表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「酒乱」スキルで異世界生活!? 記憶をなくしたら勇者になってました  作者: あいだのも
第一章 ロマネンド王国
10/73

第十話 ブーランジェリー


あたいは幼い時から、お伽噺に出てくる勇者と姫の末裔なのだと言い聞かせられた。


山間に一族だけで住み

遠い親戚の誰だか知らないおじさん数人に

戦闘やらサバイバル術やら教え込まれた


あたいは生まれつきエクストラスキルを持っている

有望株として将来を期待され育てられた

でも、あたいは不器用だった


期待は失望に変わり

あたいを指導していたおじさんたちは

一人、また一人といなくなっていった



表ではお伽噺の一部を切り取り美化した宗教が流行っているらしく

真実は一族内部だけで語り継がれ

より深く裏、闇に潜っていった


勇者と姫が子を成し

当時のロマネンド王国に渡された莫大な資産も

とうの昔に底をついてた


今は美談ばかりに焦点が当たり

勇者のお伽噺を真に受ける人も少ない


家族の愚痴は増えていった


そんなあたいに弟が出来た

暗闇を照らす一筋の光明のように感じた

弟は特別何か才能があるわけではなかったけど

そんなことは関係なかった

ただ、そこにいるだけで

あたいは救われていた


だから弟が誘拐された時は許せなかった

家族の人たちは「また作る」と言い、あっさりと諦めていた

それも許せなかった


あたいは、ついてきてくれる僅かな者たちと共に、野に下った


盗賊として生き、弟の情報を探った

その時のあたいは必死だった


力も、情報も何もかも足りなかった

だから強い人が欲しかった

でも、そんな人は決して現れなかった


裏で名の知れている人物たちにも会ったが

皆、口先だけの小物ばかり

弟の情報どころか、あてになる強さすらなかった


そんな中、あたいを一瞬で制する者が現れた

一緒にいる金髪のクズ男は実力だけはありそうだったが


もう一人は地味な男だと観察していた

そんな男に、あたいが一瞬で捻じ伏せられた


この人だ、この人と繋がりを持てれば

弟を救う力になるかもしれない

そう思い、彼に関係を迫った


博史と男女の関係にこそなれなかったが

王女と繋がりを持てた


クリスは、あたいが長年追っていた情報をくれた

教皇が弟を誘拐した、と


実際は少し違う

教皇が勇者の血筋の子を高値で買った

クリスがどこまで知っていたのか分からない


クリスの思惑もあっただろうが

今更どうでもいい


全てがどうでも良くなった時

死のうと決意した


自ら命を絶った感触はあった

でも、生きていた時

確かに何かが変わった


だからこそ、一度死んだことのあるという、博史の言葉が深く胸に刺さった


あたいは思い返せば家族のため、弟のこと、

人との関係に振り回されて生きてきていた


それを全て捨てて生きるなんて考えたことも無かった


酒場やパーティに入るようになってから

弟の事が全てじゃないと思う時もあった。


なんだか分からないけど

皆が楽しそうだった

あたいはずっと皆と違うと思っていたけど


自分も皆と一緒でいいんだ

と思えただけで涙が溢れてきた


特に博史には申し訳ない事をした

高額な防具を奪い、売り払った

必ず返すといったら

「あー酔ってて覚えてないからいいよ」

と笑って返された


そう言われても博史はあたいの恩人だ

この男について行こうと決めた


あたしは、ブーランジェリーじゃない

ただのブランとして、この先を生きていこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ