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「酒乱」スキルで異世界生活!? 記憶をなくしたら勇者になってました  作者: あいだのも
第七章 陽の出る国ヤマト
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第六十六話 何事も丸く収まります

その夜、ヤマトの国の隠れ里では、盛大な宴が開かれた。

ブランの復活と、我々の帰還を祝うための宴だ。

「うおおお! 飲め飲めぇ! 今日の酒は格別だぜ!」

キリヤが、誰よりも大きな声で叫びながら、巨大な徳利を煽っている。


「だろ? 人生、酒と女がありゃあ、大抵のことはどうにかなるんだよ!」


少し離れた場所では、ブランが仲間たちに囲まれていた。

「もう、心配したんだからね!」

「怪我はないの?」

ルサーリカやミーナが、涙ながらにブランの手を握る。

「…悪かったわね、心配かけて」


ブランは、照れくさそうに頭を掻いた。その姿は、俺たちが知る、いつものポンコツで、少し素直じゃない、大切な仲間だった。


「ブランちゃん…おかえり」

マリーが、少し気まずそうに言う


「マリリン、ただいま」

ブランはそんな気も知らずにマリーに微笑む


俺は、そんな仲間たちの輪から少し離れ、一人で夜空を見上げていた。

ブランが生き返ってくれた。

これ以上、望むことはない。


「…一人で、何を考えているのですか」

静かな声に振り返ると、そこに巫女が立っていた。


「…あんたのおかげだ。ありがとう

でも、大丈夫なのか?

俺らのせいで冥界の神に逆らった形になってしまっただろう?」


「礼には及びません。優秀な後釜を連れてきてくれたので」

巫女が目くばせすると

そこにはサクラが居た


「わ、わっち…?

いや、盗み聞きしようとしたんじゃなくて…」


「サクラ」

巫女が、優しい声で彼女を呼び寄せる。

「もう、隠れる必要はありません。あなたも、これからはこの国の民なのですから」


サクラは、戸惑いながらも、俺たちの前に歩み出た。


「…どういうことだ?」

「彼女には、私の後継者として、この国の新たな『巫女』になってもらうのです」

巫女は、サクラの肩にそっと手を置いた。

「彼女の『占星術』の力は、古来より我らが受け継いできたものとは、少しだけ系統が違います。ですが、その力は、間違いなく本物。この国を、そして民を導くに足る力です」


「…でも、わっちは…」

サクラは、俯いたまま、か細い声で言った。

「わっちの占いは、ブラン様を救えんかった…。仲間一人救えんような者に、国を導く資格なんて…」


「いいや」

その言葉を遮ったのは、俺だった。

「あんたがいたから、俺たちはここまで来れた。

あんたの占いが、俺たちに希望をくれたんだ。」

俺の言葉に、サ-クラはハッとしたように顔を上げた。


その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。


「…そうですよ、サクラ」

巫女が、慈しむように微笑む。

「あなたは、もう一人ではありません。遠く離れていても、あなたを想う仲間たちがいる。その繋がりこそが、星を読む上で、何よりも強い力となるのです」


サクラは、涙をこらえるように、何度も、何度も頷いた。

アメリコの牢獄で心を殺して生きてきた彼女が、ようやく、自分の居場所と、新たな生きる意味を見つけた瞬間だった。


俺は、その光景を、少しだけ照れくさいような、

そして誇らしいような気持ちで見守っていた。

俺たちの旅は、誰かを傷つけ、何かを失うことばかりじゃなかった。

こうして、誰かの未来を、ささやかでも、照らすこともできるのだと。



宴が終わり、皆が寝静まった頃。

俺は、ブランの元を訪れた。

彼女は、まだ眠れずに、月明かりの下で静かに座っていた。

「…眠れないのか?」

「…まあね。一度死んだんだから、そう簡単には」

ブランは、自嘲気味に笑った。


「…博史

前に博史が言った事、

死んだつもりになって生き直すって

よく分かる…

今回は本当に死んじゃったから…

博史も大変な思いをしてきたんだよね」


「いや、俺は…」


「分かっているよ、分かっている…」

彼女は、俺の目をまっすぐに見つめた。

「…また博史に助けられちゃったな」


「…当たり前だろ。仲間なんだから」

しばらく、沈黙が流れる。


先に口を開いたのは、ブランだった。


「…あたし、決めたわ」

その瞳には、強い決意の光が宿っていた。


「あたし、もっと強くなる。

もう二度と、あんたに、あんな顔させないために。

あんたの背中を、守れるくらいに、強くなる」

その言葉に、俺は、ただ黙って頷いた。





そこから連日飲み会が続いた

そこで色々と発覚した事があった。


巫女のダーリンはアルブジルのヨォーヨらしい

お互いに一度も会った事がないが、恋は時空を越えるのだと


将軍からはしつこく風呂に誘われた

将軍が神を恨む理由は女の体に男の魂を入れられたからだと

今では誰も一緒に風呂に入ろうとしなくなり

俺らが現れて嬉しかったんだと


結局俺は昔一緒に入っていた男が興奮してしまい

半殺しにしたら誰も入らなくなったと巫女から聞いて

チキって誘いを遠回しに断ってしまったんだが


そしてイリアス

「やあ、待っていたよー」

そこに居たのはいつもどおりべろべろになったイリアス

べろべろのはずが流暢にしゃべっている


「誰だ、イリアスに酒を飲ませたのは!

まだ小竜だぞ!」

フローレンが大きな声


「勝手に飲んだんだよ

俺様のせいじゃねぇ!」


「やっぱり、冥界の黄泉路に居たのは君だったのかイリアス」


「そだよー

おらは魔王軍四天王第二位イリアスだよー」

魔王軍という言葉に皆に衝撃が走り構える


「…魔王軍幹部の二位がイリアスだとしたら一位は誰なんだ

お前は初代魔王の兄弟なんだろう?」

博史は想像していたために驚かずに続けた


「あれ?君たちの方が知ってると思ってたんだけど

一位は人間、テッシンだよ」

初めの町から出てきたときに襲ってきたテッシンが魔王軍幹部1位だと…


「君のそのタガ―もテッシンのだろう?

だからむしろ色々知っていると思ってた」


「俺らは街を出てすぐに奴に襲われた」


「うーん…やっぱり不思議だねー

彼が何を考えているのか全く分からないよー」


「お前らは何を考えているんだ?」



「おら?

おらは楽しければそれでいいんだー

だからこのパーティはすっごく楽しかったよー」


「イリアスは記憶を戻してもイリアスなんだな」


「そりゃそうさ、おらはおらなんだから

黄泉路に空間を形成したことで転生を繰り返しながら半永久的に生きてたんだー

それも今回ので冥界の神に見つかり壊されてしまったから死ぬ

おいらの事はこのくらいかなー」


「テッシンは?」


「彼は突然現れ魔王軍に入りたいと

その場で反対する魔族達を全員倒したんだー

そして、誰よりも忠実な部下になって

当時1位だったおいらに宣戦布告をしてきた

だから席を譲った」


「席を譲った?

あっさりし過ぎてないか」


「そう?

肩書に興味ないけど

おいらは初代魔王の弟だから優遇されていたのかね

おらからも聞きたいことがあったんだけど

たった今急用が出来てしまったよー

じゃあね、皆との時間はとても楽しかったよー」

そう言うとイリアスは空を飛びたつ。


「待てよ、イリアス!」

俺は、思わず叫んでいた。


空中で振り返ったイリアスは、少しだけ寂しそうに笑った。

「おらは、もう何千年も戦ってきた。もう、疲れたんだよ。

…それに、お前たちがいる。このパーティなら、おらが居なくても、きっと大丈夫だ」

彼は、最後一言だけ呟いた。

「マリーに会いたくないってわけじゃないからな」


そして、今度こそ、彼は光の中に消えていった。

残されたのは、彼の言葉に何も言い返せない、俺たちだけだった。




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筆者が泣いて喜びます。


その他の作品も読んで頂けると嬉しいです。

【最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい】

【囚われ姫は魔王に恋をする】

https://ncode.syosetu.com/n1925ii/


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