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お姉様…ぇ

 「お姉様!!」


 彼女は私を抱きしめて、中庭の中心で叫んだ。


 誰がお姉様だ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 本日午後のお仕事は、とある貴族様の借金回収。没落貴族でもないのになぜ借金?

 ちょっと大きめのお屋敷にの前に来ると門番さんに用件を伝え門を開けてもらい、その後執事さんに引き合わせられ促されるままに中庭に連れてこられた。そこには優雅にアフタヌーンティーを嗜んでいる女性が見えた。

 白いワンピースドレスに身を包みこんだ彼女は、私を確認すると席から立ち上がり一気に距離を詰めて私に抱きついてきた。そう、私よりも年下なのにずっと女性的な彼女、アリス。


 「ねえ、アリス。お姉様って呼ぶのやめてくれない?」


 「ええ!?どうしてですの?」


 「だ、だってアリスの方が…ねえ?」


 「お姉様?私はお姉様が只年上だからお姉様と呼んでいるわけではありませんのよ?」


 呟きとともに零れた魅惑的な微笑みに私のあまり胸がドキッとする…こんな表情を出来る人がお姉様って呼ばれべきじゃないの?それにさっきからご立派なオムネが押し付けられているのですが!押し付けられているのですが!!

 そう思っていても言葉にできずに私は、


 「そうなんですか…?」


 と、なんともいえない答えしか返せなかった。


 そんな私に彼女は顔を近づける。


 や、やめろいい香りをさせないで!そんな可愛い潤んだ瞳で見つめないで!頬が染めないで!こっちも赤くなる!自分の頬が火照ってくるのがわかる…や、やめて、背に回した手が背筋をなぞる…


 「ふぁっ!?」


 こ、声がでちゃった?


 「お姉様…アリスは…アリスはもう…。」


 あ、ああ、長い睫毛にその桜色の唇…わ、私は…

 

 「失礼します、アリス様。」


 ビクッ!っとしたその一瞬で正気をとりもどした私は、身体をアリスから離しその場に直立不動の姿勢をとった。


 「お楽しみ中申し訳ありません、アリス様。マリ様のお仕事に支障がありそうでしたのでつい…」えへ


 申し訳なさそうに立ち尽くしているメイドのマチルダさん。その手にある高そうなトレーには、革袋がちょこんと置いてあった。


 「そうね、お姉様のお仕事に支障があってはいけないわ。残念ですわ……ほんとに…ほんとに…お会いできるのを楽しみにしてたのに…でも、……お仕事ですもの……きっとまた……今日は本当に……たの、たのしみに…………」


 肩を落とし、口から何か出てくるんじゃないか?と思うくらい深い深い溜め息をつき本気で残念そうに呟く彼女についつい私は、


 「きょ、今日は回らないといけないところは、ほとんど回ってあるから夕方までにギルドに帰れたら大丈夫だよ?」


 その言葉にアリスは、キラッと目を光らせ、シャキッと背筋を伸ばし、お嬢様オーラを全身から発しはじめた。


 「本当ですの?本当ですの??ではでは本日は夕方までお姉様とまったり、ゆっくり出来るのですね…じゅるっ。」


 「お嬢様はしたないですよ。本当によろしいのですかマリ様?」


 マチルダさんは、アリスの口元をそっと拭きながら私に問いかける。


 「え、ええ。今日はウオルトさんと、マーベルさんと回収しているので、アリスが終われば特に問題はありませんよ。それに今日は私もいろいろと疲れました…。」


 「そうでしょうそうでしょう。お疲れになっているときにはお茶を…そうそうですわ。マチルダ

!」

 

 「分かりました、お嬢様。準備して参ります。と、いろいろと準備してまいりますので、先にお仕事をお済ましになられてはいかがでしょう?」


 と、テーブルのうえに革袋の乗ったトレイを置き、マチルダさんは一礼して去ろうとしたところで、


 「マリ様いつも腰に付けていらっしゃる方がいらっしゃらないようですが…お手入れか何かに出されているのですか?」 


 おおっと、空のケースでも見えたのかな?マチルダさんに問われ、


 「そうよね。何時もだったら私とお姉様との甘ーい時間を邪魔する雑音が、今日はまったく聞こえないから私ちょっと本気だしちゃったもの。いないならいないで私としては困りませんけどね。そのほうが…。」


 仕事を済ましてさっさと帰っておくべきだった…と後悔して私だったが、アリスのはしゃいでる姿を見るととてもそんなことが言えなくなる。仕方ないので、ある部分をおおまかにボカしながら私は大体のことをマチルダさんに説明した。すると、


 「夕方までお時間があるのでしたら、こちらできれいにお手入れさせていただきますが…それにあのダガーさんには私も興味がありますわ。」


 ニヤリとマチルダさんが笑ったような気がした。まあ、腐っても元魔王のダガーをどうこうできるとも思えないのできれいにしてもらうことにした。まだ、ブツブツいって帰ってきていないようだが、リフレッシュすればきっと元に戻るだろう。多分。

私はマチルダさんにこの革袋は様々な素材が入っていたので凄まじい異臭がすると思うが、気にしないでねと言っておいた。あとダガーに巻き付けている紙は捨ててもいいよ、と伝えたところですこし複雑な顔をしていたが、言いだした手前もう引けないのだろうか。申し訳ないが、あとはよろしくおねがいします。


「それにしてもいつまでこの仕事を続けるつもりですかお姉様?」


 マチルダさんが行ったあと、少ししてからアリスは聞いてきた。


「そのギルドの制服もかわいくありませんし、お姉様にはもっとお似合いな制服もあるでしょうし…」


 私の仕事にも制服にも文句があるようだ。


 「いつも言っているがアリス、私はギルドに恩もあるし、義理もある。それにこの仕事は私の務めでもある。困っている人、今から何かしようとしている人に少しの勇気、キッカケを与えられればと思っているよ?それに私は暴利をむさぼっていない、あくまで手間賃、そして二度と借りないように自分を戒めるためのものなのよ?それにほら、走り回ったりするには受付のスカートやエプロンドレスみたいなののはチョットね…それに黒の上下だと汚れも目立たないし、この外套だと『鞭』も隠せて使い勝手がいいなーと…そう、それにこの仕事をしていなかったらアリスと会えなかったしきっと。」

 

 詐欺師が吐くような言葉かどんどん出てくるしかしこれは私、ハヤノマリの言葉ではない。


 「最後に嬉しいことを言ってごまかそうとしていませんか?でもですね、知ってますのよ。お姉様がこの街のギルドに多額の借金があることは…あと受付のエプロンドレスがその性格と同じように、慎ましい慎ましいお胸では似合わないと、ギルド長に言われたことも…」

 

 うう…泣けてきた。


 「それに、今私が言っているのはそちらのお仕事ではありません。嬢王様…。」


 ピクッ…


 「アルバイトの方はさぞ稼いでいらっしゃるのでしょう?取り立てというなの……プレイに……。」


 アリスさん、目が怖いですよ。それにしてもプレイとかいわないでほしい!しかし、あながち間違ってもいないような気がする。


 「アリス!!言い方!言い方!!誤解を招くよ!!」


 「いいえ!」


 ガンとテーブルを叩き革袋が空に舞う。感情が高ぶってきたのかそのまま続ける。


 「あんないかがわしい行為…どんなに言い繕ってもうらやま…けしからないです!!」


 チャリンと芝生の上に落ちた革袋をアリスはテーブルの上に戻し何事も無かったように、

 

 「と、いうわけでこの仕事をやめて頂いて、こちらの屋敷で私の専属メイドとして朝、昼、夜、公私ともに一緒にお仕事しましょう?大丈夫です、私に5皇金貨(約5000万円)をポンと貸してくださる先見の明のあるお姉様ですもの、一緒にガンガン稼ぎましょ?」


 「いつも一緒はチョット…あ、中身確認していい?」


 「なんでですの?なんでですの?」


 「身の危険を今の仕事以上に感じるからです…」


 


 「お茶が入りましたよ。」


 遠くでマチルダさんの声が聞こえる。


 今日の夕方まではまだまだ長そうだ…

 


 

 


   


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