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「ああ~この新キャラカッコいい~」
「ビジュいいよね」
「推せる~
この漫画推しいなかったけど今日から推しだわ!
もうビジュも性格も好み!関係性も尊い!尊すぎて死ぬ!!」
なんて会話をしたのが漫画初登場時、先月の話
てっきりレギュラーキャラだと思ったのに…
せめて準レギュラーっぽい雰囲気だったじゃん
翌月、登場2回目で死ぬとか思うわけないじゃん!!
──────────
「推しが…死んだ…また…死んだ…」
「これで何回目だっけ?」
「5回目」
部屋でうずくまってすすり泣く
一緒に漫画を読んでいた友人は困った様に笑みを浮かべ、膝を貸してくれた。
私は回数を指で数えて答える。
そう、昔から私の推しキャラはすぐ死ぬ
始まりは朝の戦隊もの
5歳の時、クールなブルーが大好きだった
だけど最終回で敵と相討ちし殉職
初恋が爆発と共に散り、泣きわめき父と母は私を宥めるのに大変だったそうだ。
2人目は魔法少女アニメのお助けポジの彼
彼は最終回目前で交通事故
戦闘に巻き込まれるとかじゃなくて普通に事故って…
スタッフの八つ当たりじゃないの!?
最終回でヒロインの子供として転生、みたいな感じだったけど、違うんだよ!!それじゃ私の推してた彼とは別物になっちゃってるんだよ!!!!!
3人目はバトル漫画の主人公の兄ポジ
本当は血の繋がりはないのだけど、主人公を庇って重傷を負い、完治したと思ったがその時呪いもかけられていてそれで途中リタイア…
4人目は珍しく少女漫画の女の子キャラだった
凄絶な過去を持っているが明るさを失わず、健気に頑張っている姿に応援したくなった。
なのに…なんであんな惨たらしい…作者人の心無いんか!!って一晩中泣き明かした。
で、5人目が月刊誌連載漫画の彼
非日常的な事件を解決していく今人気急上昇中のホラーミステリー漫画の新キャラ
主人公の仲間に加わって最初の探索で…死…
「もう私推し作れないよぉぉぉ」
「ん…」
友人がかける言葉が見つからず苦笑いしている。
まぁ、今何を言われても「貴方の推しは死んでないじゃん!!」と八つ当たりしてしまいそうだから、何も言わず側にいてくれるだけでいい。
「はぁ…怖くてアイドルとか、現実の人は推しに出来ないなぁ」
「何言ってるの」
ぼやくと「さすがにそれは…」という感じだったが、私はそれ位トラウマになっているのだ。
「美雨を推しにしたら美雨死んじゃわない?」
「私は死なないよ、璃里を1人にする訳ないわ」
膝に乗せている私の頭をそっと抱き締めてそう答える友人、美雨はまるで女神のようだった。
ふんわりと良い匂いがした。
「ありがとう」
気恥ずかしさに顔をうつ伏せ、膝にそっとしがみつくと、上から「ふふっ」と笑い声が聞こえた。
美雨とは幼稚園からの付き合い。
違う幼稚園だったけど、ある日デパートの屋上でいじめっこから助けたのが知り合ったきっかけ。
めちゃくちゃ可愛かったから多分あの男の子達は美雨に一目惚れしていじめてたんだと思う。
逆に嫌われるってなんで分からないんだろうね?
で、その後同じ幼稚園に転園してきて驚いた。
美人でお金持ちのお嬢様なのに、一般庶民の私ともこうして過ごしてくれるとても良い子だ。
「美雨は私の嫁だよぉ」
「ふふっ、何言ってんの」