06.殺人容疑
「お父さん……殺人の容疑で逮捕されちゃった……」
「はっ!?」
僕はそれしか言えなかった。今度こそ僕の頭は大混乱。
「…ど……どうしよう! 光ちゃん! 光太ってば!」
母さんが僕をゆする。僕はほとんど放心状態で、もう何も見えない、聞こえない脱け殻にになっていた。
父さんが…サツジン…? ヒトヲコロシタ……?
ピーンポーン
その時、玄関のチャイムがなった。
あまりにも場違いな、その音で僕は我に返り玄関に出ていこうとした。
すると、僕より早く母さんが玄関に向かって、ドアを開けた。
そこには、デカくてゴツい、鬼と熊を足して2で割ったら1余った様なおじさんが立っていた。
クタクタの背広に、恐ろしい形相……。これって、よくテレビで見かける…特にサスペンスドラマで…。
僕の予感は的中した。
「どなた様ですか?」
母さんが震えているのが後ろ姿からでも分かる。
背広のおじさんは、内ポケットから手帳を出した。黒革に金色のマーク。
「警察の者です」
「あっ…うちの……うちの主人が……」
母さんは、パニックになってるみたい。
「あの、奥さん、お話を聞きたいんですが」
「うちの…うちの主人が人をっ!? 人殺しなんて! 殺して!?」
何を言ってるのか意味不明だ。しかも母さん、その鬼と熊がコラボしたおじさんの胸ぐらをつかんで、おじさんをグラグラゆさぶり始める。
「母さん、ちょっと!」
僕は止めに入ろうとした。
そのおじさん…多分刑事さんも、慌てている。
「あの、奥さん…そのまだ決まったわけでは…。あの、大丈夫ですか?」
刑事さんが必死に落ち着かせようとしている。
でも、そんな刑事さんの声もむなしく…
バッターン
母さん、倒れちゃった。
何がなんだか、僕もまだ全然、今の状況を理解できていない。
母さんがうちの玄関先で刑事さんの目の前で、ぶっ倒れちゃったもんだから僕と気絶した母さん、パトカーに乗せられて警察署のすぐ近くの病院に連行された。
そこで母さんは鎮静剤を射ってもらって、今はベッドでぐっすり眠っている。
母さん、父さんが出ていってから1週間、相当はりつめて体も心も限界だったみたい。それで、こんなことになっちゃって、ピーンと張っていた糸が切れちゃったんだろう。貧血気味だったみたいだし。そういえば母さん、この1週間まともに食事を口にしてなかったなぁ。もっと僕が気を使ってれば。母さんを支えるって決めたのに。
とにかく、母さんは休養もかねて数日は、この病院に入院することになった。
病室で椅子に座って、無機質な白い床を見つめていると、不意にドアがあいた。
入ってきたのは、さっきの鬼熊刑事さん。その後ろから、小柄で可愛らしい女の人がついてきた。
「様子はどうだい?」 刑事さんが、お腹に響く重低音で聞いてきた。
「薬のおかげで大分落ち着いたみたいで。ぐっすり眠ってます」
「そうか。…ちょっといいかね?」
「何ですか?」
「外で話そう」
僕は静かに頷き、刑事さんのあとに続いて病室をでた。
あさってから学校の新学期が始まるので、それまでにできるだけ更新したいと思っています。でもまだ宿題が終わってない……(>_<)これから夏休みの光太達が羨ましいです。