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乱心令嬢リーベミオのたった一つの望み  作者: 池中織奈
リーベミオ 十三歳
28/39



「なかなか見つからないね、レリ様」

『うん、そうだね』



 相変わらずリーベミオとレリオネルは旅を続けている。



 時折問題のありそうな街で、自分達だけではすぐに解決出来なさそうなものを見つけると【エクスの花】や【オランジュスカ商会】を派遣し、問題解決に勤しんでいる。

 その過程で人員増加に至ったり、【ニクスの花】と【オランジュスカ商会】はさらに勢力を伸ばしていると言えるだろう。




 現在、二人が居る場所は巨大にそびえたつ山の上である。

 当然、その場所には魔物の姿も多くみられる。人があまり足を踏み入れない自然地帯は魔物達の住処である。寧ろ人であるリーベミオの方が部外者のようなものと言える。




「遥か昔、この山の山頂に女神が降り立ったって言われてるらしいけれど、神様って本当にいるのかしら」




 その山には、いくつかの逸話がある。その中で最も有名なのは、神がその地に舞い降りたとされていることである。

 人々の危機に降臨した美しき女神。それはこの国でも信仰されている存在だとは聞いている。

 リーベミオは、神と精霊の違いを知らない。

 両方とも人々に信仰されている存在であるとはいえるが、その違いは? と言われると分からない。



『どうだろうね。そういう存在が居るのならば、まだ話が通じればいいけれど』

「そうね。ちゃんと話し合えればそれが一番いいわ」



 そんな会話を交わしながら、彼らは時折襲い掛かってくる魔獣を蹴散らしつつ、山頂へと到着する。




「凄い景色だわ。雲よりも高い所にあるのね」

『そうだね。登るのにもかなり時間がかかったし、現実味のないような光景』



 リーベミオとレリオネルの前には――広大な景色が広がっている。

 その山の頂は、雲よりも高い位置にある。そしてそこでは、雪が降っている。

 幻想的で、現実味のない光景。

 確かに此処に神がいると聞けば、それは納得できるかもしれないとも彼女は思った。

 これだけ巨大な山の頂にやってきたのは当然初めてである。見たことのない景色がその場には広がっていて、その光景には息をのみそうになる。




『リーベ、体調は大丈夫? 街の人達が神の元へ近づくと体調を崩す者が多いと言っていたから心配だよ』



 そう、その山の頂に辿り着くことは人の身では出来ないなどとも言われたのだ。

 その山の上へと進めば進むほど、人の身では耐えきれずに体調を崩すものが多いのだと。

 それもあってレリオネルは心配した様子を見せている。



「大丈夫よ。確かに変わった魔力は流れているし、違和感はあったけれど自分の魔力で防いでいるから!」



 その場は確かに、地上とは異なる感覚があるとリーベミオは思っている。

 ただ自身の魔力で調整をしているので、特に問題はなにもないのである。リーベミオの表情を見て、本当に大丈夫なのだろうと理解したらしいレリオネルはほっとした様子を見せる。




「レリ様と私だけで、こんな特別な景色を独占できるなんて本当に素晴らしいことですわね」



 そう言いながらにこにこしているリーベミオは、この状況を本当に楽しんでいるように見える。



『うん。僕もこうやってリーベと一緒にこんな光景を見られて嬉しいよ』



 リーベミオからレリオネルの表情は見えないが、それでもレリオネルが喜んでいるのが分かり、リーベミオも笑った。



「神か、精霊かどちらかでもこういう場所にならいてもおかしくないなと思うのだけど、今の所どこにいるか分からないわ!」

『そうだね……。僕も分からない』



 そういう存在を目当てに、こうして二人は此処を訪れている。

 ただ今の所、そういう存在が居る気配がない。



 きょろきょろとリーベミオはあたりを見渡す。それをしている最中に、自身の魔力を薄く周辺に流す。

 視覚的な情報も重要だろうが、それよりも魔力を使って気配を感じとる方がずっと正確なのだ。




 そうしてしばらく景色を楽しみながら過ごしていると、リーベミオは何かを感知する。




「レリ様、何かいる!」

『うん。僕も感じ取れるよ、リーベ』



 何かが、その場にいることが分かった。

 見渡す限り何処にもいないはずなのに――確かにそこにいる。

 リーベミオは警戒心を隠せない表情を浮かべている。




「そこにいるのは誰!?」



 そして、そう叫んだ。




 ――その声に呼応するかのように、空間が揺らぐ。

 そこには赤髪の長髪の男性の姿がある。




「なんだ、私達に用があるのではないのかい?」



 そして彼は、そんなことを口にした。



 リーベミオも、レリオネルも突然のことに驚く。その存在が何もないこと所から現れたように見えたこと、そしてなぜだかこちらのことを知っているような素振りであること。

 そのことに二人は驚く。

 相手が警戒しなければならない存在であることは確かである。ただ、彼女は一つの可能性を感じていた。



「――あなたは、精霊ですか?」



 もしかしたら、目の前の存在は彼女が出会いたいと願っていた精霊でないかと。



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