだった。もーなんでだか途中から領地育成型のストラテジーゲームみたいになって日本中の未成年の所謂ヤンキー的な人達のカリスマ的存在になっていた。そして私は領地もお金も物もあまり興味はなかった。
そして気が付いたら、最後の敵対者を倒して全国統一を成し遂げた!あれ?なんか違う。私が求めていたのはこれじゃない。でもしかし勢いがつき過ぎた(本当に勢いがつき過ぎだ。新幹線でも止まり際くらい弁える。)組織は止まることを知らず、肥大化する組織は確かに私の大切な仲間ではあったが、もう私の知る組織の顔ではなかった。敵を求め、旗頭を掲げ(私だ)今、もう国とか警察とかを相手にする一歩手前になっていた。流石にちょっち気が咎めたので一人で交渉しに行った。
いいんですかー?このままだったら内乱ですよーー。大人対未成年連合って最高に見栄え悪いですよって!
親切心からの言葉だったが残念ながら首相官邸に乗り込んでの言葉は聞き入れられなかった。
懲役とかかなー。私を本気で閉じ込められる牢屋とか刑務所って日本にあるのかなぁ。オリバ的な扱いはやだなー。犯罪者相手にヘリで送り込まれて、素手で戦うのだ。そして、ステーキを食べると傷が治る。人間止めすぎでしょオリバさん。
とか思ってたら、なんと私が30人がかりで固められている広間へ、(鍛え上げられた、所謂「スペシャル」な護衛達が雁首そろえて女子高生を30人掛かりで地面に押さえつけているのだ。みっともないという言葉を私は久々に思い出した。)私、というか私団子。をまっすぐに見据えて首相が入り口まで出てきた。
必死に止めようとした護衛の警察の人を手で制して私に紙袋を押し付けた。
「ここでなら君の望みはかなえられるかもしれないよ?」
私は思わず敵意を収めて(もとより善意の行動だったんだけど。)その紙袋に入ってる箱をまじまじと眺める。
「機械…ゲーム機ですか?」
「息子が好きでね。どうしてもと欲しがるから、悪い大人の権利を使って、私のと息子のを買った。まぁ私はこう見えてもそこそこ忙しいので、そう息子と遊んでやることもできまい。それを君にあげるから、試しに遊んでみるといい。発散できる場所があると、何か打ち込むものがあると人生は変わるよ。それにそこでなら、君の望む仲間も見つけられるかもね。ってのは少しゲーム脳すぎるかな?今日の10時がサービス開始だ。さぁ帰りたまえ。」
時間を見ると今8時過ぎだった。結構ギリギリだ。私はただ一言だけつぶやいた
「帰る」
帰りにはハイヤーが用意され、(高級車に乗ったのは初めてだった!)テンション上がり過ぎだったのは皆には内緒だ。
そしてゆっくりとキャラメイクを行い10時ぴったりにゲームにログインした。
目を開くとそこは雪山で、ログインしてから10分間で3回も死んでしまった。死んだのは初めての経験である。何故かアガるテンション。私はMか。
4回目のログインで開幕ダッシュを決めた私の前に、この洞窟が大口を開けて待っていたのだった。まぁ大体そんな感じ。
冒頭は繋がり、時代は追いつく。探し求めて懇願までしたライバルは今ここに。
リコリスとカンナ。何処にでもいるゲーム天才と生まれるのが遅すぎた最強。
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