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人って何でこんなに優しくて残酷で綺麗で汚い生き物なんでしょうね。

作者: クロユキ











先日、友人が交通事故で亡くなりました。


そいつは心優しい性格で、クラスでも皆に慕われていました。友達も多くて、成績も良くて、先生からも信頼されていました。

友達からの頼みごとも苦笑しながらも受け入れてくれるし、かといって言われるがまま動くような弱い奴ではなかったです。自分の意見もちゃんと言える、強い人間でした。皆もそんなところに惹かれたんだと思います。俺もその1人でしたから。



そんな皆の人気者が、先日死んだんです。










俺はその瞬間を見てしまったんです。


忘れもしない。

夕方の5時に鳴る帰りましょうの放送が響く中、俺はそいつと一緒に途中まで帰ってました。

分かれ道、また明日と挨拶して背を向けた10秒後に車の激しい衝突音が聴こえて咄嗟に振り向きました。




小さい男の子が、何故か泣きわめいていて、そのすぐ横にはあいつが血を流しながら倒れびくともしませんでした。

轢いた車は慌てて逃げ出し、男の子はお母さんらしき女の人に抱き締められていました。



俺は、その光景に立ち尽くしました。

誰も友人に駆け寄らない。

友人があの男の子を庇って事故に遭ったのは目に見えて分かりました。なのに、俺を含めその場にいた人全員、友人に駆け寄ることが出来ませんでした。

ついさっきまで笑い合っていた友人が、今では微動だにしないのです。俺は暫く状況を理解出来ませんでした。

ただ覚えていたのは、夕暮れの淡々とした放送と近付いてくる救急車の音がやけにうるさく響いていたことだけです。










友人は即死でした。

車の運転手は逃げ、男の子の母親も気が動転したように立ち去り、俺はただ状況整理がつかないまま、立っていました。


翌日のクラスでは皆が涙し、悲しんでいました。俺はただただ申し訳なくなり皆の前で頭を下げました。でも皆、俺を責めることはしませんでした。

「お前は悪くない」と、クラスメイト全員が口を揃えて言うのです。

このクラスが大好きでした。皆優しくて、仲が良くて。

でも今の俺にとっては辛いだけでした。









友人に親友はいませんでした。

それはあいつにとって、皆全員が大事だったから1番を決められなかったからです。逆を言えば、皆があいつの親友だったんです。

なので、葬式の時の別れの言葉を誰がするかクラスの皆で話し合いました。

結果、最後にあいつと一緒にいた俺がクラスの代表として挨拶することになりました。










皆の啜り泣く声が聞こえる中、俺は花に囲まれた友人と向かい合いました。額の中の友人は、つい先日までの笑顔そのままでした。

今までのお礼と、謝罪。ただそれだけを繰り返しました。言葉を詰まらせながら。








先日、そんなことがあったんです。



車の運転手は見付からず、あの親子もどこの人かは分からずじまい。

この出来事で、人って優しくて残酷で綺麗で汚い生き物だと知りました。



俺自身、自分は汚い人間だと知りました。

だって、友人を前にして何も出来なかったんですから。

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