第三十五話 囚人が看守を誘惑するのは必然
ケイティを紹介した酒場で飲んでいるブラン、キリヤ、マリー
「おいキリヤ!
博史が居ねぇけどどうした?」
ブランが博史がいないことに気付いた
「なんだブランおしっこじゃねぇのか」
「おしっこなわけねぇだろ10分以上見てねぇんだぞ」
ブランは焦った様子で机をドンドン叩く
「女の子がおしっことか言うなよ、興奮ふごっ」
ブランの拳がキリヤの鼻に直撃する
「ふざけてる場合じゃねぇんだよ」
「いててて、いきなり殴るなよ
その辺で寝てたり、うんこだったり
どっか散歩でもいってんじゃねぇのか」
「博史だぞ!
なんだかんだ寂しがり屋で
1人が嫌いで
必ず誰かといる博史が1人居ねぇんだぞ」
「確かに大事かもねー」
「マリリン!」
「本当に博史が拐われたのなら
私達の目を掻い潜って
あの博史を拐ったのなら実力者かもねー」
「ま、マリリン追跡魔法とかないのかい?」
ブランが青白い顔をしてマリリンに問う
「生憎マリリンは派手な魔法しか興味ないのよー
あ、そうだ、妖精さんはそうゆうの得意じゃないー?」
『おい、あのばばあ、ちんのこと地味って言ってるか?』
「得意だけど、地味って言われて拗ねてるです」
『拗ねてねぇ
ぶち殺すぞ』
「ベックズ、博史さんは恩人なの
ね、お願いです、ばかやろーなのです」
その時酒場の入り口が乱雑にバンッと開いた
「おうおう、てめぇらがシューティングスターか」
白髪交じりの男が衛兵を二人従え
ポケットに手を突っ込みながら近づいてくる
「あいつ国防大臣のヴェルダンデです、クソヤローです」
「てめぇらには国家転覆容疑が掛けられている
大人しくついてくるんだな」
「はぁ?ははは
国家転覆?
俺様たちが何を企てているって?」
キリヤがバカにしたように答える
「分かっちゃいねぇようだな
ロマネンド王国で罪を犯し国外追放
アルブジル共和国で革命蜂起
迷宮国家セイで未踏のダンジョンを踏破する実力
そんなパーティがこの都に長期で滞在する
疑惑が掛けられてもおかしくないだろう?」
「アルブジルはしりませんのー」
マリーがヴェルダンデに顔を近づけ誘惑するように話す
「いや、現在内紛状態だ」
ヴェルダンデは軽くあしらう
「国防大臣ならちょうど良い
あたし等のリーダーが行方不明なんだ
今はそれどころじゃないだろう」
「それこそ関係ない
この国は何かが消えたらそれは精霊の仕業だからな
それがモノだろうが人だろうが
断れば不利になるのは目に見えているぞ」
「ブラン、ここは大人しく従った方が良さそうね」
マリーはヴェルダンデに従う
後ろにいた衛兵がキリヤとケイティを外に引きずり出そうとする
「ち、ちょ、あちきは彼らの仲間じゃ無いんだけど、このやろーです
ねぇお願い、ベックズ博史を探して」
『何でちんらがさっきあったばかりのやつらを助けなきゃならねぇんだ』
「連れていけ」
とある建物の地下
護送兵が鉄の扉が開くと、湿った冷気が肌を刺した。
牢の中は暗く、石壁には苔が生え、床には汚れた藁が散らばっていた。
壁に取り付けられた松明の灯りが、薄暗い影を揺らしている
明らかに国の牢獄というよりも監禁場所のような場所だ
「なるほど、当時の妖精狩りの名残はこういうところにあるのねー」
「無駄口を叩くな、歩け。
ここがお前の新しい住処だ」
看守が鉄格子を開き乱暴に押し込んだ。
「いってぇーなおい」
背後で、カチャリと鍵が回る音。
「ど、どうするんですか?このやろーです」
「あら、あなた達、脱獄する相場は看守を誘惑するって決まっているのよ」
マリーがそういうと皆が不安そうな顔をした
中年の看守に対しマリーは服をわざと乱れさせ
しなやかな指先で自らの長い髪を梳いていた。
「ねえ、あなた……」
囁くような声が、牢獄の冷たい空気を震わせた。
「……何だ?」
見張りの兵士グレゴールは低い声で返す。
「こんな寂しい牢獄で、一晩中見張りなんて、ご苦労さま」
「職務だ。お前には関係ない」
「……そうね。でも、退屈じゃない?」
彼女はゆっくりと鉄格子に身を寄せスカートの丈を捲り上げる。
松明の明かりが、彼女の肌を淡く照らす。
グレゴールは鼻を鳴らす。
「くだらん話をするな。」
「ぎゃははは、なんだマリー自信満々に言っていた割に全然だめじゃねぇかぁあ」
キリヤがそう言うとぶちゅっと神の手に潰された
「これは手ごわいわね
マリリンはもう火照ってしまっているのに
どうしましょ」
マリーは横目でブランを見ると
ブランは冷や汗を垂らす
「あ、あの、あちきの歌でしたら
彼の理性を飛ばすこと出来るんですが、ばかやろーです」
「マリリンの魅力だけで落とせないのは不本意だけど
ここまま誰かを襲うよりはそっちの方がいいわね」
マリーは再びゆっくりと鉄格子に身を寄せスカートの丈を捲り上げる。
「またくだらない事をしに来たのか」
その時だった。
牢の奥から、微かな旋律が流れ始めた。
「……何だ?」
グレゴールは眉をひそめた。
どこからともなく聞こえてくる音楽。
艶やかな弦の調べに乗せて
女の吐息交じりの甘い歌声が流れていた。
「脳に突き刺すズッキュンバッキュン
稲妻走る全身に
響けこのメロディー脳幹に」
「なんだこの訳分らん歌は…?」
——ゾクリと、背筋に何かが走る。
「おい、何のつもりだ?」
「フフッ……ただの暇つぶしよ。」
マリーは軽く笑った。
「ねえ、聞いて……この旋律……心の奥をくすぐられない?」
マリーは胸元をちらりと見せつける
(こんなものに惑わされるな。
俺は囚人にたぶらかされるような人間じゃない——
なのに。)
鼓膜に絡みつく旋律が、脳を蕩かしていく。
甘く、官能的な音が、神経をくすぐる。
そして、彼女の囁きが、さらに耳元を撫でる。
「——こんな牢獄なんて、退屈でしょう?」
音楽が、グレゴールの五感を支配する。
「たまには、刺激が欲しくならない?」
鉄格子に寄りかかるマリーの指先が、ゆっくりと細い鎖を弄ぶ。
まるでそれが、彼の意識を繋ぎ止める鎖であるかのように——。
ガシャリガシャリと鎖が揺れ擦れる度に音を立てる
「……ふざけるな……」
グレゴールは、こみ上げる熱を必死に抑え込む。
だが、体は正直だった。
音楽と女の声が、ゆっくりと彼の理性の壁を削り取っていく。
「……もう、我慢しなくてもいいのよ?
……扉を開けて?」
その瞬間——
カチャリ。
グレゴールの手が、鍵を回してしまった。
扉が開く。
彼女は、するりと檻から出ると、
手の枷を魔法で焼き切り
グレゴールの顎をすくい上げた。
彼はそれを合図にするかのように
マリーの手を乱暴に引き
隣の牢にマリーを投げ入れた
「あああん」
「う、うおおおおおおお」
「あぁぁああんん
いい、いい、もっと燃やしつくして
もっともっとぉおおおお」
一行は出られなかった
牢の扉は開いているのに
肉と肉がパシンパシンとメトロノームの様に決まったリズムを刻み続ける
あのキリヤですら動けずにいた
「ねぇ、行かなくていいのです…?ですです」
そう言いだしたのはケイティだった
外から帰ってきた
『おうケイティ
隣でクソババアとオジサンが交わってるな
気色わりぃ
そうそう、博史とやらのここと同じような牢屋見つけたぜ』
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