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魔王さまは暇つぶしをご所望です‼︎  作者: ハマ


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14.四天王メルツ

 魔王軍には四天王がいる。


 獣人のシロ。

 魔女のサリー。

 ドライアドのリーフ。


 そして最後の一人は、人魚である。


「四天王が一人、メロウただいま戻りましたっス」


 人魚のメロウは空中に水を浮かせており、その中から上半身を出して魔王様に報告していた。


「うむ、よく戻ったな。報告を聞こう」


 玉座に座った魔王様が魔王様らしくしている。

 一応、魔王であることを覚えてくれているようで一安心である。


「はいっス! 南の海でサメがたくさん取れましたっス! 厨房に運んでるんで、是非食べて欲しいっス!」


「うっうむ、そうか、ご苦労だったな。他に何かあるか?」


「はいっス! メルツ帝国のゴーレム戦艦が軍事演習をしていたっス! 怖かったっス! 怖かったんで、半分沈めておいたっス!」


「そっちを先に言わぬか⁉︎ それ我でも優先順位分かるからな⁉︎」


 珍しく魔王様がツッコミ役に回っている。


 人魚のメロウは、海の王者と呼んで差し支えないほどの強さを有しているが、知能は少々不安が残る。それに人魚だからか、地上の情報に疎い所があり、重要性を理解出来ていないのだ。

 だから今回のように、情報の重要度に齟齬が生まれている。


 まあそれでも、見聞きした物は全て話してくれるので、何も問題は無い。


「ごめんなさいっス! 他にはリヴァイアサンが目覚めそうとか、クラーケンが産卵したとか、落とした戦艦の中にメルツ帝国の王子が乗っていたとかいろいろあるっス!」


「気になる内容が多過ぎる件について……」


 魔王様は遠い目をして、「どうしよう」と小声で呟いていた。

 そんな魔王様に助け舟を出そうと思う。


「魔王様、後で私が聞いておきます」


「おっおう、頼むぞ」


 安堵した魔王様はメルツに「もう何も無いよな?」と尋ねると、「もう何も無いっス!」と報告は終わり、謁見終了となった。


「下がって良いぞ」


「はいっス! ……あの魔王様……どうして水泳道具持ってるんすか?」


「え? 今からプールだからだけど」


 季節は夏。

 海開きも先日行われ、魔王国の首都にある大型プールも開始されたのである。


「ウチも行きたいっス! ウチの泳ぎを見て褒めて欲しいっス!」


「いいよ、一緒に行こう。みんなも来るし、楽しみだな〜」


 にへっと笑う魔王様の顔には、すでに魔王である威厳は残されていなかった。





 魔王国の首都マオファス。

 首都マオファスは、魔王城とは森を挟んだ場所にある。魔王様に庇護を求めた最初の町であり、今では様々な種族が暮らす都市にまで発展した。

 魔王城とマオファスを繋ぐ直通便も出ており、首都から通う者は無料で使用出来るようになっている。


「魔王ちゃん準備出来た⁉︎」


「出来ているぞ! シロちゃん水着の準備は十分か⁉︎」


 グッ! と親指を立てて、準備完了と主張するシロ。

 どうやらすでに着用しているようで、服をずらして水着を見せていた。


「ゴーレムバスが出るよー、みんな早く乗ってー」


 サングラスを掛けたサリーが声を掛けて、皆が乗り込む。

 参加メンバーは魔王様を始め、メルツ含めた四天王、私とキンコさん含めた財務室の面々も参加となった。


「どうして皆さんまで来られるんですか?」


「いやですねぇ、ロキさん達だけ楽しんで私達は魔王城で仕事って、それもう奴隷みたいなものじゃないですかぁ。たまには私達を労っても、バチは当たらないと思うんですよぉ。それともロキさんのような神様は、それも許してはくれないんですかねぇ?」


「いえ、そんなことはないですはい。皆さんで楽しみましょう」


「そう言っていただけると、神様に日頃頑張っている姿を見てもらえてるようで、また頑張れますよぉ。これからもよろしくお願いしますね」


「はい、それはもう……」


 キンコさんの眼力が凄い。


 言っておくが、魔王城の職員の給料は支払っているし、福利厚生も十分に行っているホワイトな職場だ。だから不満を言われる筋合いはないのだが……最近、私達は遊び過ぎているかなーという自覚はある。


 日頃の職務はしっかり行っているのだけれど、他の職員からどう思われているかはまた別の話だ。


 今度、他の職員にも休みやレジャーを提供しよう。


 全員がバスに乗り込むと、プシューと扉が閉まり発車する。

 バスの中はまるで修学旅行に行く学生のように賑わっており、とても楽しそうにしていた。


 私も到着するまで寝ていようと、アイマスクを付けて深く腰掛ける。しかし、隣からプシュと缶が開く音がして気になってしまう。


「んぐ、んぐ、かーっ美味い‼︎」


「……」


 隣を見ると、サリーが缶ビールを開けて美味しそうに飲んでいた。

 私の視線に気付いたサリーは、クーラーボックスから一本取り出してフリフリと振る。


「はい、お裾分け」


「いただきます」


 缶ビールを車内で飲む。

 なんという至高の行いなのだろう。

 ほどよい車内の揺れが、酔いをいい感じに回してくれる。


「おつまみあるけど」


「いただきます」


 もう、プール行かなくて、このままバスに乗っていても良いだろうか?

 このままドライブだけして帰ってはくれないだろうか?


 そんな至福の時間を過ごしていると、メルツがやって来た。


「美味しそうですね! ウチにも下さいっス!」


「いいよ、はい」


 サリーの手から缶ビールが渡される。

 なんだか嫌な予感がして、私は至福の時間の終わりを悟る。


「いただきますっス! ゴクッ……ふはーーっスーー⁉︎⁉︎」


 一口で酔っ払ったメルツは、纏っていた水を弾けさせて、更に大量の水を生み出して洪水を引き起こした。


 悲鳴が上がる車内を結界で包み、水から全てを守ったのは、自分自身ファインプレーだと思っている。

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