04.休憩
父さんが家を出ていって一週間が経とうとしている。
確かに生活費+αでお金は振り込まれている。
だから、僕と母さんは今まで通りの生活を送っていた。
ただ、ご近所の態度がどうもよそよそしい。原因は、お隣の今井さんの奥さんらしい。あの日、僕も母さんも結構大きい声で喋ってたし、噂好きの今井さんは、すぐに聞き耳をたてたことだろう。
そして、おしゃべり好きでもある今井さんは当然、僕ら一家の異変をビッグニュースとして、近所の奥様方に話した。
マンションという小さなコミュニティーで1つの話題が全体に知れわたるのに、そう時間はかからない。みんな知らないふりをしているけど、きっと陰で
「お気の毒に」とか、言ってるに違いない。そんなこと1ミリも思ってないくせに。
学校でも、少しずつだけど噂になり始めていた。原因は同じマンションに住んでいる同級生だろう。
たまに真相を聞きたそうにチラチラ見てくる女子もいた。
いつもなら、女子に見られてるってだけで嬉しくて、妙に緊張してしまうのに、今はただ呆れて脱力してしまう。
「気にすんな。あいつらよっぽど暇なんだよ」
ハジメがチラチラ見てくる女子を睨みながら言った。
「気にしてないよ。こんなの、すぐなくなるだろうし。」
「そうだよ! もうすぐ夏休みだしさ、みんなすぐ忘れちゃうよ」明日花もにこやかに言った。
「ねっねっ、夏休みどっか遊びに行こうよ! 3人で」
明日花が、読んでいた雑誌を僕らに見せる。
『夏休み☆遊ぶならココ!』
見開きで特集をしている。
市内にある遊園地やプール、ショッピングモールが写真付きで解説されている。
「いいね。涼しいとこがいい」
プールの説明を読んでみる。大きな屋外プール。波のプールやら流れるプール、ウォータースライダーは7種類もあるらしい。
「買い物は明日花が長いからやだ」
ハジメも雑誌を覗きこみながら呟いた。
「長くないよ! ハジメが早すぎるんだよ! このショッピングモール行こうよー」
こうして、夏休みの計画をたてたりと、つかの間の楽しい時間を過ごしていた。
次話からやっと事件の話になります。推理小説なのに全然事件が起きなくて、読んで下さっている方々も退屈してるかもしれませんが、次回から物語が動きだしますので、どうぞ今後もよろしくお願いします。