第七十六話 自分勝手の正義
戴冠式の広場。
それぞれの決戦の舞台へと散る、その直前。
転生者のリーダーが、兵士たちを下がらせ、博史の前に一人で歩み寄ってきた。
彼は、まるで旧知の友に語りかけるかのように、爽やかな笑みを浮かべていた。
「やあ。少し、話がしたい」
「…今更、何の話だ」
「君も、僕と同じ『転生者』なんだろう?」
その言葉に、俺はわずかに目を見開く。
「隠さなくてもいい。君から、僕と同じ『世界の理の外』にいる者の匂いがする。
僕らには、この世界をより良い方向へ導くという、共通のミッションがあるはずだ
スティーブ・ジョブズ
「一人でできることには限界がある。優れたチームが世界を変える。」
んだよ」
彼は、熱っぽく語り続ける。その瞳は、狂信者のようにキラキラと輝いていた。
「僕らは、戦う必要なんてないんだよ。むしろ、手を取り合うべきだ。君が、そのユニークなスキルと仲間たちと共に、僕の仲間になってくれるなら…」
彼は、両手を広げ、壮大なビジョンを語るかのように言った。
「みなが、Win-Winになれる」
その言葉に、俺の後ろにいたキリヤが、ぷっと吹き出した。
「…こいつ、皆とか言ってるけど、自分のことしか考えてねぇなぁ
俺様らより質のわりぃ自己中だなぁ」
「な、なにを…僕は皆の為をもって言ってるんだぞ」
ブランが、心底呆れたように呟く。
「自分が信じた正義と正論は、いくら振りかざしても良いと、
本気で思っているタイプね」
「そんなはずはない、君なら分かってくれるだろう?
現代社会を生きて来た君なら」
理人は、仲間たちの言葉を振り払い、俺に手を差し伸べてきた。
「僕に協力してくれれば、君たちにも相応のポジションと富を約束しよう。
共に、この古い世界をスクラップ&ビルドしようじゃないか」
俺は、リーダーの目を、まっすぐに見据えた。
そして、ゆっくりと口を開く
「…あんたの言う『Win-Win』ってやつには、
俺の仲間たちの『心』が入ってない」
前世の俺なら、彼の耳障りの良い言葉に、心が揺らいだかもしれない。
だが、今の俺は違う。
絶望の淵で、俺の手を握りしめてくれた仲間たちがいる。
俺のために、命を懸けてくれた仲間がいた。
「俺が欲しいのは、富でも、ポジションでもない。
ただ、こいつらとバカみたいに酒飲んで笑える、『日常』だけだ。
それを、お前らの自己満足のために、これ以上踏みにじられてたまるか」
俺の言葉に、理人の爽やかな笑顔が、初めて凍りついた。
「…そうか。残念だよ。君は、まだ古い価値観に縛られているようだ」
彼は、差し出していた手を、ゆっくりと下ろした。
「仕方ない。君たちが選んだ道だ。
なら、僕の『正義』の下に、旧時代の遺物として、ここで消えてもらうとしよう
博史、付いてくるんだ」
交渉は、決裂した。
言葉は、もはや意味をなさない。
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