第二十話 フローレン
次の目的地はアルブジルの熱帯雨林
私には良い思い出ではない
故郷だが
行きたいなんて思っていなかった。
次の行き先がアルブジルになるのは
予想はしていたけど
特別何かあるとは思ってもいなかった。
アルブジルに着き
ジメジメした暑さ
湿気た息苦しさ
ヌメッとした匂い
五感で昔の事を思い出してしまう
熱帯雨林の奥
貧しい家に生まれ
両親は育児放棄
同じ時期に生まれた兄妹と
僅かな食い物を取り合う毎日
妹はある朝起きたら
冷たくなって死んでいた
その時は特別何も思わなかった
ただ妹は弱かったのだと
成長し
自分で食べ物を取れるようになった時
妹を思い出したが
すぐまた忘れた。
兄達とは知らぬうちに別れ
一人で生活していた
そんな時人攫いに攫われ
この街で戦闘奴隷として売られた
臭い飯
汚い水
排泄物が部屋の一帯にあり
自分の匂いすら分からなくなるような劣悪な環境
熱帯雨林のジャングルで生活していた方が
100倍マシだった
でも、逃げられなかった
今思えば
本気で逃げようとしていなかった
もう私は獣ではなく
理性のある人間になってしまっていた
戦って勝てば
飯が食える
負ければ死ぬ
逃げて捕まっても死ぬ
そんなことを頭で考えるようになっていて
戦って勝つことが
一番良いと考えてしまっていた
人を刺す♥事と
美味い飯を食う快感が歪に混ざっていった。
そんな私の噂を聞きつけた
隣国の王女が直接来て
衛兵をやらないかと話が来た
衛兵になってからは
今まで関わってこなかった人達と関わる
私のルーツを話すと
「過酷な環境を生き延びてすごいね」とか
「自分を売った人間を恨んでる?」とか聞かれる
目の前に私を攫った奴がいるのなら
刺し♥たいとは思う
でも、お嬢様にも出会え
このパーティにも出会えた
私は幸運だった
しかし、掴んだ幸運は
必死で行きようとした結果だ
だから、この国の人間は嫌いだ
逃げも戦いもしない
何もしないで満足してるのかと思いきや
他人任せで自分以外のせいにし
愚痴ばかり
国が悪い
制度が悪い
金持ちが悪い
周りのやつらが悪い
私はそうなりたくない
自分で決め
そのことを後悔したくない
戦う時は戦う
逃げる時は逃げる
人に任せる時はお嬢様でも博史でも任せる
故郷だろうが
同族だろうが
同じ境遇だろうが
知ったこっちゃない
力があるから
役目があるから果たせ!など
知らぬ者が勝手に言ってるだけだ
力が無いというのは言い訳だ
才能や生まれで諦める理由を絞り出している
確かに身体が大きい者は強い
皮膚が硬い者は防御力が高い
足が長い者は俊敏だし
腕が長い者は射程が長い
目が横に付いてる者は視野が広いし
ただそれだけだ
多少有利ってだけ
覚悟が有れば力は鍛えられる
皆、力は楽して手にはいるものだと思っている
多少知恵を絞ったとして
簡単に力を覆せない
それさえ分かっていれば
誰だって強くなれる
私だって生まれた時
妹よりかは強かったくらいだ
国を変えたいなら
相応のリスクがある
私は故郷より
今の仲間が大事だ
このパーティが危機に陥ったら
命を賭けて危機を乗り越える
覚悟が力でもある
この国にもそういう人間が生まれてくるかもしれない
そうしたら同族が大勢死ぬ
良い、悪い、正義、悪など無い
国を変える
夢を叶える
理想を押し付ける
結局はそうゆうことだ
やりたいやつがやりたいようにやるだけだ
私もそうして
今までもこれからも
生きているのだ
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