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「璃里?」

「…っは!!ごめんボーッとしてた!!」


最近璃里の様子がおかしい、どこか上の空だ。


「璃里、この映画行く?」

「あ、それね…ごめん。実は誘われてこの前行っちゃったの」

「え?誰と?」


私の知らない話に心臓がバクバクと早鐘を打つ。


「2組の木崎さんと悠木くん」


ガツン、と殴られたような衝撃が走る。


そ ん な 人 達 全 然 知 ら な い


「美雨はその日習い事だったから誘えなくて…」

「…そう」


申し訳なさそうに眉を下げる璃里は続けて信じられない言葉を口にした。


「その帰りにね…その…悠木くんに告白されて…」

「は!?」


はしたなく間抜けな声が出たと思う。

2組の悠木?どこで接点が?


「…それがずっとボーッとしてた理由?」

「うん…悩んでて」


悩む?悩む必要なんてある?

今まで関わりなんて無かったのに。


「彼ね、推しの宮くん、あのすぐ死んじゃった新キャラの彼に似てて…

なんかね!作者さんが親戚らしくて新キャラのモデルにして良いかって言われたらしいの!」

「へぇ」

「映画の後聞いたんだけど、本当はすぐ死ぬキャラじゃなかったらしいんだ。担当や出版社と話しあった結果、展開的にインパクト必要だろうって事で退場ってなったらしいの」

「なるほど?」


興奮しているのか熱量がすごい。


「退場させちゃった事すごく謝られたって言ってた」

「そう」

「でね、話聞いてるうちに、この人がモデルなんだ~って思ってたらこう…気になって」

「…」

「で、帰り際に…その…」

「告白されたのね」

「…うん。前から気になってたって」


段々と、恋する乙女みたいな表情になっていく璃里


私の可愛い璃里


私だけの璃里





今までずっと璃里の「好き」は私になるように推しを消してきたのに。

お父様にお願いして番組関係者や出版社、あらゆる業界関係を使って排除してきたのに。

ぽっと出の輩に私の璃里を取られてたまるものですか…

あと、本当に「尊死」とかされても困るもの。


私の中をどす黒い感情が渦巻く中、璃里が口を開いた。



「お付き合い、してみようかな」


「どちらかと言うと好き寄りだし、付き合うって事にちょっと興味もあるし」と照れ笑いをする璃里に、私は微笑んだ。







──────────



「なんで…ひっ…やっぱり私がすっ…好きになると…っんじゃうの?」


嗚咽混じりに泣きながら膝にしがみついている璃里

落ち着かせようと頭を撫でるが大粒の涙がボロボロとこぼれていく


「偶然だって」

「だって…っ!だってね…漫画と同じ様…っに、廃虚で…壁に押し潰されてっ…」


璃里が返事をした次の日の夜

彼は友人と廃虚探索に行った"らしい"

そこで漫画と同じ様な亡くなり方を"したそうだ"


「璃里?じゃあ璃里はご家族が好きじゃない?」

「…好き」

「私の事は?」

「…好き」

「でしょ?璃里が好きだからって死ぬなら皆死んじゃってるわ。だから全部偶然なの」

「ん…っ…」


涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を拭いてあげる。


「それに前にも言ったでしょ?

私は璃里を1人にしないって」


璃里の頬に手を添え額に軽く口付けを落とし、満面の笑みを向ける。



「私はずっと、ずっと側にいるからね」


「…ありがとう」


泣き腫らした赤い顔が更に赤くなった気がし、反応が嬉しくて抱き締めた。

するとまた璃里の涙が溢れ出したようで、また肩を震わせている。

しがみつくように腰に手を回してきたのに気付く。


…今度からは膝じゃなくて胸を貸してあげよう。

膝の上の頭を撫でるのも好きだけど、こうやって抱き合う大義名分が出来るもの。






あの日デパートの屋上で私を助けてくれた璃里

低俗な男達から助けてくれた私の天使

あの瞬間から私は「貴女だけ」なの


だから



貴女も早く「私だけ」になって?







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