前進の末
まだ何も解決していない
誰も元に戻っていない
前を向きましょう、の声が
行き場をなくした沢山の人たちを
押し退けていく
新聞の片隅
インターネットの最下位
世に流れる大きさは
小さく小さくなっていた
差しのべるのは
大きな手ではなく
痛みにより近い人たち
ごく一部の奇特な団体
と
世間は横目で見て通り過ぎてゆく
この国の民は
忘れ上手だ
前を向いていればいいと
踏んではいけないものを踏んで
置いてはいけないものを置いて
どんどんどんどん進んできた
その背中を真っ赤な眼が
睨んでいるとも知らず
知っていても振り向かず
省みず進んできた
国の盾となり守るべし
己のあやまちを隠すために
数えきれないほどの命を
暮らしを、人であることを
奪ったのは同じ国の者
もういいじゃない
過ぎたことは忘れましょう
と
前向きの声が押し流してしまった
押し流されたものは
また押し寄せてくる
幾層にも重なって巨大な渦となって