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ただいま……

 「ただいま……。」


 ガクッと玄関で膝をつく。


 「姉さん遅かったね?大丈夫?」


 愛しの弟から労りの声がかかる。


 「うん、大丈夫。ちょっと疲れただけだから。あ、あとアリスのところのマチルダさんからもらったお土産のクッキーよ。あとで一緒にたべようね?」


 「分かった。今日は編集のファナさんが来てくれてるから食事の準備は出来てるよ」


 その言葉に私はピクッと顔がひきっつた。


 「え?あの女まだゼフの担当なの?」


 声がでてしまった。


 「ええ、お邪魔させて頂いてますわ。『嬢王様』」


 「その名をここで!私の前で言うじゃないわよ!!この変態!」


 私は玄関の真ん中で叫んだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


  

 アリスの屋敷から脱出したあと、私は急いでギルドに戻った。


 夕暮れ。

 

 この時間はいつも走っていた、まるでそれがいつもの事のように…

 

 ギルドの夕方は混む。依頼の報告、明日の依頼のチェック、相談事、もめごと。人はいくらいても足りない。なぜギルド内に酒場があるのかいろいろな理由があると思うが、待つ時間の有効利用と、情報収集そして、ギルドの収入源の一つなんだろうなと、最近は思えるようになった。

 そんな私の夕方からのお仕事はギルド内の酒場のウエイトレスです。


 「遅いよマリ!!」


 料理人で厨房を仕切っているマルクスさんの怒声が響く。


 「すいません!!遅くなりました」


 手早くエプロンだけ付けてカウンター前に来る。

 

 「今日は早いって聞いたからお願いしたんだから…頼むよ」


 「本当にすいません。」


 髪留めを付けて、ダガーを外してカウンターのイツモノ場所におく。ちょこんと置いてある座布団は彼の、ダガーの特等席だ。そして、代わりに注文票をつける。


 「がんばってこいよ、尻触られるなよ?」


 一言多いと思いながら私は用意してあったジョッキを持ち、

 

 「3番テーブルさんですね。お待たせしました」


 爽やかスマイルでウエイトレス業務に勤しむのだ。




 「嬢王様の尻を触ったら、お仕置きされるから誰も手なんか出さんよ…それにまだ子供だ…」


 カウンターでチビリチビリ飲んでる老人が呟く。


 「そのお仕置きが欲しい奴も大勢いるんだよ。じいさん…それにマリはもう17だぜ?耄碌したか?」


 「ふん、遊んで欲しいのは子供も大人も一緒ということか」


 「程々にしとけよ?」

 

 その1時間後、私はセクハラ冒険者を投げ飛ばした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 

 酒場が一段落したころ私はマルクスさんの小言を聞いたあと、受付に今日の回収金の報告と預ける手続きにいった。

受付には、ベテランの受付嬢リオが丁度退屈そうにしていた。


 「ヤッホー、マリ。今日はもう手が空いたの?」


 欠伸混じりにそう聞きながら背を伸ばしながら聞いてきた。豊満な胸が強調されるこの受付嬢制服は一体誰の趣味なんだろう…


 「おい、マリ。リオのオッパイまた大きくなってないか?俺がそう感じるんだから間違いないと思うんだが、お前はどう思う?なんだったら掴んで確認してくれよ、俺のために」


 カバーに入れたまま床に叩きつける。


 「あいかわらずおもしろいねー。あんたのダガー。イロイロ見てきたけど喋る道具ってのももちろんこれしかみたことないんだけど、なんていうかすごく俗っぽい?」


 「俗っぽいって言うと感じ悪いだろ?俺の場合はフレンドリーって言うんだぜ?リオ!」


 「あーっはっはっ、いいねーダガー君。あ、そうだマリ。今日の分の手続きはこっちでやっておくから支部長室へ行って。支部長が呼んでたよ」


 「マジですか?」


 「うん、ダガー君も預かっておくよ。待ってる間いっぱいおしゃべりしようねー」


 「いいぜリオ!俺のトークに惚れるなよ?」


 「いい!チョー馬鹿っぽくっていい!!」


 お気に召されたようで宜しかったです。私はトボトボトと支部長室へ向かうことにした。後ろではのー天気な声で、


 「キャー!!!!ダガー君チョウイケてる!」


 「そうだろうそうだろう、おお、やめろよ!そんなに乱暴に扱うな!!おっ!いいぞいいぞその調子だ!!はっ、い、いいんですか?いえいえとんでもありません。ぜひよろしくお願いします…」


 やり取りを見ていた周りの男達の温度が上がったのを背中越しに感じ、そのすぐあと


 「胸囲の格差社会とはこのことか!!!」


 耐えきれなくなった私は支部長室へ急いだ。支部長が呼んでる急がなきゃ!!

 

 

 「遅いよね、遅いよねマリ?」


 「はい。すいません支部長…」


 申し訳ないふりをする私。そんなに怒らなくてもいいじゃない。


 「いまマリは心の中で私を批判してたね?」


 はい、と言ったらさらに長くなってしまう。しかし、すいませんといってもお話が短くなるはわけではないようです。今日もつかれた。はやく終わらないかないのかな?


 「マリ。ぜんぜん反省してませんね?全く反省してないでしょう?仕事を遅れた事もですが、マルクスさんも貴方に甘いからそんなにいってはないと思いますが、私は違いますよ!?テーブルの修理代はマリにまるまるつけにしますからね。」


 「だって、あの酔っぱらい私のお尻なでてくるんだもん。」


 「それはマリが魅力的だからですね…そういうことにしておきましょう?それに酔っぱらいのする事ですから少々大目に見てあげてくださいよ?それに酒場でウエイトレスをやっていたらそんなこともあることくらい分かるでしょう?それにブン投げたあと金貨払わせたり…出しなさい」


 「いやです。これは私が体を張って稼いだお金です。慰謝料です。」


 「あのテーブルはそれなりに良いものだったんですがね…」


 「そんないいものあんな酒場で使わないで下さい。」


 「食器に小物、置物等で全部で金貨10枚くらいですかね…払って頂けます?」


 「すいませんでした。これで勘弁して下さい。」


 金貨を1枚素直に渡す。


 「そうですね、残りはちょっかいをかけてきた方が悪いと言うことで、いくつか格安で依頼をしてもらい払ってもらいましょう。幸いランクも低い方ではないようですし、パーティの方も謝ってきてくれてますから、これで手打ちでいいですね?」


 「あのセクハラチンピラ冒険者は絶対許さない。」 


 「胸は育って無いけど、こっちはいい感じ…品性のかけらもないセリフで怒るのもむりありませんが、人に迷惑のかからないところでやって下さい」


 「迷惑のかからないところならいいですか?」


 「ええ、あとギルドに迷惑のかからないように…聞いてます」


 「言賃は取りましたからね!!支部長!!絶対に私にちょっかいをかけて、お尻をなでましたことを…生きてきたことを後悔させてやる!!お仕置きターーーーーイム!!!じゃあ、今日は帰ります。支部長おつかれさまでした!!」


 バタン!!


「アルバイトもほどほどにって言う暇がありませんでした…」


 



 支部長室から出て受付に戻ると


「見てくれよリオ。こんなに黒光したこの俺!かっこよくね!?っていうかマジパなくね?チョーいけてね?ほらニギニキしてみてよ?きっと手触りからその辺の安物ダガーとか、包丁なんかとは違うからさー?一回、一回だけ試してみてよ!ゼーッタイ後悔させないから。タダー、ちょーっ普通の刃物じゃ満足できなるかもしれないけど、それはそれでいい経験だと思うんだよねー。それにいいダガーを知ってないとこれから新しいダガーとの出会いの時にー、変なダガーにつかまされて長いダガー人生の一生を棒に振るのもどうかと思うわけよ。ダガーなのに棒を振るっていうのも可笑しいけどさ~、ん?今のところ?笑っていいよ~?え?面白くない?俺リオちゃんが笑ってくれるんならどんなことでもやっちゃうよ?だってリオちゃんの笑顔チョー可愛いもん。ホントホント。チョードストライク。え?軽くて信じられない?ウッソー俺リオちゃんに信じてもらえなくてチョーショック!マジ俺チョーショック!でもね?よ~く考えて?重いダガーと軽いダガーとどっちが使いやすい?」


 「どっちでもいいわクソダガー!」


 私は八つ当たり気味カウンターに立てかけておしゃべりしていたクソダガー(元魔王)を蹴りとばした。


 ガンと壁にぶつかりズルズルと落ちていった。


 「マリ…嫉妬か…?モテるダガーは辛いぜ」


 寝ぼけたことを言ってるダガーを拾い上げ、


 「もう帰るね、また明日。」


 そうリオに伝えて私は家路に急いだ。ギルドの裏の貸しアパート二階、3部屋に台所、風呂付きのナイスなお家に…可愛い弟だけが待っていると思いながら…



 私の今日は、まだ終わらない。


 アリスの話しに続きがあって、これがタイトルに関係あります。書いてからこれはどうかと思ってしまったのでいつものおまけです。



 

 お姉様が帰ったあと、私はお姉様が忘れていったハンカチをみつけてしました。

 次回お返事を持ってきてくださるからその時にお返しすればいいんだわ!それまでに洗濯して準備しておけばいいんだわ!

 全開で今夜は楽しもう!


 「アリス様アリス様」


 マチルダが呼んでいた。ボゥっとしていたのだろう。


 「キチンと綺麗に洗ってお返し出来ますから…心配いりませから」


 最後まで言わなくても分かる…なんて出来たメイドなんでしょう。


 「後は頼んだわ…」


 私の答えに彼女は


 「畏まりました。」


 と一言だけしっかりと答えた。その答えに満足した私はハンカチを持って部屋へ向かった。


 

 お姉様の持ち物はまるで強力な呪いがかかっているのか、部屋につくなり私はハンカチの香りを肺に一杯になるまで吸い込んだ。


 ハァハァハァ


 「お姉様お姉様お姉様の香りが香りが…!」


 フゥッフゥッフゥッ


 駄目!やめられない!止まらない!


 「こ、こんなの初めて!わたしっ!しらない!なに!?なにこれ!」


 身体の奥から熱いなにかが込み上げてくる。手、足が震える…ベッドで布団にくるまり、左手はハンカチを持ち、香りを逃さないように顔に押し付け、右手は自分の敏感な部分を弄ってしまう。服は乱れ、肌が露わになっているのを自覚があるが着直すことはないでしょう。ああ、なぜここにお姉様がいらっしゃらないのか、わたしを弄んで欲しいのに…


 快感が身体を貫いていく、


 「お姉様!アリスを!アリスを見て、みてくださいぁぃぃ!」



 



 


 

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