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 ――なんと嘆かわしいことか。あのロベルタ公爵家の次女であるリーベミオ・ロベルダ令嬢が狂ってしまった。

 ――幼いながらに令嬢の鑑だと言われ、王太子であるレリオネル・ユウディスの婚約者であった彼女の身に何があったのか!?

 ――もしかしたら誰かに脅されての行動ではないかと友人たちは語る。

 ――元婚約者であるレリオネル・ユウディス殿下は、令嬢の乱心に心を痛めているご様子。痛まし気な表情で「彼女に昔のように戻って欲しい」と語っている。

 ――レリオネル・ユウディス殿下は令嬢との婚約解消後、まだ婚約者を決めてはいない。これはもしかしたら令嬢への未練があるのかもしれない。




 あることないこと書かれているのは、国内で発行されている新聞だ。




 リーベミオはそれを見ると、なんて馬鹿らしいのだろうと冷めた気持ちになってならない。

 彼女にとっては大切な王子様が居なくなってしまったという一大事の事態だ。

 だからこそ、自分の意思でこういう風に生きることを決めたわけである。リーベミオ自身にとってはこのような行動は当然のことではあった。

 それを周りはあることないこと口にする。そのことをリーベミオは嫌な気持ちでいっぱいになる。




(昔の私のことなんて、あの人は知らない。だって私の大切なレリ様本人ではないから。周りからただ私の話を聞いて、知らないのに知ったふりしているだけなのかな。……なんか、それは嫌だな。他の人はそういう違和感気づかないのだろうか?)




 リーベミオからしてみれば、それも不思議だった。



 大切にしている人が変化していけば、それだけ違和感を感じるものは多いとリーベミオは思っていた。

 だからレリオネル・ユウディスを大切に思っているはずの王家も、その周りにいた人々も、使用人達も特にリーベミオのような行動を起こしている者達は全くいないようである。



「ああ……本物のレリ様は、もっともっと素敵なのに」



 思わずいら立ちを感じたリーベミオは、思わずと言ったように持っていた羽ペンを机にさしてしまう。

 そこでリーベミオははっとする。




(駄目だわ。冷静にならないと……。まぁ、こういう傷は私がおかしくなったと感じる要因にはなるだろうから、いいけれど。まだまだ私はおかしいと思われている方が動きやすい。私がまともになったら面倒だもの。ふぅ……)



 リーベミオは自分を落ち着かせるために思考をして、息を吐く。

 彼女は大切なレリオネル・ユウディスが居なくなったことで、これからのために冷静は装っているがたまにこうして情緒不安定に陥ることはある。




「一先ずは、魔法をもっと上手く使えるようにならないと」




 彼女はそう口にすると、魔法に関する記載のある本を読み漁る。その中にはリーベミオの年齢では読むのが難しいとされるものさえも含まれている。

 そういうものでもリーベミオは理解し、魔法についての練度を深めていく。




 特に闇の魔法を、リーベミオは学ぶ。

 これに関しては人の精神に影響するようなものなども多々ある。それに闇魔法の中には、死者をよみがえらせるようなものもあるらしいというのを知ったので、余計にである。

 厳密にはレリオネル・ユウディス本人がどうなっているかはリーベミオには判断がつかない。少なくとも今の王子様は別の何かが動かしている。




(身体から追い出されてしまっているのか、それとも内側に閉じ込められているのか……。考えたくないけれどレリ様がもう二度といなくなっていたら……それだったら死者の国からでもレリ様を呼び戻せればいいもの!! うん、私は絶対にレリ様を何が何でも取り戻すの)




 一瞬、そんなことを考えながらリーベミオは決意する。




 貪るように、だけど周りからはおかしくなったと認識されるようにと気をつけながら魔法を学ぶ。

 そうしているうちにリーベミオの元を訪れる者達の姿がある。

 それはリーベミオの魔法の才能を高く評価している魔法使いや元々親しくしていた貴族の子供達の一部である。

 どうやら彼らは周りを説得して、可哀想なリーベミオ・ロベルダのことを救おうとやってきたらしい。

 当の本人は、そのようなことなど欠片も求めていない。だけれども周りは以前のリーベミオ・ロベルダを望んでいる。




「リーベミオ様、何かお悩みになられているのならば一先ず私に弟子入りしてみませんかな?」



 元々リーベミオに魔法を教えていた魔法使いはそう口にする。



 リーベミオを心配している風の彼に、彼女は軽くレリオネル・ユウディスが別人になっていることをほのめかす。……これで魔法使いがリーベミオの言うことを少しでも受け入れたのならば彼女の将来はまた変わっただろう。

 だけど彼女の想像通り、その言葉をほのめかした彼女を見る目は――まるで理解出来ないようなものを見る目だった。冗談で言っているではなく、リーベミオがあくまで本気で告げるから余計に彼らは彼女がおかしくなったと恐れるのである。




「リーベミオ様!! 私になんでも話してください。私はリーベミオ様のことを救ってみせますわ」

「リーベミオ様、レリオネル殿下との婚約解消は残念でしたね。私が代わりに傍で支えさせていただきます」




 そう口にするのは、とある兄妹で。彼らは元々リーベミオを慕っていた者達である。

 リーベミオを救うなどと口にされても、彼女は心が動かない。



「私は自分のやりたいようにしているだけで、貴方達に救われる状況ではないわ」



 そうリーベミオが口にしても、自分に酔っているのか、彼らからしてみればリーベミオが何かの要因でそういう状況になってしまっているだけだとそう信じている。



 ……リーベミオはそんなものがいらなくて、本当に煩わしかった。




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