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第三話 王女誘拐事件には関わっていません


眠くだるい身体を引きずりながら

また重厚なギルドの扉を開ける


「お姉さん

今日も簡単なEランク任務ある?」


「それが、今

緊急任務しか取り扱って無くて」

お姉さんが胸の前で手を組み

少しかしこまった動作をする

そのせいで、豊かな胸がぐっと寄せられ強調される

この距離で胸に視線を送るのはまずい

吸い込まれそうになるのを必死に堪え

周辺視野でなんとかその光景を捉えようと努力する。


「緊急任務?」


「はい、実は…

王女様が誘拐されたらしくて」


「へぇー

……え、俺らの今日の宿代は…?」

頭を抱え

困ったふりをして胸元を盗み見る

凄い…

普段は制服に隠されているが

こうして見ると

ぷっくりと膨らんでいて

喉に湧き上がってくるものを感じる


「王宮直々に

最優先で取り掛かるようにとのお達しで

他の任務も後回しにされてるんです」


長く見ているのも

不自然で悪いと思い

早々に引き上げる


念のため、昨日森から担いできたクリスの様子を見に広場へ向かったが

ベンチに彼女の姿はもうなかった


「まさか本当に王女だった

なんてことないだろうな?」


「そんなバカな」

キリヤが鼻で笑う。


「そんなことより

今日の仕事どうするよ

王女を誘拐するやつなんて

ヤバいやつに決まってる

もっと簡単な仕事が出来る所ないのか」


「無くは無いが…」

キリヤに連れられて行ったのは

裏路地にある薄暗い酒場だった


表の酒場のガヤガヤした雰囲気とは違い

紫煙が立ち込め、空気が重い


飲んでいる奴らも

表の酒場のやつらとガタイは変わらないが

体中にスミが入っていたり

ピアスが開いていたり

何かヤバそうな煙吸ってたり

目が据わっていたりと

明らかにヤバそうな連中ばかりだ。


奥のカウンターの中にいる

一番ヤバそうな男にキリヤが話しかける

「ようダーマス

金がねぇんだが

仕事ねぇか」


「なんだキリヤか

おめぇもうここには来ねぇんじゃねぇのか」


「お前が俺を騙して働かせたんだろ

一文無しで死活問題なんだ」


「そうだったけな?

ちゃんと金は払っていただろう?

まあ、お前なら仕事振ってやっていいが」


「どんな仕事だ?」


「隣町まで

ある荷物の護衛だ」


「おい、キリヤ

隣町までの護衛って

戦闘があるんじゃないのか」

俺が口を挟むと、ダーマスにギロリと睨まれ

蛇に睨まれた蛙のように身体が硬直する。


「なんだこのヘタレは」


「いや、ダーマス

こいつはこう見えて

俺様より腕が経つんだ」


「嘘つけ

まあいい、弱くても構わんだろう

護衛ってだけで

ほぼほぼ戦闘は無いからな」


「依頼主は?」


「月一族だ」


「月一族?」


「盗賊を生業にしてる一族さ

俺様も詳しくは知らないけどな」




その日の夜中

誰も外を歩かない時間帯

ダーマスの言われた場所へ向かうと

街から外へ出る城門近く

目立たない道の端っこに

怪しい集団が居た


大きな荷物三つを台車に積み

顔を隠した忍者のような黒装束

服の胸には、トレードマークらしい不気味な目玉の紋様

明らかに裏で動いている闇の集団だ



「おい、キリヤ

なんか色んな意味で

ヤバそうな雰囲気の奴らだが

本当に大丈夫か?」


「博史は相変わらず

気にしすぎだな

大丈夫、大丈夫」

キリヤは相変わらず

さわやかに明るい


俺たちが集団に合流すると

月一族の一人に彼らと同じ服装を渡された

正直この服を着れるのは

少し胸が高鳴った

中二病心がくすぐられる


「おい、行くぞ」


俺らが着替え終わると

リーダー格が声をかけ

一行は静かに闇の中を歩き出した



護衛…

俺らを雇った意味なんてあんのか

ってくらい何も起きない


城壁の外に出るのは初めてで

危うい事が起こるのかと

緊張していたが

肩透かしを食らうようだった


むしろ地平線まで見通せる

異世界の草原

とても心が落ち着く…


「なぁ博史

暇だ

暇なときは…

じゃぁーん!」

キリヤが懐から、ビンに入った酒を取り出した


「お前どこにしまってたんだ

てか、任務中だぞ!」

月一族も怪訝な目で俺らを見てくる


「いいんだいいんだ

どーせ何も起きねぇんだ

それにほら

こんな綺麗な星空の中

飲まねぇと損だぞ」


空を見上げると

街の明かりが一切届かない

暗闇の中

吸い込まれるようなほどの

満天の星空が広がっていた

確かにこの絶景で飲まないのは

損かもしれない


「そうだな、飲むか」


「お、それでこそ博史

月一族の人達も飲もうぜ」



――――――――――――――――――――――――――



目が覚めたら

目の前には昨日と同じ

白髪の少女クリス

逆の隣には

銀色のボーイッシュな髪の女の子が居た


…どうゆう状況?


「おー博史、起きたか

どうせまた覚えてないんだろ?

昨日の顛末、教えてやるよ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


【昨夜の回想】



暇だったのは月一族も同じだったらしく

酒を回しながら飲んでいたら

あっという間に酔っ払った


「なぁなぁ月さんよぉ

こんな大きな荷物

何が入っているんだぁ?」

キリヤが聞くと


「これか、ここだけの話しだが

可愛い女の子が入ってるんだぜ」


「まじかぁ!

見せてくれやぁ

ちょうど良いツマミによぉ

なるじゃねぇかぁ」


「可愛い女の子って

奴隷にでもするのか?」

俺が尋ねると、


「俺も雇われだから

良く知らねぇがな

あの二番目に大きな馬車の中に

居るらしいぜ

一緒に見に行くか?」


歩きながら馬車に近づき

中を覗いてみる

そこにいた可愛い子はクリスだった

両手両足を縛られ

口も縛られ

身動きのできない状況だった


「おークリス

そんなところで何をしてるんだ?」


博史はクリスの拘束を解きながら聞いた


「おい、何やってる!」

一番大きな馬車についている従者が声を荒げる

意外にも女性の声だった


拘束を解かれたクリスは

怒りに満ちた目で言い放った。

「博史さん

貴方もグルだったのですね

まとめて消し飛びなさい」

クリスが綺麗な長い髪をなびかせ

どでかい魔法を作り出した


「力に屈せ、ディムーブ」

一番大きな馬車の中から呪文が唱えられる


「ぐっ」

クリスは魔法の縄のようなもので縛られると

作り出した魔法は霧散した。


「あたいの僕になりたいのはぁー

どこのどいつだい?

おまえかぁあああい?」

一番大きな馬車から出てきたのは

月一族の衣装を豪華にした服装


おそらくこいつがボス

腰に掛けていた2丁の拳銃を取り出し

バンバン撃ちだした


「おおい

どうすんだぁ

この状況」


キリヤは頭領の拳銃を剣で防いでいるが

徐々に圧される

「おらおらおらおらおらおらぁああーぁあ…あ?」


博史が疾風のように

キリヤの横を過ぎ去ると

頭領を一瞬で制圧してしまった


「げ、下僕になるのは

あたいだったのかい…」

場が静まり返る


「やめてください」

クリスが馬乗りになった博史と

頭領の間に入った


「な、情けなどかけるな

下僕より耐えがたい」


「情けではありません

あなた達

私に恨みがあるわけでは無いのですね」

クリスの問いかけに、頭領は答えた


「…ああ、あたい等は

金が欲しくてやったんだい」


「それでは

私の協力者になってくれないでしょうか」


「…あたいらをハメる気かい?」

頭領は疑い深い目でクリスを見る


「いえ、私には兄がいます

このままいけば

兄が王になるのですが

兄は裏で闇と繋がっています

兄に王を任せる訳にはいかないのですが

私にはまだ力が無いのです」


「そんなのを

あたい等みたいな盗賊に

任せちまっていいのかい?

あんたも同じことをすることになるだろう?」


「いえ、貴方がたの装束

貴方の声…

私の推測が正しければ」

クリスが何か言いかけたところ

間髪入れずに頭領が答えた


「わったわった

それ以上いうない

協力してやんよ

ただし、あたい等の目的

やり方に口出しすんなよい」


「ええ」


「あたいはブラン」

頭領が装束を脱ぐと

銀髪で短髪のボーイッシュな女の子だった


「お、女の子だったとはぁー

しかも、可愛いねぇ

あそこの物陰で

俺の体液をぉー」


「あたいは自分より弱い人に興味がないの

だから」

ブランはキリヤを軽くあしらうと

博史に抱き付き


「ちょっと、何してんの」

クリスも突然のブランの行動に焦り


「博史、あたいの夫になりなさい」

その言葉を皮切りに

お互いの懇親会のような

飲み会が始まり

そのまま皆で寝ちまった

それが、これまでの話だ。



―――――――――――――――――――――


【回想終わり】


…なんとも話が壮大になってきた

「うーん

おう、目が覚めたかい博史

昨日の続きをしよ」

抱きついてきたブランが、寝ぼけ眼で言う


「駄目です」

いつの間にか起きていたクリスが

俺とブランの間に入り込んだ


「良いじゃないかい

あたい自分より強い男しか抱かれたくないの

協力関係になったことだしねい」


「駄目です

それとこれとは話が別です」


頭が痛い

二日酔いのせいだろう

また朝帰りの一文無し

任務に行かなくては



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★




【キャラクターデータ:ブラン】


所属: 月一族(盗賊の頭領)

役割: デバッファー

スキル: 『弱者へ誘う』

魔法: 束縛魔法ディムーブ

武器: 二丁拳銃(当たったことはない)

防具: ダサい文言入りシャツ


【ステータス】


レベル: 45

体力: 120

腕力: 28

魔力: 94

防御力: 58

耐性:『器用×』



「良かった」と思ってくださったら

是非ブックマーク、★★★★★をお願いします。

筆者が泣いて喜びます。


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