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メイドさんがみてる

 

 しばらく沈黙が私とアリスの間に漂っていた。下手な言い方をするときっとアリスは泣いてしまう…アリスはうつむき、ぶつぶつ何か呟き始めた。私は何も言えずただ黙っていた。


 「あんな変態達より私の方が危険なんて…危険なんて…変態より変態?ええっ?ええっ?なんでですの?ううっ…」

 

 だ、誰か助けて。


 心の叫びが口から飛び出したそうになる。自分で切り捨てたとはいえ、うまいフォローもできず窮地に陥るなんて、きっと世の中のイケメン、チャラ男はこんな時でも女の子を上手くかわしたり慰めたりして、好みの可愛い子を堕としたりするんだろうな……アリスとかきっといろんなイケメンからチャホャされて慰めてもらったり…しかも金持ちイケメンに…でも…いや…しかし…それでも…それにしても泣きそうなアリス可愛いな……泣かしてしまったらきっと、私好みの……


 「あ、あぶない!?」


 思考がとんでもない方向へ進んでいきはじめた…くっ!これもアリスの魅力というのか…?いやもっと違う何ともいえないこの感覚……


 「お茶が入りましたよ。」


 気まずくあぶない空間は、マチルダさんの持ってきたそれはそれは美味しい紅茶と、クッキーにより終焉を迎えた。

 私とアリスの微妙な空気を察したのか、マチルダさんはさっさと準備を始めて紅茶とクッキーを振る舞っていくそれを堪能していくうちに、

 

 「マチルダさん、このクッキーもおいしいです。」


 「マリ様ありがとうございます。お帰りの際にゼフさんの分までお包みいたします。」


 「ありがとうございます。弟も喜びます。」


 「紅茶もおつけしますわ。」


 「やった!!」


 「あのですね、あのですね、お姉様、そのクッキー私がマチルダに言って味付けかえてもらったのよ。だからとってもおいしいですの。」


 「そうでしたね、それにこの紅茶はアリス様が見つけて仕入れてこられたのでしたわね。」


 「すごいじゃないアリス!やっぱりセンスあるわ。」


 キャッキャッ、ウフフな淑女達の午後そんな題名タイトルでもつきそうな、そんな緩い空気に包まれているなか唐突に、


「ところでお姉様!お金なら払いますから!借金も私がはらいますから!いくら!?いくらはらったら私だけのお姉様になってくれますの!?」


 かなりゲスな発言をしてきたアリスに私はちょっと引きながら、


「さっきもいったけどお金だけの問題じゃないのよ…」


 もちろん借金は問題だけど、それ以上に自分を大事にしたいし、アリスの事も嫌いじゃない。この仕事もけっして安全ではないのはわかっているけど、しかし、四六時中アリスと一緒はもっといろいろな意味で危ない。私の本能が危険だと言っている……

 私が葛藤し黙っていると…


 「そんなにいやですの?」


 「そ、そういうことを言うアリスは嫌いかなー?な、なんて…。」


 「いえいえ、アリス様にはきちんとおっしゃるべきかと?それがアリス様のためですよ?」


 「えぇぇ?ほんとにぃぃぃぃ?ほんとに嫌いなのですか?お姉様ぁぁぁぁぁぁぁ?」


 涙目になりながらすがってくるアリス。私はひきっつた笑いを顔に張り付けたまま


 「マチルダさん、冗談であまりアリスを追いつめないでくださいよ。そんなことないからねーアリス?」


 「いえいえ、そんなカネヅルにはときに厳しく、ときに優しく、お金に対する愛情をさも本人に対する愛情を持ってるかの用に振る舞えるなんて、金貸しの見本のような方ですね?」

  

 「すごくアリスが固まってるんですが…?」


 多分今までの事を思い出しながらいろいろこじつけているんだろうか?

 

 「そんなにお金だけの付き合いならこんなにここでゆっくりしないのに…」


 そう釈明しようとすると、


 「滞納されたら面倒ということもありますわ?額が額ですから。返済を渋られる関係よりも、問題なく返済できるか常日頃から経済状況を確認、もし焦げ付かせても差し押さえ出来そうな物を物色しておけば安心していれますわ。円滑な返済をするうながす為にも実に合理的で割り切った関係です。さすがマリ様素晴らしいです。ではそろそろ私はダガーさんの元へ行かなければ。臭い抜きもそろそろ終わったでしょうし、本格的なお手入れをしてあげなければいけませんので…アリス様のことはよろしくお願いします。」


 そう言い放ってマチルダさんは中庭から出て行ってしまった。


 そして残された私とアリス…


 「私とお姉様はお金だけの関係なのでしょうか?」

 

 「え、えぇぇぇぇぇ?」


 「ここには4皇金貨入っています。これで完済ということになります。これで私たちの関係は終わりということになってしまうんでしょうか?」


 「え、ええぇぇぇぇ?も、もうそれだけ稼いだの?」


 「やはりお金だけの関係だったのですね…おねえぇさまぁぁぁぁ!!非道い私の純情と純潔といろんな初めてを奪っておいて…金の切れ目が縁の切れ目なのですね?ヒドイ!ヒドいですわ!!」


 「いろいろと誤解を招くからその言い方やめて!!純潔も初めても何も奪ってないでしょう?」

 

 「いいえお姉様!!言わせていただきますわ!!アリスの!!私の!!!!妄想の中では毎夜おねえっさまにあんなことやこんなことで私はもうっ!!!もうっつつつうつつっっっっっっ!!!!」


 「黙れ変態!!」


 




 しばらくしてアリスが落ちついてからぼつぼつ話し始めた。  


 「もともと資本金はありましたし、ギルドからの借金は呼び水のようなものですから…。」


 やはり商才のある娘だったんだ…只の貴族でなく商人の才覚があるんだろ。私はあらためてそう認識する。ギルドで借金を申し込むなんてまだ内々で始めたばかりの頃に、あんな額を借りるなんてどんな情報もうをアリスは持っているんだろう?確かに貴族であるからある程度の信用貸しはあったが、末娘に対してポンと貸せる金額ではない。他の商人も貴族の道楽で転けると踏んでいて、まともな取引をしようとしていなかったのもある。が、ギルドが貸し付けても大丈夫というある意味の信用を手に入れたというのが最終てきな狙いががあったのかもしれない…まあ、最終決定は私が出してしまったんだけどね…。こうもうまく回すとは、繊細にて剛胆とはこの娘の事だと私はつくづく思った。ちなみに冒険者としてギルドに登録している。クラスは最低ランクだが、やり口はきっと最高クラスの交渉スキルを持っているんだろうな…


 「そういえば…最近は新しい事業も順調らしいね?それも関係しているの?」


 「はい。その本を作って売り出すと言った事をはじめまして…」


 「おお、すごいじゃないの!!」


 そういえば最近になって本がかなりの数市場に出回るようになったらしい。それも極最近のことだ。


 「それで、一度返済したことにして、もう一度お借りしたいんですの。そういったことは可能でしょうか?」


 確実に回収できるのならこれは貸す側としてもかなりお得だ。回収できるのが確実なら特に問題ないが、額が額なので即答は出来ない。


 「私的にはアリスの事だから大丈夫だと思うの。で、貸しても大丈夫と思うけど、さすがに独断で決められる額じゃないので支部長に確認してからでいい?」


 その言葉にアリスが喜んで、


 「はい、お姉様がまたお持ちになって来ていただけるなら私…私…。」


 「はいはい、私がちゃんと持ってくるから安心して待ってるといいわよ。後日になるけど。」


 そういって革袋の中身を確認し私は回収した。


 そのあとは雑談で夕方まで過ごしたのだが、マチルダさんが手入れをして帰ってきた変態ダガーは、ご機嫌になりすぎて、アリスにちょっかいをだした。その際に不用意な一言がマチルダさんとアリスの逆鱗にふれ逃げるように屋敷を出るはめになってしまった。


 「イヤー人の趣味嗜好は多彩にわたるなー?」


 ご機嫌に語るダガー(元魔王)を本当に黙らせるには私も覚悟を決めないといけないのか…と最近思うようになってきた。


 すっかり赤くなった空と、石畳の道をそんなことを考えながらギルドまでの帰り道を急いだ。 

 

変態ダガーとメイドさんの風景


これもどうかと思ったのでカットしました。ついでに読んでも読まなくてもおまけみたいなものです。





 シュッシュッ


 「いい!!とてもいいぞマチルダ!!」


 「お褒頂き私もうれしいかぎりです。」


 彼女は細い指で挟んだ黒光りする彼の刃を優しくさする。


 「こんなのはひさしぶりだ、くっ、さすがに手慣れているではないかええ?一体今までに何本の刃をこんなに手玉にとってきたんだ!!この淫乱が!!」


 「数えるのが面倒になるほどですわ。それにしてもいいんですか?私とこんなことしてしまって…私としてはこんな立派なモノを見て触れるのはのは久しいので、もっと堪能させていただきたいですわ。」


 「本当にモノ好きだな貴様は…」


 呆れたような、それでいて満足げなその声にマチルダと呼ばれた女メイドは反応する。


 「だって偶にしかきて頂けない上にいつも少しお話するだけなんですもの…」


 「そうか、それなら好きにするがいいぃぃ!?な、なんだこれは!!すごくすごく刃になじむ!ああ!」


 「秘伝の油ですわ。」


 そういうと刃に塗りつけたその油をまんべんなく塗りたくる。何度も何度もなじませるように彼女の手で直接塗り込む。まるで肌と刃を油を通じてお互いを通わせるように…

 

 「うぉおおお!!なんだ!なんだこの感覚は!!マリのイツモノとは違う!!まったく違うんだ…あ、…あ、…こ、こえ出ちゃう」


 「もっと気持ちよくなっていいんですよ?」


 そういうとメイドは手の位置をずらしていく。


 「ヒッ…」


 黒光するダガーが一度震え、それっきり何もしゃべらなくなった。


 

 その後、まるで新品のようにピカピカになったダガーがマリの元へ帰ってきた。 


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