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ゴムゴムの過多出血を止めるため、残ったマナを使って彼の体に空いた穴を塞いだ。

もちろん魔法を使えない俺ではなく、アイリアンが傷口を凍らせたのだが。


ゴムゴムを助けるため、彼を街まで連れてきた俺は、イサベルのいる工房へ向かった。


ドン、ドン。


「イサベル、いますか?」


扉が閉まっていたのでゴムゴムを下ろし、イサベルを呼ぶと、しばらくして彼女がぼさぼさの髪のまま外に出てきた。


「こんな時間に誰……きゃっ。」


床に倒れているゴムゴムを見て驚くイサベル。

俺は宙に手を振り、事情を説明した。


「友達が怪我をしていて、治療に使える薬はありませんか?」

「ユージンの友達なら、私の友達でもあるわ。遅くなったけど、中に連れてきなさい。」

「ありがとうございます。」


俺はゴムゴムを背負い、イサベルについて中へ入った。

彼の大きな体格のせいで足を引きずる形になり、寝かせる場所もなかったので、奥のテーブルを片付けて横にした。


そしてイサベルがゴムゴムの状態を確認すると、

血を流しすぎていて通常の方法では無理で、回復ポーションが必要だと言った。


「お願いします。」

「心配しないで。治るから。」


イサベルは棚から赤い試薬の入った瓶を持ってきた。


ポン。


栓を抜き、緊急性の高い部分に少しずつ垂らしていくと、驚くほど目に見えて傷が塞がっていった。


「新鮮なトロールの血と、いくつかの薬草を調合したポーションなの。こう使えば、ひとまず急場はしのげるわ。」


そう言いながら、目に見える穴はすべて塞ぎ、残りは口から流し込んだ。


「傷は回復したから……次は不足した血を補いましょう。」


今度は薬草と石の器、小さな乳鉢を持ってきて、石皿に薬草を入れてすり始めた。


ゴリゴリ。


心地よい音。

黙って聞いていると、

気持ちが落ち着いてくる。


ひとまず危機を脱したことで、ようやくイサベルの姿が目に入った。

ずっとマントを着ていたせいで気づかなかったが、彼女には細長い尻尾があった。


つまり、人間ではないということだ。


尻尾の先は三角形に尖っており、

背中には小さな翼が生えていた。


そういえば、本人の口から長く生きているようなニュアンスを感じさせることもあったし、

今の若々しい見た目で人間だと考えるのは無理がある。


となると長命種ということになるが、

魔界には砂粒のように多くの種族がいるため、どの種族かまでは分からなかった。


サラリ、サラリ。


時折尻尾が揺れるたびに、

無意識にそこへ視線を奪われてしまう。


イサベルはすり潰して作った薬草の汁をスプーンですくい、ゴムゴムの口へ流し込んだ。

体内で不足した血を生成する薬草らしい。


「はい、これであとは安静にしていれば大丈夫よ。」


治療が終わったと言われ、俺は再び頭を下げた。


「いいのよ。私も在庫整理を……あらあら、ふふ……ユージンの友達の命を救えたんだから、それで満足よ。」


在庫を使ったかどうかなんてどうでもいい。

ゴムゴムが助かった、それで十分だ。


夜遅くに訪ねてきたうえ、このまま彼をここに置いていくのも迷惑だと思い、

ゴムゴムを別の場所へ連れて行こうと、再び背負い直した。


なぜか、

イサベルが名残惜しそうな口調で言った。


「目を覚ますまで、ここにいてもいいのに。」

「いえ。夜遅くに来て、男二人が居座るのは迷惑でしょう。俺たちはこれで失礼します。」

「そういうことなら仕方ないわね。また会いましょう。」

「はい。」


いつものことだが、彼女の工房を出る頃には、全財産の半分が消えていた。



見慣れた天井だ。

もう少し寝ていたかったが、静かなはずの家の中から聞こえてくるゴソゴソという音で目が覚めた。


本来なら家には俺一人のはずだが、今は俺以外にもう一人いる。


音のする方へ顔を向けると、ゴムゴムが冷蔵庫から食べ物を取り出して食べていた。


治療後に家へ連れてきたのだが、

イサベルに治療してもらってから一日も経たず、重傷を乗り越えたゴムゴムが、まるで蜂蜜を舐める熊のように冷蔵庫を漁っている。


片隅に山積みになったゴミ。

前にもこんなことがあった気がするが、食べている最中は犬でも手を出さないと言うし、放っておいて体を整えることにした。


ベッドに横になり、共用修練法を使う。

深く息を吸い、ゆっくり吐く、その繰り返し。

体がすっきりしてきたところで、アイリアンが姿を現し、一言言った。


「なぜそんなことをしている?」

「どういう意味だ?」

「マナの集め方が非効率だ。」


いきなり現れて喧嘩を売る気か。

気分が良かったのに不機嫌になった俺は、これで問題ないのかと聞いた。


「頻繁に姿を見せても大丈夫なのか? カルマを消費するんだろ?」

「問題ない。何事も最初が一番大変なものだ。今は当時の百分の一のカルマも使っていない。」


それはそれで、あまり良い知らせじゃないな。

つまり、これから頻繁に会うということだ。


「それで、何が非効率なんだ?」

「そんな集め方では、ほとんどが拡散してしまうだろう。」

「呼吸するだけで強くなる誰かとは違うんでね。」

「そうだろうな。ドラゴンハートも一部しかない。それでも言えるのは、今のお前は自分の資源を活かしきれていない、ということだ。」


どういう意味だ?

俺ほど能力を活用しているやつがどこにいる。


金は使うべきところで使い、

鎧もきちんと活用している。

それに、イサベルから共用修練法も教わっているじゃないか。


「正直、よく分からない。回りくどい言い方はやめて、はっきり言ってくれないか。」

「……そうか。互いのためにも、その方がいいな。今のお前のやり方は、飲もうとする水を口に含んでは吐き出し、残った水分だけを摂取しているようなものだ。それくらいは分かるな?」

「分かる。」


一度の呼吸で取り込めるマナは一部で、その大半は魔気なのだから仕方がない。


「じゃあ、いっそマナを捨てて魔気に乗り換えるか?」

「ふざけるな!」

「急に大声出すなよ。」

「私がお前を選んだ最大の理由は、体が魔気に汚染されていなかったことだ。」

「あの時、他に選択肢がなかっただけじゃないのか?」


皮肉を込めて言うと、ため息が聞こえた。


「いいから黙って聞け。」


そう言われ、俺は親指と人差し指を合わせて口を閉じる仕草をした。


「どこから話した……お前と話していると、私まで馬鹿になった気分だ。」


馬鹿になった、という言葉を聞いて、

俺は一文字一文字、はっきりと言い返した。


「マナ、効率、悪い。」

「そう言ったな……お前のマナ効率は悪いどころか、ゴミ同然だ。」


ゴミと言うほどか?

いきなりぶっ込んできすぎだろ。


「ドラゴンハートを完全にすれば、今とは比べものにならないほど、呼吸するように自然にマナを集められる。だが今はそれができない。だからその低劣な方法を使っているのは理解できる。とはいえ、もっと良い方法が目の前にあるのに使わないのを見ると、嘆かわしくてならない。」


一体どんな方法だというんだ。

大げさなだけで大したことなかったら、契約破棄だからな。


だが、アイリヤンの口から出た言葉に、俺は思わず口を開けて聞くしかなかった。


「魔気とはマナが変質したもの。それを悪だと言うつもりはないが、呼吸するたびに浄化すれば済む話を、なぜそこまで難しく考える?」


「!!」


頭に雷が落ちたような衝撃だった。

体に溜まった魔気は浄化しているのに、なぜこの発想に至らなかったのか。


姿勢を正し、呼吸しながら浄化を使ってみる。

すると、これまでとは比べものにならない量のマナが集まってきた。


「こんなのがあるなら、もっと早く言ってくれよ。他に改善点はないのか?」

「哀れに思って教えてやれば、その言い草か……今やったことを、普段からやるようにしろ。」

「普段から?」

「息をする時、いちいち意識しているか?」


呼吸なんて当たり前すぎて、普段から意識する人間はいない。


いいことを学んだ。

元ドラゴンだけあって、知識も豊富だ。

前に見た限り、魔法も使えるようだし。

俺は俺にできることをやって、魔法はアイリヤンに任せればいいかもしれない。


「何を考えている?」

「ん? どうした?」

「良くない気配を感じる。」


勘が鋭いな。


「建設的なことを考えていただけだ。」


信じていないのか、

疑わしそうな顔でこちらを見てくる。


「違う気がするが……まあいい。それより心象に入ろう。教えることがある。」


教えること?

何を教えてくれるのか分からないが、

これまでアイリヤンから学んだことで無駄なものはなかった。

心象にまで入って教えるというのだから、自然と期待が高まる。


俺は目を閉じた。


心象の中央には、相変わらず芽が鎮座していた。

いや、もう芽と呼ぶのが失礼なほど大きくなっている。

街に出る前までは確かに小さかったのに、今では2リットルのペットボトルくらいはありそうだ。


もしかして根が出たのかと思い、下を覗いてみたが、その兆しはなかった。

第三位階になっていたら、さすがに気づかないはずがない。


「何を見ている?」

「根が出たのかと思って。」

「アンデッドを数体狩った程度で根が生えるなら、超越者などそこら中に溢れているだろう。」

「ちょっと言わせてもらうけど……」


少し教えたからって、やたらと人を諭そうとする。

一言言おうと顔を上げた瞬間、目の前に見知らぬ人物が立っていた。


「何を言いたい?」


あまりに予想外の光景に、言葉を失った。


「……アイリヤン?」

「どうした?」


否定しない。

心象に他人が入り込むはずもないし、残るのはアイリヤンしかいない。

それでも、知っている姿とは違う人の形をしているのが、ひどく違和感だった。


「なんでその姿……いや、それより。お前、男じゃなかったのか?」

「性別の話なら、女だ。」


口調だけ聞けば完全に男だと思っていた。

子供の頃、男だと思って一緒に遊んでいた幼なじみが、実は女だったと知った時――

それに近い衝撃が、俺を直撃した。

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