表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「酒乱」スキルで異世界生活!? 記憶をなくしたら勇者になってました  作者: あいだのも
第五章 情熱の国バニッシュ
42/76

第四十二話 魔物の素材は呪いの素材


「ほ、本当に魔龍を討伐したんですか?」

ギルドに報告しに行くと、受付嬢は信じられないといった様子だった。

わざわざ報告しに来たのは、決してローライズをまた見たかった訳ではない。



「はい、それで防具が壊れてしまって…

良い鍛冶屋さんを教えて欲しいのですが」

受付のお姉さんは少し頬を赤らめ興奮した様子で


「あ、それでしたら街の外れにあります」

勢いでまた後ろにしゃがんでほしかったが

どうにも上手くいかない

今回はブランもマリーも居ないから

気兼ねなくみれると思ったのだが

人生そんなに甘くないか


「ありがとうございます」

博史はギルドを後にした


鍛冶屋と言えばロマネンドを思い出すな

このいわくつきの小刀をくれたおっちゃん元気でやっているかな?

結婚がどうとか言っていたけど


そんなことを考えながら

あっという間に鍛冶屋についた


ギルドで紹介された鍛冶屋は、街の外れ、闘技場の熱狂が嘘のような静かな一角にあった。

カン、カン、とリズミカルな槌の音が響き、むせ返るような鉄と石炭の匂いが漂ってくる。


「いらっしゃい

うちの自慢の商品どうだ?

闘技場に出るなら、ナマクラじゃ話にならんぞ! 」

店の奥から、樽のような体格に、見事な髭をたくわえた 鍛冶屋のオジサンが顔を出した

その腕は丸太のように太く、額には汗が光っている。

親方は、壁に掛けられた剣や鎧を自慢げに示す。どれも、実用一辺倒ながら、確かな技術で作られた逸品であることが俺にも分かった。




「実は相談があって

これを防具に加工して欲しいのですが」

俺は、ルサーリカに持たされていたズシリと重い袋をカウンターに置いた。


「ああ、何だこりゃ?」

袋から中身を取り出すと、親方の顔色が変わった。


「魔龍の鱗です」


「…とんでもねぇ硬度だ。それに、微かに熱を帯びてやがる…。こんなもんで防具を作ったら、さぞ名誉なことだろうが…」

親方は、名残惜しそうに鱗を袋に戻すと、首を横に振った。

「悪いが、お断りだ」

「な、なんでです? 腕に自信がないとか?」

「バカ言うんじゃねぇ!」

親方が一喝する。店全体がビリビリと震えるほどの声量だ。

「俺たちは鉱物を叩いて何十年だ。鉱物のことなら知り尽くしている。だが、こいつは鉱物じゃねぇ。『生き物』の一部だ」

「生き物…?」

「そうだ」と親方は続ける。「魔物の素材ってのは、たとえそいつが死んでも、微弱な魔力…言うなれば**『魂の残り香』**が宿り続ける。下手に人間の手で加工しようもんなら、その残り香が歪んで『呪い』に変わるんだ。装備した途端、発狂する防具だの、持ち主の血を吸う剣だの、そんなロクでもねぇもんが出来上がるのがオチさ」

親方は、自身の腕に残る古い火傷の痕を撫でた。

「俺も若い頃、グリフォンの爪で短剣を作ろうとして、大火傷を負ったことがある。普通の火じゃねぇ、消えねぇ呪いの炎だ。この傷を見るたびに思い出す。俺らは、神の創った鉱石を打つのが仕事。魔性の領域に、足を踏み入れちゃならねぇんだ」

「そ、そうなのか…」

専門家の言葉には、有無を言わせぬ説得力があった。

「しょんぼりすんな、兄ちゃん」

親方は、豪快に笑った。

「それに、そんな防具、この世にあるわけがねぇんだ。もしあるとしたら、そいつぁ人間じゃねぇ。エルフか、あるいは神に愛された伝説の鍛冶師の仕事だろうよ」

俺は、がっくりと肩を落として店を後にしようとした。せっかくのSSランク素材が、ただの置物になってしまうのか…。

「…ああ、そうだ」

店を出ようとした俺を、親方が呼び止めた。

「そういえば、この前、街で奇妙な奴を見かけてな」

「奇妙な奴?」

「ああ。真っ黒なコートを着て、魔物の歯で作ったみてぇな、禍々しい小刀をぶら下げてる奴がいたんだ。あいつなら、もしかしたら何か知ってるかもしれねぇな。まあ、関わらん方が身のためだと思うがな」

黒いコート…魔物の歯の小刀…。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ