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魔王さまは暇つぶしをご所望です‼︎  作者: ハマ


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31.旅の終わり(けんけんぱ)

 調査を開始して三ヶ月が経過した。

 今いる町以外、反応があった場所は探し終えてしまい、次に向かう場所が無い状態だ。


「魔王様、そろそろ魔王国に戻ろうかと」


「やだ、もっと遊びたい」


「魔王国でも、いつも遊んでいるでしょう。キンコさんもそろそろ限界でしょうし、シロ達も待ってますよ」


 千里眼を使い魔王国の様子を見ると、目の下にクマを作り栄養ドリンクをがぶ飲みしているキンコさんの姿があった。


 シロやサリー達も頑張ってサポートしているが、初めての国家運営というのもあり四苦八苦している状況だ。

 魔王国は多種族国家。

 それぞれの種族の特色を知り、調整するのは困難を極める。

 一歩間違えれば、都市が独立する可能性すらある。


 私の場合、そうなったらそうなったで受け入れるのだが、キンコさんの責任感がそれを許さないのだろう。


 だから、必死になって運営している。


 ただこのままだと、あと三日くらいで倒れそうだ。見切りを付けて帰った方が良いだろう。


「ん〜、仕方ないな。この町観光したら帰ってやるか」


「調査ですからね、間違えないようお願いします」


 調査で各地を回っているのであって、決して遊んでいるわけでは断じてない。


「お土産はここで買って行くのか?」


「買いません」


 そんな物持って帰ったら、彼女らは怒髪天になるだろう。


「えー、じゃあいっぱいお話ししてあげよう」


「それもやめて下さい。シロが遠い目をして真っ白になってしまいますよ」


「え⁉︎ 何それ面白そうではないか⁉︎」


「面白くありません。精神的に追い込むのは、くれぐれも控えて下さいね」


 きっと話すだろうなとは思いつつも、これ以上口を塞ぐことも出来ないので、その時は諦めよう。


「では、最後の調査に向かいましょう」


「うむ!」





 最後の町は、国境に面しているが少し大きな村と変わらない規模だ。

 観光出来るような場所もなく、魔王様は町の子供達と遊ぶくらいしかやることがない。


 つまり、いつも通りだ。


「けんけんぱっ! けんけんぱ! けんぱっ! けんぱ! けんけんぱっ!」


「お姉ちゃんすごーい!」


「うむ、お姉ちゃんだから当然だな!」


 当たり前のように溶け込んで、子供達と遊んでいる。

 ここでは、女の子だけで集まって遊んでいるらしく、可愛らしい遊びが多い。


「……懐かしいですね」


 この遊びの光景は、遥か昔にも見た記憶がある。

 あの時は、私はただの神族で、娘も力の強い普通の子供だった。トーリが成長した頃合いで、別れを告げて陰ながら見守るつもりだったのだが、何の因果か今では魔王様の部下でトーリは魔王様の内側にいる。


 結果だけ見れば、まったく持って意味不明である。


 トーリの時と同じように、しっかりと育てたつもりだったのだが、なかなか我儘に育ってしまった。


「まあ、そこも嫌いではないんですがね」


 そんな風に過去を振り返っていると、けんけんぱをしていた女の子が転んで泣き出してしまった。

 心配したのか、魔王様は泣く子に近付いて行く。


「えーん! 痛いよぉー!」


「泣きやめ!」


 あんまりである。


 しかも魔王様の一括で、女の子は驚いてピタリと泣き止んでしまった。


 驚いて少しだけ開いた女の子の口に、魔王様はご自分のお菓子である飴玉を入れる。


「もんもん……美味しい!」


「そうだろう、我のとっておきのお菓子だからな。ついでにほら、足痛くないだろ?」


「ほんとだ⁉︎ お姉ちゃん魔法使い⁉︎」


「いいや、ただの魔王だ」


「ちょっとこっち来ましょうか」


 いきなり名乗るものだから、慌てて脇に抱えて離脱した。


 いいですか、分かってますか、約束して下さいと、人の国では無闇に魔王と名乗らないよう言い聞かせる。

 しかし、魔王様はどこ吹く風のように、


「はいはい、分かってるって。あれはその場の勢い。ロキにもあるだろう? その場の勢いで、女の獣人口説いたりとか」


 我は分かっているんだぞ、そんな顔をして言って来る。

 だが私には、まったく心当たりが無い。


「何のことを言っているのか分かりませんが、お願いしますよ」


「了解ぃ、今後は我はマオと名乗りますぅー」


 仕方ないなぁといった感じの魔王様。

 こう約束した時は、今日一日くらいは名乗らないようになる。でも、明日には普通に名乗ってしまうだろう。

 魔王様との約束は、一日限りの口約束なのである。





 この町の観光、もとい調査は直ぐに終わった。

 探す範囲が狭いのもあるが、反応が微弱で元々ハズレだろうとは思っていた。


「では、帰りましょう」


「ちょっと待って、何か食べて帰ろうよ。ここだけの食べ物、何にも食べてないよ?」


「特産品ですか? ここにはそのような物は無いんです。ただ、そうですね……あの屋台は甘味を扱っているようなので、この国では割と珍しいかも知れません」


 人の国で砂糖や塩が不足しているわけではない。

 一部の国を除いて、特権階級が独占して商売を行っているせいで、高額になってしまい出回らなくなっているのだ。


 この国も例外ではないのだが、お隣の国では普通に出回っており、国境を跨いだ商人がこうして商売しているのである。


「甘い物か……生クリームたっぷりの苺クレープが食べたい」


「そういう物は、魔王国に帰らないと食べられませんよ」


 生クリームに苺がふんだんとか、甘味に制限された人の国では無理な注文である。


 屋台に近付くと、そこには団子の文字があった。

 やはり甘味は魅力的なのか、町の住人が並んでいた。

 私達も最後列に並び、大人しく待つ。のだが、チラチラと注目を集めてしまう。

 注目されるのは、いつものことなので気にせずに並んでいると、一人の女性から声を掛けられた。


「あの、あなた方はお貴族様ですか?」


「違うぞ、魔おぷっ⁉︎」


「いいえ、私達は貴族ではありません。ただの旅行者です」


 残念ながら一日限りの約束も守れなかったようである。


 私が否定すると、「良かった、緊張しちゃったー」と安堵した様子だった。

 この国では、貴族が絶対的地位を確立しており、平民は逆らうことが許されない。

 だから身なりの整った私達の身分を聞いて、貴族なら順番を譲ろうと思ったのだろう。


 と思っていたら、違ったようだ。


「何だか最近、お貴族様が誰かを探しているようでね。もしかして、あなた達?」


「いいえ、違いますよ。私達は昨日来たばかりですので」


 笑顔で応対すると、「そっ、そうなのね」と大人しく引き下がってくれた。


「スケコマシ」


「何のことだか」


 塞いでいた手を離すと、魔王様の口から異音が漏れていた。


 それから直ぐに、私達の順番が回って来た。


 店頭に並んでいるのは、みたらし団子の一種類。

 ニカッと笑った店主は、魔王様を見て顔を綻ばせる。

 

「いらっしゃい、何個にする?」


「うむ、では三十本貰おう」


「三本でお願いします」


 魔王様の要求を上書きして、桁を一つ少なくする。

 三十本と要求したのも、食べ切れないと言って、なし崩し的にお土産にするつもりだったのだろう。


 まったく持って油断出来ない。


 それに、三十本なんて購入すれば、後の人達が購入出来なくなってしまう。


「ぶー」


「あはは、面白いお嬢ちゃんだ。だが、今回は父ちゃんの言うことを聞くべきだな」


「父ちゃん?」


 魔王様はそう呟くと、私を見上げる。


 知らない人からすれば、親子に見えてもおかしくはない。というか、育ての親ではあるので間違っていない。


「ん? 父親じゃないのか?」


「……いや、父親だぞ」


 この返事は意外だった。

 てっきり部下と言うと思っていたが、どういった心境の変化なのだろう。


「そうか。はい、一本おまけしといたぜ」


「ありがとうおじさん。ほら行こう、お父さん」


「はい?」


 懐かしい小さな手に引っ張られる。


「トーリ……?」


 思わず名前を呟いてしまうが、振り返った魔王様の顔はあの頃のトーリと同じ物だった。





 観光もとい、この町の調査を終えて帰路に着く。


 ある程度町から離れて、転移魔法で帰るつもりだ。


 だが、邪魔をする者がいる。


「んー……なあ、後をつけられてるか?」


「つけられてますね、排除しますか?」


「別にいい、どうせ追って来れないし」


 町を出た瞬間から、数名が追跡していた。

 残念ながら素人の動きなので、魔王様にも見つかってしまっているが、彼らは未だに気付いていない。


 ここで無用な争いをするつもりも無いので、ここは転移で逃げるのが正解だろう。


「そこを曲がった所で転移をします」


「うむ、むっ?」


 突然、目の前で紫電が発生した。

 バチバチと鳴り、何者かの攻撃かと警戒するが、敵意も脅威も感じなかった。


「この感覚……まさか」


 私達をつけていた者達が動き出す。

 その者らを結界で閉じ込めて、邪魔されないように動きを封じる。


 紫電は更に激しくなり、空間が割れるように砕け、その先から一人の少女が現れた。


「むっ、何やつだ⁉︎」


 少女は魔王様を見ると、失望したような顔をして気を失い倒れてしまった。


「魔王様……」


「なんだ?」


「今回の異変の原因を発見しました」


 倒れた少女は、この世界ではない異世界から訪れた存在だった。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。


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