第五話 教皇は悪者と相場で決まっている
さて、さて
知り合いと仲間が増えたところで
金欠なのは変わりがない
はたまた今日の宿代もない
とはいってもこっちに来てから
宿に泊まってすらないんだがね
というわけでいつものところへ
「やあお姉さん
今日は簡単な任務ないのかい?」
今日は何故かお腹に目が行く
これだけ美しいお姉さんだ
当然臍より少し上の辺りに
くびれはある
だが、それだけではない
線は細めだが
若干のお腹に膨らみがあるのが
シャツの上からでも分かる
脂肪があるのだ
胸の柔らかさと同じ柔らかさはどこだと
日頃から討論されているが
確実にお腹ではない
胸は包み込むように掌で触りたいが
お腹は指先でペロンと弾きたい
「えーと
三人…しかもマザーさんもですか?」
「マリリン
このパーティーにお邪魔することになったのぉ」
「あなたたちはもうEランクではなくて
Cランクの依頼をやっていただきたいのですが」
「何をおっしゃいますか!
お姉さん
身の程はわきまえております!
背伸びをして命を落としたとか
洒落になりません!」
「ええと、そんなことはないと思うのですが…
…分かりました。
マザーさんもいらっしゃることですし
教会へお使い任務があるのですが」
「教会!?
マリリンは行かないから!」
マリーは子供のように叫ぶと、
バンッ!と扉を開けてギルドから出て行ってしまった。
なんだなんだ!?
マザーって教会に行くものじゃないのか?
「すみません
お姉さん
マリーが帰ってしまったので
二人でも大丈夫ですか?」
「ええ、そもそも
そんな人数を必要としない任務なので」
「あいつ飲みにだけ帰ってきたら
自費で出させようぜ」
「まあ、そんなこと言わず
みんなでのもうよ」
キリヤをなだめ
俺たちはギルドを出て教会に向かった。
教会は祭典を行っているようで人で賑わい
とても盛り上がっていた。
「なんか祭りでもやっているのか?」
「なんだ博史知らないのか?
『今日は神が舞い降りた日』
教皇の演説がある日
だから人が出払って
こうゆうお使い任務があるんだ」
「止まれ
貴様ら信者ではないのに
教会に何の用だ?」
教会の入り口で衛兵に呼び止められた
「ギルドからの依頼で
祭司当ての手紙を届けに来たのだが」
「…確かに預かった」
手紙を衛兵に渡す
任務完了だ
「よろしく頼んだよ
それじゃ祭りもやっていることだし
たまには昼から屋台で酒でも飲むか!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
気がついたら
教会前の広場で寝ていた
どうやら今回は変なことをしなかったみたいだ。
良かった…
俺の酒乱というスキル
気付いて無かった訳じゃない
文字通り酒を飲むと乱れる
普段ならやらないことをやってしまう。
でも気付かないふりをしていた。
そう、酒が好きだから
もちろん前世では依存する程好きだった訳じゃない
働いている時も飲むと起きれないから
休日前しか飲まなかった
酒の失敗はあるが数えるほど
でも、異世界と来たらギルドと酒場!
それに、荒れくれものの酒場
仲間もある程度の粗相は許してくれる。
異世界でも酒を飲んで
普通に生きていけたら
こんなに最高な事はないだろうか。
だからこそ
毎回記憶を失ったとしても
命の危険さえなければ
仕事して飲んで暮らしていきたい。
酔って魔物に挑んで死んだなんて
洒落にならんからな
今回みたいに楽しく飲んでいけるのを
知れれば安心だ。
そんなことを考えていると、キリヤが現れた
分かってる
今回はそんな激しいことがなく
ただ楽しく飲んで過ごしてたろう
「おお!
起きたか博史!
今回もすごかったぞ!!」
…やっぱり、何かやらかしていたらしい
「…普通に楽しく飲んでただけじゃないのか?
だってほら、酔って道端に寝てたってだけで
祭りの形跡もあるし」
「なんだ、お前やっぱり覚えてないのか?
この祭り跡はある意味お前を称えた祭りだったんだぞ!」
?状況が読み込めない…
「俺らは二日飲み続けたのか?」
「いや、一日だ」
キリヤは呆れたように笑って、語り始めた。
――――――――――――――――――――――――
【昨夜の回想】
俺らは祭りの屋台で楽しく飲んでいたんだ
すると盗賊頭領のブランが通りかかった。
銀色のボーイッシュな髪は目立つが
服装は以前の忍者のような動きやすい服装ではなく
「えいひれ」と書かれたシャツと
スエットのようなズボンを穿いている
なんとも言えない格好だ。
「おー!どこのどいつかと思えば
ダーリンにキリヤじゃねぇかい!
こんな真っ昼間から景気が良いな」
「ブラン!
盗賊がこんな街中ウロウロしてていいのか」
「変装してんだろ?」
前の明らかに盗賊の服とは違い
この国一般的な服装…
…ではない
…ださい
「相変わらず可愛いねぇー
ブランちゃーんあそこの物陰で…」
ブランは完全にキリヤを空気扱いし無反応だ
「それで何してるんだ?
暇なら飲んでくか?」
「ダーリンに誘われたら
断れないじゃないかい」
俺の隣にどかっと座った。
「盗賊稼業もしたっぱはともかく
あたいらは表向きは一般市民
それに、今日はお祭りでしょ?
こうやってアンテナ張り巡らしておくと
前回みたいなラッキーが起こるんだい
ま、折角会えたんだから
今日は飲もう
あたいも冒険者登録しようかな
登録しても目立たなきゃ
大丈夫だろうしねい」
「ブランの可愛さは目立つだろう」
キリヤが割と真面目めにそう言うと
ブランはようやくキリヤに反応した
「残念ね
あたいを褒めて落とそうにも
あたいより雑魚は見下し
男は自分より強い男しか興味ないの」
そう言うと俺の器に酒を注ぎ半分飲み
もう半分を俺に飲ませてきた。
ここまではギリギリ覚えている…
「俺が女の子のブランより弱いだって?
試してみるかぃ!?
お前から誘ってきたんだから
戦ってる最中
ふいにおっぱい触っちまっても
文句をおよー
いっちゃいけねぇよー」
「…いいわ、あたいより強かったら
おっぱい触るだけでなく
抱かせてあげるわ」
「うひょー言ったなぁー!!」
と街中で喧嘩を始めた。
おいおい、俺よりこいつらの方が酒乱じゃないのか…
こいつらのスキルに酒乱は無いのか…?
「止めなさい」
そこには鎧の装備の衛兵と
先頭にはダークチョコレートのような茶色の髪
から犬のような耳が飛び出している
槍を持った獣族の女性が立っていた。
獣族!
異世界と言えば獣族だ!
「我が名はクリスティーナ第二王女専属衛兵フローレン
この場は教皇と我が主人
第二王女様のハレの場であるぞ
その場を汚すのなら刺す♥️ぞ」
「王女って事はクリスの兵かぁ
獣族の女の子なんて
男に従順でよぉー
ってひっ…」
キリヤの目の前に、
槍の穂先が突き刺さる。
「王女様を呼び捨て愛称呼びとは
貴様の事を刺し♥️たくて
ウズウズするぞ
ああ、このような場で無かったら
いっぱい刺せ♥️たのに」
怒りと興奮が混ざったような顔に
あのキリヤですら青ざめていた
広場の中央から祭司が現われ
「皆のもの静粛に
教皇様のお言葉であるぞ」
広場が静まり返った
「ふん、教皇のハレの場に
第二王女なんか寄越すとは
この国はどうなっているんぽ」
祭司の後ろから太った教皇が
悪態をつきながらのしのしと現れる。
「あのタクソヌキジジイ…
あの太りきった腹に刺せた♥️ら
どんなに気持ち良い事か…」
フローレンは小声で毒づく
クリスを呼び捨てで怒るくせに
自分は教皇をクソタヌキジジイとは
この国にはこんな危ない兵がいるのか
クリスは教皇の挑発的な発言を軽く受け流し
丁寧な祝辞を述べた
酔った時は
キリヤの挑発にも耐えられない子が…
酒の本能を呼び出す力というか
王女としての抑制力というものは凄まじい
祝辞を終えると
広場で花火が上がった
俺らはその花火を肴に酒を飲んでいた
ふと気付くと
周囲が騒がしくなっていた
ぼーっと飲みながら
それらの騒ぎを見ていると
フローレンが再び通りかかり、叫んだ。
「貴様ら我が国の冒険者だろう?
賊が式典を襲っている
力を貸せ」
広場につくと
賊と衛兵の混戦状態だった
「あれ?ブランがいないぞ」
ついさっきまで隣にいたはずが
この混戦の中
どこかではぐれてしまったらしい
戦況は賊が衛兵を押している
だが、フローレンの所だけ一人で押している
「刺す♡気持ちいい 刺す♥気持ちいい 気持ちいいぃぃぃいい」
尻尾を嬉しそうに
ブンブン振り回しながら
ひたすら賊を突き刺している。
フローレンが自分の欲望に任せ
相手と戦ってる間に
賊は教皇とクリスの所まで達そうとしていた
どこから現れたのか
賊とクリスと教皇の間に博史が入り込む
「おお、冒険者かぽ
早く賊を殺すんぽ!」
タヌキ教皇がポヨンポヨンとお腹を揺らしながら言う
博史は族ではなく
教皇の方へ振り返った
「こうゆう世界の教皇は
裏で子供の人身売買をしているのが相場だ
お前たち賊は間違っていない
だが、この場は一般市民も沢山いる
引いてくれないか」
と賊に向けて語りかけた
「き、貴様…何を言っているぽ!
この国の冒険者ならとっととこいつらを殺さんぽ!」
タヌキを顔を真っ赤にして叫ぶ
「…君が居るなら強行突破は出来なさそうだ
一旦引くぞ!」
賊のリーダー格の一人
耳が尖がっている
エルフだろうか…!
彼女ががそう言うと
パァーっと賊は散って行った
よく見ると
その装束は見慣れた
カッコいい月一族のだった
「おい!逃がすな!
貴様も牢にぶち込むぽ」
タヌキが博史の腕に掴む
「お止めなさい
過剰な戦闘は無益です」
クリスは品のある声が広場に響き渡る
衛兵たちは賊を追うのを止めた
「第二王女風情が偉そうに」
教皇は興奮した様子
ゆであがったタヌキのように
顔を真っ赤にしてクリスに言う
「第二とはいえ正統な血筋の私と
悪事でその座まで上っただけの貴方と
この場でどちらが有利でしょうか
博史さんの手を離しなさい
オポポポ教皇!」
「お、王女様もこの者の出鱈目を信じるぽ!?」
「はい、ですが
私の情報網は別の処ですが」
「ぐぬぬぬ、
帰るぽブハーディ祭司」
教皇は怒りを露わにしながら帰っていった
「博史さん、助かった…ですけど
貴方に今ここに居てほしく無かったです
とはいえ、仕方ありません
賊を追い払った英雄に賞賛を」
クリスのその一言で、衛兵から、
いつもの酒場の連中やらが集まってきて、
この大騒ぎになったという訳だ。
―――――――――――――――――――――――――――
【回想終わり】
…俺はキリヤの話をほとんど信じていない
いくら酔っていて記憶がないとはいえ
俺が賊を返り討ちにした英雄なわけがない
毎回キリヤはオーバーに話して
俺を楽しませてくれる
ここで自分の財布の中身を見た
相変わらずすっからかんだ
「キリヤ、金がねぇ
また任務をやりに行かなきゃな」
「はっ、王女から英雄呼ばわりされても
何も変わんねぇな」
「何バカな事言ってるんだ
俺が英雄なわけないだろ」
そう言うと肌に染みる朝焼けの中
また、ギルドに向かうのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【キャラクターデータ:フローレン】
所属: ロマネンド王国 王女専属衛兵
役割: 槍使い
スキル: ?
武器: いとしのヤリー
防具: 衛兵の防具
【ステータス】
レベル: 57
体力: 148
腕力: 134
魔力: 39
防御力: 88
耐性:『欲望×』
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