第五十四話 色の決め事はパーティの最重要決定事項
闘技場の国バニッシュを後にしてから、一月が過ぎた。
メイェンタオは聖剣レイヴァンと共に国に残り、俺たちのパーティには再び平穏な(?)日々が戻っていた。
旅の道中、俺はふと、この奇妙な共同生活について考える。
総勢十数名。普通なら、とっくに内輪揉めで崩壊していてもおかしくない規模だ。
どこの世界でも、人間が集まれば揉め事が起きる。
その原因は、大抵二つ…『色恋』と『金』だ。
普通のパーティなら、『性欲の処理』が問題になる。
冒険者なんて血気盛んな連中の集まりだ。
男女が寝食を共にすれば、問題が起きないはずがない。
大抵は、腕力で勝る男が女に手を出して、パーティは空中分解。
それがよくある結末だ。
だが、うちのパーティが他とは決定的に違うのは、単純に女の方が強いということだ。
キリヤが下心を出そうものなら、マリーの神の拳か、ブランの鉄拳制裁が飛ぶ。
フローレンや水月に至っては、その気になればキリヤをミンチにできるだろう。
結果、異性関係のトラブルは、いつもキリヤが一方的にボコられて終わる。
実に健全だ。
そして、もう一つの揉め事の種、『金』の問題。
これに関しては、ただ一人、頭が上がらない存在がいる。
「キリヤ! また無駄遣いを! 今月の酒代はこれで打ち切りです!」
帳簿を片手に仁王立ちする、**『節度のルサーリカ』**だ。
彼女がいる限り、報酬の取り分で揉めることなどあり得ない。
彼女の公平さと、時折見せる鬼のような剣幕の前では、誰もが平等なのだ。
とはいえ、俺も皆も性欲がなくなるわけじゃない。
マリーは、街に着く度に娼婦を買って発散しているようだ。
俺はチキンだから、そんな場所には行けない。
キリヤは? あいつは、どこの街でもすぐに出禁になる。
そもそもマリー以外にそんな金などない。
だから、男たちのテントでは、皆が飲み騒ぎ、寝静まった頃になると
待ってましたとばかりに毛布がもぞもぞと動き出す音が聞こえてくる。
これは人間の性だ
…まあ、男はまだ分かる。
だが、ブランやミーナたち、女性陣はどうしているんだろうか。
ブランやリザリーはお子ちゃまだ。そんなやり方など知らないだろう。
水月のを見てしまったときの反応を見るにブランは白だ。
フローレンの相棒は槍だし、あの感じだと抱いて寝ることがそうゆうことなんだろう。
あの水月はどうだろうか。
バニッシュの時、布団でもぞもぞしていたのを見た時の
背徳感が忘れられない。
あれは、見せてたのだろうか…
彼女なら俺らが監視していたのを知らないはずも無い
誘惑しているのか…それとも、罠なのか…
あの強く美しい彼女がベッドの上で乱れてしまうのだろうか…
あの気高い姿から全く想像がつかない甘い声を発するのだろうか…
どっちにしろ俺はチキンだ。
いや、考えるのはやめておこう。俺の乏しい想像力では、ロクなことにならない。
そんな、どうしようもなく俗っぽくて、それでいて奇妙なバランスで成り立っているのが、俺たちの日常だった。
今夜もそんな事を妄想し、果ててトイレに向かうと
ばったりミーナに会ってしまった
「ひ、博史…こんな時間まで起きていたの?」
ミーナは少し焦った様子で話しかけてきた。
「トイレ行きたくなったから、
ミーナこそ、こんな時間に外出るなんて」
ミーナはあっとした顔をした
そのあっには
聞いてしまった事で逆に聞かれてしまった事
そして、男がこの時間まで起きていたのは処理をしていると察している事が含まれていた
「お、お手洗いよ…」
ミーナは少し顔を赤らめもじもじと答えた
「え、トイレ…?
女性用ってマリーが結界を作ってるんじゃなかったっけ…?」
それを言うとミーナは今度はより顔を赤らめ、アッという表情をした
男性用のトイレに用事があった?
いや、ミーナもキリヤと同じ変態的な思想があったのだろうか
俺みたいに隠していたのだろうか…
いや、ミーナに至ってはそれは考えにくい
ミーナは良い意味で普通の一般女子だ
一番女性的である彼女が、そのような変態思想を隠しているとは思えない。
「ひ、博史…今日ここで会った事は内緒にしてくれない…?」
ミーナはもじもじと下を向きながら言った
な、なんだこのシチュエーション…
まるで、恋愛ドラマのような、
いや、いやらしい動画のようなセリフ、仕草…
俺の胸が高鳴ってしまう…
……恋愛ドラマ…?
誰か男と逢瀬していたのか?
けしからん!!
男、皆が夜それぞれ隠れて格闘している中
ミーナは、なんて羨ましい事をしていたんだ!
……?
俺の頭に再び矛盾点が浮かび上がる
そういえば、男皆、格闘していたよな…
そもそも、ミーナが好きそうな男がこのパーティにいると思えないし…
「じ、じゃあね…」
そんなことが頭の中を巡っていると
ミーナはそそくさと自分たちのテントの中へ帰っていってしまった。
俺も訳が分からず、結局そのことを忘れていると
後日、マリーが
「博史ちゃん、見直したわー
あんな場面に遭遇したのに、深く突っ込まず、ちゃんと内緒にしているんだものー」
「あんな場面…?」
俺がそう言うとマリーは一瞬考えた顔をして
「ミーナちゃんから相談あった時は博史ちゃんが誤解とかしちゃうかもって思ったんだけどねー」
誤解…何の事だろうか…?
「博史ちゃんはリーダーだから女性陣の問題も頭の片隅に入れておいた方が良いかもね
実は、水月ちゃんがね…
毎夜自慰部屋を占領してしまうのよ…」
……は?
「初めは女性用の自慰部屋なんて一週間に一度か使えばいい方だったし
水月ちゃんも遠慮して外でして来るって言っていたんだけど
そもそもそんなに使わない念の為の部屋だったし
水月ちゃんも強いとはいえ女の子だから野外で自慰行為させる訳にもいかないから
私らがするならそこでしなさいって言っていたんだけど
彼女は毎夜、しかも長時間してしまうのよ」
………は?
「普通の女の子は決まった時間や日にちに性欲が溜まるんでは無くて
なんとなくムラムラしてくる感じだから
使いたいと思ったときに使えなくなってしまって
仕方なくミーナが外でする日が出てきてしまったのよ…」
………は?は?
「ミーナも普通の女の子だから、今から新しく作るってなると
場所も拡大しなくてはいけないし、ミーナの自慰部屋になるってことだから
そうゆう風にすることも出来ずっていうのが、女性陣の中で問題になりつつあるのよ…」
……………は?は?は?は?い?
「今は解決案があるわけじゃないから、どうしようもないけど
博史ちゃんはリーダーだからそうゆう問題があるという事だけ覚えておいてね
…あ、あと、この事を自分のおかずにしない事ね」
マリーには何もかもお見通しだった
今夜は大人しく脳に焼き付けておいた
マリチアのお姉さんの床が鏡になった時の
パンツとお肉の境目の解像度を上げ毛が一本も出てないのを確信して果てた。
「良かった」と思ってくださったら
是非ブックマーク、★★★★★をお願いします。
筆者が泣いて喜びます。
その他の作品も読んで頂けると嬉しいです。
【最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい】
【囚われ姫は魔王に恋をする】
https://ncode.syosetu.com/n1925ii/




