表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/52

帰還

 四人は、丘の上から聖域を見下ろしていた。


「フィルネだ」

 リオンが、指さす。

「帰ってきた」

 菜の花が、つぶやく。


 二年ぶりの、故郷の門。

 空は青く、雲は白い。あの日、旅立った時と同じ空。

 でも、四人は変わっていた。


 菜の花は、十七歳になっていた。

 背が少し伸びた。顔つきが、大人びた。

 右手のナックルダスターは、傷だらけになっている。浄化の力が形をなしたものだから、直そうと思えば直せる。でも、そのままにしている。


「行こう!」

 リーネが、歩き出す。

「うん」

 三人が、後に続く。


 丘を降りて、門へ向かう道。

 旅立ちの日も、この道を歩いた。一度だけ振り返って、あとは前だけを見て歩いた。

 あと、少しだ。二年の旅は、終わりに近づいていた。


「あ、帰ってきた!」

 誰かが叫ぶ。

「聖女様と勇者様だ!」

 歓声が広がる。


 人々が、こちらに駆け寄ってくる。

 見覚えのある顔がたくさんある。旅立ちの日に、見送ってくれた人たちだ。

「おかえりなさい!」

「無事でよかった!」

 口々に声をかけられる。菜の花は、少し照れながら手を振った。


 人混みの中に、見慣れた顔を探す。

 いた。

 門の脇に、静かに立っている。

「母さん!」

 菜の花が、駆け出す。人混みをかき分けて、走る。


 ノナは、そこに立っていた。

 四十二歳になった母は、少し白髪が増えていた。

 でも、目は変わらない。強くて、優しい目。

「母さん!」

 菜の花は、ノナに飛びついた。抱きしめる。懐かしい匂いがする。

「ただいま」

「おかえり」

 ノナの声が、震えている。でも、笑っていた。

「約束、守ったよ。四人で帰ってきた」

「ああ……よく帰ってきた」

 ノナが、菜の花の頭をなでる。

「大きくなったね」

「そうかな」


 ふと見ると、リーネとミラも家族に囲まれていた。

 リーネの両親が、娘を抱きしめている。

 ミラの家族も、同じように。

 リオンは、騎士団の仲間たちに囲まれていた。背中を叩かれたり、握手を求められたり。照れくさそうにしながらも、嬉しそうだ。


 人混みの向こうから、シオナが歩いてくる。

 穏やかな微笑みを浮かべていた。

「お帰りなさい。よく務めを果たしましたね」

「ただいま戻りました」

 菜の花とリオンが、頭を下げる。

「お土産、たくさん買ってきました」

「ふふふ。楽しみにしていますよ」

 シオナの目が、きらりと光った。


「報告は明日で構いません。今日はゆっくり休みなさい」

「ありがとうございます」

 シオナは、四人を見つめた。

「よく帰ってきました。本当に、よく」

 シオナは、上を向いて瞬きをしていた。


 菜の花は、ノナの手を握った。

「帰ろう、母さん」

「ああ」

 旅は、終わった。

読んでいただき、ありがとうございます。

もし気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。


本作は完結まで執筆済みで、全56話・約14.9万文字です。

3/29(日)まで毎日20時に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ