05.疑い
やっと、事件です。
やっと落ち着いた日々が少しずつだけど、戻って来たというのに。
やらかしたのはまた『あの人』だった。
来週一週間が終われば晴れて夏休み!
ショックも大きいし、心はまだ複雑だけど、とりあえず夏休みなんだ。たくさん遊んでやる!
今日も、いつもの様にハジメの部屋に上がり込んで、コーラを飲みながらゲームをしていた。
すると、
ドタドタドタ ガラッ!
部屋の戸が勢いよく開いた。顔を上げるとそこにはハジメのお姉さん、恵里さんがいた。
「光ちゃん!光ちゃん、今すぐ帰りなさい!早く!家に帰りなさい!」
「へ?」
僕ら3人はキョトンとしていた。
だが、そんな僕は恵里さんに腕をガシッとつかまれて、部屋から引きずり出された。
ハジメと明日花も追っかけて来てくれる。
そのまま階段を降りて行く。
1階に着くと、またズルズル引きずられて廊下を進んだ。
ハジメのウチは、代々酒屋さんを営んでいて、1階の半分が店舗になっている。
「姉貴! おい!」
後ろからハジメが叫んでいる。
誰か助けて!壁にぶつかって痛いんだよ!
「母さん、連れてきたよ!」
お店には、かじりつくようにテレビを見ているハジメのお母さんがいた。
「あの……?」
「光ちゃん、早くお家に帰るのよ! お母さんからも電話があったわ! 早く! 車で送ってあげるから! さあ!」
何が何だか分からないまま、僕は言われるがままに店の配達用の車に乗せられて、家まで連行された。
僕、何か悪いことでもしただろうか…。どんどん不安になっていく。
なんだかマンションの周りが騒がしい。
「やっぱり…。 こっちよ!」
おばさんは僕を車から降ろして、マンションの引っ越し用のエレベーターで5階まで上がった。さすがにここには誰もいなかったけど、その代わり玄関のドアを少し開けて、その隙間から僕らを見ているご近所さんがいた。
家の玄関を開けると母さんが飛び出してきた。
「光太! 光ちゃん!」
僕はわけも分からず、相当動揺している母さんを見つめることしかできなかった。
「あぁ、五十嵐さん、本当にありがとう」
「いや、いいんだよ。それより何かあったらすぐ言いな。力になるから、ね?」
「五十嵐さん…ありがとう」
「じゃっ」と言っておばさんは帰って行った。
「ねぇ、母さん、どうしたの!? 何があったの?」
僕が当然の質問をすると、母さんワナワナ震え始めて…
「どうしよう…どうしよう、光ちゃん 」
「だから、どうしたの!?」
僕は母さんの体を支えながら、リビングに向かった。
リビングのテレビはつけっぱなし。どこだかのチャンネルで夕方のニュースをやっていた。映っているのは、どこかのアパート。警察がいっぱいいる。 その後、マンションから警察署に画面が切り替わった。
そして女性アナウンサーは、こう告げた。
「えー。只今、この高台市警察署内で殺人の容疑で逮捕された、結城正彦容疑者の事情聴取が行われています」
え……?
僕は、このアナウンサーの言葉に耳を疑った。
となりで母さんが、両手で顔を覆い言った。
「お父さん……殺人の容疑で逮捕されちゃった……」
事件が起きました。でも詳しいことはまだです。展開の遅い話ですみませんm(_ _)m精進します。