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「酒乱」スキルで異世界生活!? 記憶をなくしたら勇者になってました  作者: あいだのも
第一章 ロマネンド王国
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第十四話 酒は自分を大きく見せたがる


朝起きて

ギルドに行くと

盛大に迎えられた

「あら、博史さん

四天王討伐おめでとうございます

王宮から報酬が出るので

直接伺ってください

とお達しが来ました」

いつも以上に嬉しそうな

キャロットさんが、手紙を手渡してくれる


「おっと…」

手が滑って手紙を落としてしまった

キャロットさんと二人で同時に屈む

「すみません…」


「いえ、はい、博史さんどうぞ」

想像以上に顔が近づいてしまった


そんなことより

屈まれて円柱状になったスカートと

ふくらはぎに押し付けられて

普段見ている以上にボリュームを増した

太ももの奥に光る

ぷっくりとした三角のオレンジ色

俺は見てはいけないものを見てしまった

直ぐに視線を外す

わざとじゃない わざとじゃない

後ろでマリーのため息のようなものが聞こえる


恐怖…

見ているのをバレた?

死んだ…?

いやわざとじゃない わざとじゃない




報酬は、この光景だけで充分すぎるほどだった




俺は自覚無しに

最弱の国で魔王軍四天王を

倒した英雄として迎え入れられてしまった


こんなことは望んでいなかった

楽しく平和に暮らしていこうと思っていたのに

やることなすこと、全てが真逆の事になっている



魔王軍四天王の討伐パレードが行われることになった

早朝から多くの人々が集まり

パレードの開始を心待ちにしていた

通りの両側には色とりどりの旗がはためき

街全体が祝祭の雰囲気に包まれていた


巨大な城門が開かれ

まず最初に進んできたのは

フローレンを含めた王都の衛兵たち

彼らは光り輝く鎧をまとい

馬にまたがって威風堂々と行進していた


馬の蹄が石畳を打つ音が響き渡り

観客からは歓声と拍手が湧き上がる

騎士たちは剣を掲げ

勝利の象徴として空高く突き上げた


続いて現れたのは

ボリス、ミジム、フェフチェンコ達冒険者一行


歩いての登場だが

ボリスは相変わらず「うえええい」だのふざけている

ミジムとフェフチェンコは意外に

手と足が一緒に出るほどガチガチに緊張してる


最後に俺たちが馬に乗せられた

勝利の英雄として

馬には色鮮やかな花々が飾られ

その香りが風に乗って

通り全体に広がっていた

俺は馬に等乗ったことなく

今にも転げ落ちそう

必死に股に力を入れて耐える


股といえば

キリヤとマリーは

こんな時にも

観客の中の好みの異性を漁っていた。


音楽隊が美しい旋律を奏で

広場全体が一つの大きな祝祭の場となった

人々は踊り、歌い

その喜びを分かち合った


パレードはそのまま王宮へと続く


俺たち四人は王の謁見の間に通された。

酔った勢いで侵入した時とは違い

明るい王宮内はとても荘厳で美しい

高価な装飾品がそこかしこに飾られており

酔って壊さなくてよかったと安堵する


「なぁマリリン

ここの盗んでいったら

いくら儲けれるかい?」

とブランが小声で言うと


「一生刑務所で暮らしていけるわよ」

マリーが真顔で答えた


「お、おう」

ブランは思ってもみない

マリーの言葉にビクッとする


笑えない冗談だ

ここに飾ってある

宝石入りの首飾りなんて

目から飛び出るような値段をするんだろう


こんな時にキリヤは隣で俯いている

「キリヤ元気ねぇな」


「折角英雄っぽくなってきたのに

ナンパ全部断られた…」

緊張感がない

これから国王と会うっていうのに

変なこと言ったら処刑される

…なんてないよな…


国王謁見の間に通された

国王と横にクリス

とおそらく周りには兄もいた


「この度は四天王撃破

大義であった

博史殿さして

パーティーの名を教えてはくれぬか?」


ぱ、パーティーの名…!?

そんなの考えてなかった

てか、飲み会のノリで集まってるだけで

パーティーだと名乗ってねぇ…


「ええと…

し、シューティングスター…」

やばっ、咄嗟に中二病的な名前が出てしまった


「シューティングスター!?

…良いではないか

星をも射止めようとする心意気

いや星を魔王に例えているのか

素晴らしい」

あ、やっぱこうゆうところは

こうゆうのが好かれるんだ

とっさに出た

恥ずかしい名前を深堀されて

余計に恥ずかしくなる


「おおお

お前に名付けのセンスがあったとはな

俺様の『キリヤ様と博史とその他』より良いじゃねぇか」


「おい、キリヤ、あたい等からしたら

その他なのはお前だからな

でも、シューティングスターか

あたいの『パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン

シューリンガンのグーリンダイ

グーリンダイのポンポコピーのポンポコナ』より良いじゃねぇか」

長い…

てか、なんで寿限無知ってるんだ?

多分俺が酔って行ったネタなんだろうけど


「ポンポコピーはお前だろ」


「はいはーい

キリヤーそこまでよー

マリリンの『ピーチユニコーンが奏でるポエム』より

大衆受けしてよいわねー」

俺らのどこにピーチ、ユニコーン、ポエムの要素がある…

チェリーユニコーンの集う酒場ならまだわかるが…

って誰がチェリーボーイだ!?


「おほん…」

国王が咳ばらいをすると皆さすがに空気を読んで黙った


「差し出がましいようだが

この場を借りて

博史殿には謝罪を申したい」

国王は仰々しい椅子から立ち上がり

頭を下げた


その様子に周りの兄弟たちがざわつく


「謝罪…ですか?」

身に覚えのない謝罪など

レストランで頼んでいない物が

運ばれて来たようなものだ

後で怒られたりすることはないが

食べてしまったとして

後に気付いたらとても気まずい


「ああ、すまない

勇者として召喚しながら

うちの魔法使いが君を追い出してしまったようだ

恨みを持ってもおかしくないのにも関わらず

この国の為に底辺の冒険者から

四天王討伐まで行って頂けるとは

代わりになるものであったら

今回の含め

大量の報酬も領地も栄誉も差し上げよう」


「いや、結構です」

冗談じゃない

報酬を貰ったら、期待をされる

領地を貰ったら、統治しなくてはならない

栄誉を貰ったら、相応の振舞いをしなくてはならない

そんなのごめんだ

今の生活は気に入っている


「な、なにぉおおう」

あ、しまったこうゆう時は

丁重にお断りするんだったか


「じ、自分は楽しく生きていきたいだけなので

今まで通り普通に生きていけば良いです


「お主には欲というものがないのか?」

国王は厳しい形相のまま

威嚇するように問いかけて来た


「楽しく生きていきたいって言うのも

欲ではないですか?」


「…がはははははは!

気に入った!

何も要らないと言うならば

一緒に慰安旅行に行こうではないか!

お前の考えや本音も聞かせてほしいしな」

り、旅行!?

それはありだな!

毎日酒を飲んで呑んだくれて

ギリギリで生きてて

羽を伸ばしたいと思っていた


てかこの国王のおっさん

一緒にって

俺より女と旅行に行く口実が欲しかっただけでは

ブランとマリーをみて鼻の下伸ばしているぞ


「俺たちも行っていいのか?」

キリヤが聞くと


「無論だ」


「ブランとマリーもそれでいい?」


「えー、あたしは報酬の方がいいんだけどい」


「ブラン、報酬を貰いすぎると後が大変なのよ」

マリーがブランに諭すようにいう


「はーい」


「決まりだな

クリス、お前も来なさい」


「はい、お父様」

となりの兄の顔がひきつった

跡目争いみたいなのもあるのだろう

そうゆうのにも

巻き込まれたくないな

クリスは巻き込む気マンマンっぽいけど


「それでいつ行くんですか?」


「何を言っておる、行くと言ったらすぐ

明日に決まっておろう」

あ、明日って…

王族って暇なのか?


「そうだぞ!博史

楽しい事はすぐにやらなきゃな!」

キリヤがそう言い

皆に特に反応がないってことは

これが普通なのか


「わ、分かりました」

こうして、俺たちは国王との慰安旅行に行くことになり

王宮を後にした




その夜

「明日から旅行かー!

楽しみ」

ブランが遠足前の子供のように言う

今日のシャツの文字は

『カタギになりました』

てか、こいつ国王の前でも

このシャツ着てたな

なんで誰も突っ込まないんだ…


「前夜祭で飲むか」

キリヤは相変わらず大学生のようなノリ


「そうだな、折角だから

景気づけに軽く飲もうか」

でも俺はそういうのが好きだ




――――――――――――――――――――――――――――――――――




目が覚めたら知らないおっさんと肩組んで踊ってた

「わっ!誰だこいつ」

咄嗟に突き飛ばしてしまった

知らないおっさんはコロンと転がり

そのまま寝に入ってしまった


「誰だ?このおっさん」


しかし、困ったものだ

軽く飲むつもりが

結局記憶も無くし

朝まで飲んでしまった…


「おい、ブラン

珍しくマリーもいるな

旅行行くぞー

起きろー!」


?良く見るとクリスもいる

もっと良く見るとフローレンもいる

そしてもっと良く見ると飲んでた奴ら

冒険者以外はいつものメンツじゃない


「博史、シラフに戻ったか」


「キリヤ、どうゆうことだ?

前夜祭にしては派手にやり過ぎてないか?」


「お前、前夜祭から記憶がないのか

言っとくけど

派手にやってんのは博史だからな」


キリヤがそう言うと

おっさんがムクッと立ち上がる

「このおっさん誰だ」


「国王だよ」

一瞬にして血の気が引く


「は、はぁ?

だっだってこんな…」

格好が普通なだけあって

良く見ると面影がある


俺は国王をおっさん呼ばわりし

肩を組み

突き飛ばし

…今日は俺の命日だろうか


「いや、いいんだ博史くん

君たちはいずれ魔王を倒し

勇者になってくれる

そうなったら

対等以上の関係になるんだからな」


ゆ、勇者…魔王…?


「博史、お前ずっと国王と肩組ながら

勇者になって魔王を倒す

って言ってたんだぞ」


「嘘だろ…」


「俺様ですら

一昨日は帰って寝よう

って言ったんだぜ」



――――――――――――――――――――――

【一昨夜の回想】



一昨日も皆で楽しく飲んでいた。

女性陣は準備があるからと先に帰り

男だけになった時間があった


「てか、男だけなるのも久々だな

キリヤと最初に飲んだ時以来か?」


「そうだーなぁ

あの時は楽しかったな

結局女の子をペロペロ出来てねぇこどね」


「ああ、楽しかった

やっぱ女がいると遠慮しちゃうもんな」


「博史はそうなのかー」


「キリヤだって最低発言減ってねぇか」


「俺様は2度同じ女を口説かねぇってー

てか、おめぇキャロットさんとはどうなんだよぉー

今日おパンツ見ていただろう」


「みみみ見てないからなぁー」


「なんだよ博史ずりぃぞ

正直に言わねぇと

ブランとマリーに

キャロットさんのパンツ覗いてたってバラすぞぉ」


「うっごめんなさい…」


「ちがああああああう

俺に謝ってどうする

パンツだよ

どんなパンツだったか

正直に言えって言ってんだよぉおお」


「お、オレンジ色でした」


「ぶぁあっかあああやるぉおおう!!!

色だけ聞いて

はい、そうですか

って終わる訳ねぇだろ

生地は?

形状は?

何回位履いたやつだ?

はみ毛は?

盛り上がりは?

太ももは?

シミは?」


「わ、分からないです…」


「分からないです

じゃねぇんだよ!!!!

脳みそひっくり返してでも思い出せ!」


「脳みそひっくり返すって…

一瞬過ぎたので…」


「かぁあああ

博史ともあろうものが情けないぜ

俺様なら動体視力

視野

視力

映像記憶

すべての能力で鮮明に記憶したのによ」

そんな、初めて会った時のような

会話を続けていると時が経つのは早く


「おい、キリヤ空が白んできたぞ

今日は旅行じゃねぇのか」


「おー博史ぃー

今日は旅行だぁ

しかも可愛い女の子がまあまあ居て

一緒に寝泊まりするんだからなぁあ」


「ちょっと早いけど

遅刻するよりはいいからな」

10分で着くところ

千鳥足で3時間かけ

迷いながらたどり着いた


「うえええーい国王

今日は楽しもうぜ」

女性陣は冷めた目

酔っぱらって現われた男どもを見る

兵士たちが武器を構える


「武器をしまいなさい

今日は無礼講だ

博史君

今日は色々と本音を話せそうだな

小声(可愛い子たちのを見たかったけど

それは今度だな)

早速宴会場に向かうとしよう」


「お父さま、

私はマリリンさん

ブランさんと…」


「よいよい。

そちらは任せたぞ」

と折角慰安旅行に来たのに男は飲み

女性は観光と離れ離れになった。



――――――――――――――――――――――――――

【回想終わり】


「ははは

やはり、酒は人の本性をさらけ出してくれるな

あれ程謙虚だが

内面は誰よりも志が高く

実力もある

だからこそ人に慕われる

クリスの言う

他の人に無い強さなのだろう

それでいつ頃出発するのか?

出来れば私も見送りに行きたいのだが」


ええええ

ヤバいヤバいヤバい

これは魔王討伐に行かなくてはいけない流れになってる

なんとか無かったことに…


「報酬は要らないと言っていたが

魔王討伐に行くのに

必要な物を買わなきゃならないだろう

報酬を受け取って貰えないか?」


「え、あ、は、はい」

結局断れず

魔王討伐に行く流れになってしまった


思い出は一切なく

多少期待した

エッチな展開も一切なく

本意ではない

決意表明だけしてしまう

慰安旅行は終わってしまった



慰安旅行の帰り道

「博史どうすんだ?

ホントに魔王討伐に行くのか」


「行きたいわけねぇだろ

今まで誰も討伐してないから

魔王なんだぞ

死ぬに決まってんだろ!」


「お、おいそんなに怒るなよ」


「あたいは博史についていくわ」


「お、良いじゃねぇか

魔王討伐

俺も夢見ていた」


「ボリス

お前いつからパーティメンバーになったんだ?」


「なんだよキリヤ

いつからそんなちっちぇえこと

気にするようになったんだ

俺はお前らに博史に助けられてから

お前らに惚れたんだ」


「確かにそうね

マリリンは博史とキリヤとパーティ組む

って言ったけど

ブランはいつの間にか入っていたしね」


「な、マリリン

あたいまでのけ者にする気かい

良いじゃんか

新生シューティングスター

あたいらでやっていけば

な、博史」


「お、おう

ん?何だこれ」

ポケットの中から

ブランが盗もうとしていた

王家の家宝である首飾りが出て来た


俺も、周りも青ざめた表情をしていると

「お、流石、博史!

あたいでさえ気が引けたのに、 度胸があるねー」


「な、なんだよ

俺は取っていないぞ!」


マリーは深刻そうな表情で

「博史、返したところで犯罪者ね

本格的に旅に出るしかないわね

魔王討伐した時にでも

返しましょう

それまで肌身離さず

隠し持っておいてね」


「おいマリーまで…

俺じゃねぇ…

はずなのに」

自分の酔った時の行動かもしれないと思うと

この『酒乱』というスキル本当に使えない…





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筆者が泣いて喜びます。


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