第三十一話 ガラスは男の味方
丘の上から見下ろすと、霧に包まれた水の都が幻想的な姿を現した。
無数の石橋や木造の桟橋がまるで水の上に編まれた蜘蛛の巣のように広がっていた。
街の中央には、白い大理石で造られた宮殿がそびえ立っていた。
壁には精巧な彫刻が施され、妖精を象った彫像が噴水の水を吐き出していた。
「着いたな、水と精霊の都マリチア」
市街地へと続く運河には細長い船が行き交い
艶やかな衣を纏った船頭が優雅に櫂を操っていた。
市場では商人たちが色鮮やかな魚や貝殻細工、香り高いハーブを売っている。
運河の両岸に柱の上に建てられた家々が並んでいた。
とても美しい街並みだ
「ブラン、精霊って本当にいるの?」
博史がブランに問いかける
「あたいに聞くなよ
こうゆうのはマリリンだろ」
「精霊じゃなくて妖精ね
マリリンもねあんまり知らないの
妖精を扱う術は禁忌で太古に失われているのよ」
誰かを従えるのは良くないって事か
「誰も知らないのになんで精霊の都なんだ?」
フローレンが首を傾げる
「いつの間にか妖精から精霊になってしまったみたいだけど
ここは妖精が集まると信じられているからよー」
「信じられている…か
見えたりしないのか」
「博史は本当に何も知らないネ
精霊は見えないネ」
どこかの大精霊のようなロリっ子を期待してたけどそれはないのか
残念…
ここでも都の外に野営を張り
俺とルサーリカでギルドへ向かう
俺とキリヤで行くとマリーの鉄槌が落ちる
俺とブランで行くと余計なモノを持ち帰る
結局任務を持って帰った後にルサーリカが皆に振り分ける
初めからこの二人の組み合わせで行っておけば良かったのだ
ブランは少しだけしょんぼりしていた
ギルドへ向かうため、市場の街路を歩いていると、ある話が耳に入った。
「昨日、水路の掃除をしていたら、湖底にまだ光が灯ってる場所があったんだ」
「嘘だろ? あの沈んだ古書館が、まだ生きてるってのか?」
「知識の精霊が守ってるって話もあるしな……でも、誰も近づかねぇ」
「なぁルサーリカ、沈んだ古書館って…」
「任務優先です」
食い気味に言われた
沈んだ古書館なんてゲーム好きにはまらないのに…
「話を聞くだけ…
任務には支障出ない様にするから」
そう言うと渋々頷いた
聞いた話によると
この都には、かつて精霊の図書館があった。
大昔の大洪水で沈んだ
それ以来水中に深くに光が見える時がある
誰かがまだそこにいるみたいに
誰かに再び本を見て欲しいかのように
(帰ったらキリヤに話してみよう……)
この都はギルドも美しい
一面ガラス張りの建物に床までガラス張り
透き通った水の中に泳ぐ魚も見える
「千里の道も一歩から
ようこそ、」
こちらでもギルドのお姉さんが対応してくれる
青色だろうか
水色も捨てがたい
水のように透明だったら失神して倒れてしまうかも…
「あ、シューティングスターの博史です
暫くこの都を拠点に活動していこうと思ってます」
「ロマネンド王国のパーティですね
遠くよりお疲れ様です」
く、水の透明度が高すぎてガラスが鏡のようにならない…
せめてもう少し濁っていたら、いや、嵐の日に来ればもしかしたら…
よ、夜に来たら良いんじゃないか!!
そんな事を考えている間
ルサーリカと受付のお姉さんはテキパキと受注任務を決めていった
博史は出る幕なくボーっと立ち尽くしていると
海溝になっている水中深くから10Mはある大きい鯨?のような生き物がガラスの床に向かって泳いできているのが見えた
「お、おい、これぶつかるんじゃ無いのか?」
博史が心配そうに言うと受付のお姉さんが
「珍しいですね、ギルボエッシュの子どもですね
お二人とも幸運です、滅多に見られる事はないですよ
彼らはとても賢いのでぶつかりはしません
それにこのガラスは最上級の魔鉱石を配合しているので
ぶつかっても壊れません」
お姉さんのいう通り
でかい鯨はガラスすれすれを泳ぎ
旋回して海溝へと戻っていった
博史は大きな鯨より
そこに映されたものに夢中だった
大きな鯨の黒い体がお姉さんの床下を通った瞬間
ガラスが鏡と化した
スタイルの良い足からお山があるお尻に至り
その奥に見えたのは水色だった
美しい
鯨さん…ありがとう…
この御恩はいつか返させて頂きます……
水の都での任務は多岐に渡った
外の魔物討伐だけでなく高齢者の世話から力仕事
調理や接客など臨時のバイトのようなものも多かった。
しかも報酬はロマネンド王国の二倍程
全体的な生活水準も高く治安も良い
ロマネンドも良い国だったが
ただ、やはり物価や土地は高そうだ
冒険者としてその日暮らしをするのには最適かもしれない
そうだ、しばらくこの国に滞在しよう
ギルドのお姉さんも仲良くなりたいし!
夕暮れになると水面が黄金色に染まり
屋根の上には無数の灯籠が吊るされ
街全体が水に浮かぶ光の宮殿のように変わる
夜が更けるにつれ
舟の上で笛や琴の音が響き渡り
湖面に揺れる月の光とともに幻想的な時間が流れた。
この都の美しさと静けさは水の精霊たちが紡ぎ出した夢のようだった。
宮殿を囲む水路には青く輝く蓮の花が静かに浮かび夜にはそれらが神秘的な光を放つ
チラッとギルドを覗きに行って見たが営業時間は夕方までだった
なんてホワイト企業なのだろうか
てか、みんな夜に覗きに来るから夕方までにしたんじゃないのか…
パーティに戻るとチェンマンが屋台の準備をしている
この国での屋台は
前世の食べ物にするらしい
だが料理も全て受け入れられる訳ではない
生卵も生魚もそもそも食べ物を生で食べること自体に抵抗がある為微妙
殺菌(マリーの魔法)の手間があり誰でも出来る訳では無いから俺個人の楽しみだった
受け入れられたのもある
マヨネーズは生卵だが乳化や撹拌といった調理法がこの世界には少なく新鮮でとても美味しいらしい
マリーが『駄竜の集い』食べていたケーキもパンケーキにチョコを塗ったようなモノだったしスイーツ系統はいけそうだと思いチェンマンに作って貰ったらこれまた男より女性陣に受けた
どの世界も女性が強いと思い知った
これはいけるとルサーリカとチェンマンで屋台でスイーツを売るそうだ
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