表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/57

成長

 庭の黄色い花畑で、小さな男の子が走り回っている。

 黒い髪。大きな目。よく笑う子。ハノは、四歳になった。


 ハノは、ノナが旅先で拾った子どもだということにした。

 菜の花や子ノナは金色の髪で、ハノとは髪の毛の色が違うから。

 もう少し大きくなったら、本人にもそう伝えようと決めている。


「ママー! おはな、きれい!」


 ハノは、花畑を駆け回る。

 転んでも、すぐに立ち上がる。泣かない。笑ってまた走り出す。

 菜の花が、縁側からその様子を見ていた。

 四十を過ぎた菜の花は、白髪が少し目立つようになった。

 隣には、リオンが座っている。

「元気だな」

「うん。元気すぎるくらい」

「魔王だったとは思えないな」

「うん」

 二人は、微笑み合った。


 母ノナは、六十六歳になっていた。家の中で過ごすことが多くなった。

 でも、天気のいい日は縁側に出て、ひ孫の姿を眺めている。


「おばあちゃん!」

 ハノが、母ノナのところに駆け寄ってきた。

「おや、ハノちゃん」

「はい、おはな」

 小さな手に、黄色い花が握られている。


「ありがとう。きれいだね」

「うん! おばあちゃんにあげる!」

「嬉しいよ」

 母ノナが、ハノの頭をなでる。ハノは、嬉しそうに笑った。


「ハノちゃん」

「なに?」

「大きくなったら、何になりたい?」

 ハノは、少し考えた。それから、にっこり笑って答えた。


「おはなやさん!」

「お花屋さん?」

「うん! みんなに、お花あげるの!」


 お花屋さんになりたいと言う、普通の四歳の男の子。

 菜の花は、胸が熱くなるのを感じた。


 ハノは、花が大好きだった。

「ふんふふーん」

 今日も歌いながら、水をやり、雑草を抜いている。


 子ノナが、そんなハノを見て微笑む。

「ハノは、本当にお花が好きだね」

「うん」

「どうして?」


 ハノは、少し考えた。

「んー、わかんない」

「そう」

「おはなは、みんながすきだから」

 子ノナは、ハノを抱きしめた。

「ハノは、優しい子だね」

「えへへ」



 時が経ち、ハノは、九歳になった。

 学舎に通い、友だちと遊び、花の世話を手伝う。

 普通の男の子として、育っている。


 ある日の夕方。ハノが、庭で花に水をやっていた。

 菜の花が、隣で見守っている。


「ノアおばあちゃん」

「ん?」

「ぼくね、ゆめをみるんだ」

「夢?」

「うん」

「どんな夢?」

「くらいところにいる」

 菜の花は、少し緊張した。

「だれもいない」

「そう」

「ずっと、ひとりでないてる」

 ハノは、じょうろを置いて、菜の花を見た。


「ぼく、ひとりぼっちだったの?」

 菜の花は、言葉を探した。どう答えればいいのか。


「……そうだよ」

 菜の花は、正直に答えた。

「ハノは、昔、一人ぼっちだった。長い間、ずっと」

「そうなんだ」

「でも、今は違うでしょう?」

「うん」

「ママがいる。おばあちゃんたちもいる」

「うん」

「だから、もう一人ぼっちじゃない」

 ハノは、少し考えていた。それから、にっこり笑った。


「そうだね」

「そうだよ」

「おばあちゃん、ありがとう」

「何が?」

「んー、わかんない」

 菜の花は、ハノを抱きしめた。


「こちらこそ、ありがとう」


 ハノは、不思議そうな顔をしていた。

 でも、嬉しそうに笑って、菜の花を抱きしめ返した。

読んでいただき、ありがとうございます。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。


本作は完結まで執筆済みで、全56話・約14.9万文字です。

3/29(日)まで毎日20時に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ