第十二話 知らないうちに魔王軍の四天王を倒してしまった
朝、目が覚めた。
朝日が照らし目が覚める。
とても、心地よい朝だ。
周り一面何もない
清々しいほどの焼け野原が広がっていた
どうゆうこと…?
よく観るとだだっ広い焼け野原に
宴の残骸が散らばっていた。
「ああ、博史、目が覚めたのか」
今回のキリヤは元気が無い様だ
「毎度のことだが何があったんだ?」
「何もないさ…ははは」
隣で寝ていたブランが起き上がる
「博史…昨日は激しかったね」
「何一晩の過ちを犯しちゃった風に言ってんだよ」
「そうゆうところだよ
キリヤがモテないのは」
俺とブランは何もないはずだ
非モテの俺はこんなことでは動じない
「そういえばマリーは?
一緒に飲んでいたよな?」
「ああ、マリーならそこだよ」
ブランが指さしたところに
マリーがほぼ白髪の冒険者の男を抱きしめて寝ている
羨ましいと思えないのは
男がだしを何十回もとったような
出しガラの搾りカスのようであったからだ。
その近くにフローレンまでおなじみの姿
槍にしっぽまで抱きしめて寝ていた
他にもいつもの悪ノリのボリス
ほら吹きのミジム
ビッグダディのフェフチェンコ含め
冒険者の飲み仲間が大集合していた
「なんでこんなとこで大宴会しているんだ?」
「また、覚えてないのか?
昨日はだな」
キリヤは遠い目をして語り始めた。
――――――――――――――――――――――――
【昨夜の回想】
初めはいつも通り楽しく飲んでいた。
いつもの酒場、いつもの仲間で楽しく。
『緊急警報、緊急警報、警戒レベル5
直ちに一般市民は安全地域に退避せよ』
突如街中に警報の音が鳴り響いた
「なんだ?何があった?」
外に出ると
一般市民は街の中央へ
軍は門の方へ走っている
その中にフローレンの姿があった。
「おう、フローレン、
何かあったのか?」
「ああ、お前らか、
魔王軍の幹部がここに攻め込んできたらしい」
「はあ?
魔王軍の幹部が?
なぜこんな最弱と言われるこの国に?」
「最弱だから領地を伸ばしに来たんじゃないのか?」
「いや、それは無い。
ここは魔族の領地に接していない
ここを取ったところで
周辺国家から直ぐに奪い返される
目的が分からぬ」
「じゃあ単体で攻めてきたのか?」
「そうよ」
いつの間にか、クリスが周りの兵に紛れて立っていた
「よお、クリス久しぶりだな」
「お、お嬢様駄目です!
非難しないと」
「国の危機に自分だけ安全な所に居られないわ
そうだ、博史たちも増援してくれないかしら」
「ダメですお嬢様
この国は大きくて栄えている国で安全
ビギナーの冒険者が多く
冒険者は戦力になりません」
衛兵の一人がそう言うが、クリスは首を横に振った。
「そんなことないわ
聖母マリー・イムス
裏神のブーランジェリー
酩酊の博史
ついでにキリヤ
彼らの実力はそこらのパーティとは桁が違うわ」
「おい、俺はついでかよ」
キリヤが抗議するが、今は二つ名のことなどどうでも良いはず…だが
マリーとブランの名前がカッコいい
てか、酩酊って…
「あら、私たちの事知っているのね
この前の教皇の騒動かしら
耳が早いわね」
「ですが…」
「彼らが来てくれるなら前線じゃなくて後衛に回るわ」
「ぜ、前線に出るつもりだったのですか…?
…分かりました。後衛で支援魔法だけ
危なくなったら直ぐに退避しますからね」
「だって、どうする博史?」
「一度飲んだ奴は皆友、酒友だ!
酒友が危険にさらされるのを助けられるなら助けよう
皆の者ぉおーいくぞぉおおおお!!!」
博史のその一言で、冒険者たちは城門へと向かった
魔王幹部は門を睨むように立っていた
コウモリの羽に青白い肌、二つの角、
そしてブツブツのできものに左右で歪んだ醜い顔
悪魔だ…
魔王軍の幹部には四天王の四人がいる
そのうちの一人は醜い悪魔だという情報がある
魔物、魔人と悪魔は全く違う種族らしい
魔物と魔人は本来魔界に住んでいたが
初代の魔王が世界を変えた
その名残で人間界に魔物や魔人が住むことになる
初代魔王…迷惑な話だ
悪魔は本来冥界に住む種族
何故悪魔が人間界にいて
魔王の下についているのか謎だが
それにしても…
「女、おんな、ONNA、オンナァアア!!
うひょおおお女がいっぱいいるぜぇええ!
おねぇちゃーん俺といい事しなぁーい?」
この顔でこの言動はアウトだ
てか、この感じ既視感がある
皆の視線が隣のキリヤに集まる
「なんだ?俺様の顔に何かついているか?」
「いや、あいつ、お前と似てるなと思ってな」
と、ブランが言うと
「どこがだ!俺様の方がイケメンだろう」
そう、イケメンだから
キリヤの言動がギリギリアウトで済んでいたんだ。
「あなた、彼と魂を分けた双子じゃないのぉ?」
マリーがそう言うと
「なんか、馬鹿にされているようでムカつくな
そんなに言うなら俺様が一瞬で終わらせてやる
集まれ魔力、ライジングブレードぉお」
キリヤの片手剣が光り悪魔に切りかかる
悪魔は最低限の動きで避けて
「つまらねぇ男は要らねぇ」
と言ってキリヤを蹴り飛ばす
「うわ、男に対する態度までそっくりだね」
ブランが呆れたように言う
そういえば、キリヤの他の男に対する態度なんて気にしなかったな
「そなのか?」
「ええ、ボリスやミジムや博史に対する態度は普通だけど
自分が気に入らないフェフチェンコに対する態度はあんな感じだ」
蹴り飛ばされたキリヤがそのまま帰ってきた
「なんか俺様のこと言ったか?」
「やっぱあんたにそっくりねって」
冒険者メンバーの中からフェフチェンコが
「うおおおお!
あいついつも俺のこと下に見て馬鹿にしやがって」
と言いながら悪魔に向かっていく
それを皮切りにキリヤに不満を持つだろう男どもが突進していく
「ポイズン・ゼロ」
悪魔が呟くと、向かっていった冒険者たちが毒に犯され
バタバタと倒れていった。
「フェフチェンコ!」
「女オンナァアア」
悪魔が叫ぶと女性冒険者は引きつった顔をする
怯えているのかと思いきや
「ああ、キリヤに似ているのか
道理で絡み方がウザいと思ったわ」
と愚痴を言っていた
女性陣にとっては顔の問題では無かったらしい。
それを聞いたキリヤは悪魔に蹴飛ばされた以上のダメージを受け
戦闘不能になった
「エクストラ・ヒール」
マリーがそう言うと突っ込んでいった男達の毒と体力が回復する
それを感じてマリーが恍惚の表情を浮かべる
「む、何…
貴様がやったのか
性欲任せに一番抱けそうな女が多そうな
最弱のこの国に来たが
俺の毒を全て浄化するとは…
俺は魔王軍四天王ジュラサン名を名乗れ」
「私はマリリンよ」
「え、マリリン…なんて可愛い名前だ
俺がお前を一生守ってやる
だからあそこの茂みに行こう」
「嫌よ
マリーの好きなのは死にかけの男
あなたのように死んでも死ななそうな男はタイプじゃないの」
マリーの判断基準はそこなのか?
「ブランはいいのか?
あいつめっちゃ強そうだぞ」
「い、いいのよ
言ったでしょ、強いのが好きって言ってたのは
弟を取り返す戦力が欲しかっただけで…
よ、容姿の問題じゃないんだからね!」
「ふーん
じゃあ一緒にあいつ倒すか」
「俺を倒すだと若造が
お、隣の子可愛いな、あの茂みに…」
ジュラサンがブランに狙いを定めた瞬間
「ディムーブ」
「はっ動きを封じる魔法か、
この国のレベルで効くわけ
うおっ!!…」
ブランの魔法が悪魔ジュラサンの動きを完全に封じる
その隙に俺がタガ―で斬りかかる
「フン、そんな攻撃効くわけ…
待てよ、その短刀…まさか」
ジュラサンが真っ二つになる
「うぐぐ…はぁはぁ、まさか、そんな…
ここは一旦、回復して…」
「総員退避!」
フローレンの声が響き渡り
見上げると、クリスがどでかい火球を浮かべていた
「博史さんありがとうございます
ジュラサンの外皮は魔法を通さず
私に出来ることは無いかと思っていましたが
まさか真っ二つにしてくれるとは
しかも確実に当てられるとうに拘束まで…」
クリスがそう言うと
どでかい火球をジュラサンに投げて来た
「お、おい、ちょっと待て
俺は、女を漁りに来ただけで…」
クリスの火球はゆっくり、ゆっくり
でも確実にジュラサンに近づいていき
「ジャッジメント・ヘル」
衝撃と炎で周り一面が焼け野原になり
悪魔軍四天王幹部、悪魔ジュラサンは消滅した
一向は火球で温まった地面が
心地よく暖かかったので
そのまま宴をした
―――――――――――――――――――――――――――
【回想終わり】
「…というわけだ」
キリヤは、そう言ってため息をついた。
俺は、またとんでもないことをしでかしてしまったらしい。
だが、そのおかげで、街は救われた…のか?
結果的に、またしても俺たちの金は底をつき、壮大な宴の残骸だけが残った。
明日の飯の心配をしながら、俺は焼け野原に広がる青空を見上げた。
●魔王城
「ほほほほ報告します
四天王悪魔のジュラサンがロマネンド王国にて消失しましたあがが」
魔王は報告に来た魔族の頭を握り
「頭が高い」
リンゴのように握り潰した
「あぎゃああああ」
周囲に断末魔が響き渡り
周囲に飛び散った破片が1つにまとまり
元の人間の姿になり跪く
「ロマネンドか…」
魔王は先ほどの事を意に介さず
窓の外を眺めながら呟く
「私が向かいましょうか?」
どこからか現れた者が魔王の横で跪いて魔王に話しかける
「貴様か、その移動、煩わしい」
魔王は変わらず窓の外を向きながら話す
その言葉により一層深く頭を下げる
逆に跪いていた男の魔族が立ち上がり
「そそそそそれなら、私達がぐぎゃああ」
どのような移動方法なのか
一瞬で魔族の横に現れ蹴り飛ばす
魔族は頭から壁に激突し
卵のように頭が飛び散ったが
ぐじゅぐじゅと音を立てながら再び元の形に戻り
蹴飛ばされた壁際で再び黙って跪いた
その者も魔族が元に居た位置に跪き
「私に行かせてくださ…」
と言いかけた所で魔王がドンと足を踏み鳴らす
「我が行く」
その者は地面に跪きながら
頭が付くくらいまで頭を下げ
「魔王様は城を離れるべきではありません
どうか四天王1位の私に行かせて下さい」
「我に指図するのか」
魔王の魔力が膨れ上がり
威嚇する
「ひいいいい」
魔族は自分とは桁が違う魔力に
びじゃびじゃに分散して地面に這いつくばった
「四天王が一人討たれた位で魔王様が直々に出てしまっては魔王軍の尊厳が失われてしまいます
ここは同じ四天王で格上の私が行くのが妥当だと思います」
魔王の覇気に臆することなく話を続ける
「尊厳か…確かにな
我がジュラサンごときの仇として動いたと見られては癪だ
行って来い」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
博史 レベル: 45(四天王討伐の経験値により大幅上昇)
キリヤ レベル: 28
ブラン レベル: 55
フローレン レベル: 65
クリス レベル: 52
マリー レベル: ?
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