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乱心令嬢リーベミオのたった一つの望み  作者: 池中織奈
リーベミオ 十三歳
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「貴方、思ったよりも強くないわね? この程度で、【ニクスの花】の実権を握ろうとしているなんて、愚かね」




 地面にひれ伏した男性達を前に、不敵な笑みをリーベミオは浮かべている。




 十三歳になったリーベミオは、【ニクスの花】と【オランジュスカ商会】の一部の者達とは顔合わせが済んでいる。何年も前からこの地で力をつけてきた傭兵団と商会。

 その二つの勢力を作り上げたのがリーベミオ・ロベルダというまだ子供ともいえる少女だと知った者達の反応は様々だった。



 ――傀儡だとか、権力があるからこそカセルとスーラの実績を奪っているだとか。



 【ニクスの花】の者達は、傭兵団というだけあって、実力主義である。

 力を持たないもののいうことは聞きたくないと、そう思っている者が多いのだ。

 そういうわけで、リーベミオが表舞台に少しずつ立つようになって以来、こうして戦いを挑まれることが多かった。




 カセルとスーラが代わりに戦おうとしていたものの……、リーベミオ自身はそれで認められても嬉しくないので、自分で対応するようにしている。




 彼女はレリオネルが居なくなった日より、ずっと自分の力をつけてきた。リーベミオと再会出来てからも、これから先、レリオネルと共に生きていくためにもっと力を身に着ける必要があるのだ。



 闇、水、地の三つの属性の魔法を、満遍なく磨き続けた。

 それに加えて武器の扱いも学んでいる。

 実戦経験をひたすら積んでいき、こういう傭兵団の面々との戦いに関しても今の所負けなしである。



「は、はい……」

「も、申し訳ございません。団長」



 その力を前にした者達は、首を垂れて、彼女のことを頭として認めていく。

 美しく、不敵さを持ち、この傭兵団を大きくした少女。――彼女は自分の名前を名乗りはしないので、団長呼びをされている。



「貴方達、私の下に着くのならばくれぐれもちゃんと私の言うことを聞くのよ?」



 リーベミオがそう言い切れば、傭兵団の一員達はこくこくと頷く。

 ぽーっとした様子で、リーベミオのことを見つめている。

 こうしてリーベミオは着実に、自分の味方というのを増やし続けている。




「カセル、他にも私と戦いたい者はいるの?」

「本日はおりません」

「分かったわ。じゃあ、私は盗賊団でも倒してくるわ。確か、依頼が来ていたわよね?」

「はい。私もご一緒します」

「いえ、いいわ。カセルは別の仕事をしてなさい」



 リーベミオはそう口にしたかと思うと、そのまま【エクスの花】の本部を後にする。

 基本的にまだ表舞台に立つ気のない彼女なので、ひっそりと去るのである。




 【ニクスの花】には、様々な依頼が舞い込んでくる。その依頼を彼女が一人でこなすことも多い。

 ……最も、その隣には一般的には姿が見えないレリオネルは居るわけだが。



 リーベミオはレリオネルと二人で過ごせる時間が好きだ。

 他の誰かについてこられると、レリオネルとの時間が減ってしまう。



 それにリーベミオは、自分の手の内を全て周りに曝そうとは思っていない。カセルやスーラのことはそれなりに信用はしているだろう。とはいえ、彼女は用心深い人間だった。

 だから、よく一人で行動をしているのだ。




『リーベ、あまり無理しないでね』

「ええ。もちろん。私は負けないようにするもの。それに私がピンチだったら、レリ様が助けてくださるでしょ?」

『うん。リーベに何かあるのは嫌だからね』



 件の盗賊団の元へと向かう最中、リーベミオはにこにことしていた。



 それはレリオネルと共に二人で過ごせるからだ。盗賊討伐とはいえ、彼女にとっては所謂デートのような感覚なのかもしれない。

 レリオネルは実体を持たないが、魔法により周りに干渉することは出来る。彼はリーベミオに何かあればすぐさま魔力を使って、リーベミオを守るだろう。



(レリ様が私のことを守ってくださるなんて、本当に幸せなことだわ。でもレリ様の手はなるべく煩わせないようにしないと)



 リーベミオはレリオネルに守られることを喜ばしく思っているが、頼っているだけで過ごすつもりはない。

 自分の手でどうにか出来るのが一番良いと思っている。



(レリ様、笑っているんだろうな。……フィーチャレエに聞かないと、レリ様がどんな表情をしているか分からないのは不便だわ。どうにかしてレリ様の姿見えて、声が聞こえるようにしないと!! それに私はレリ様との子供が欲しいのだもの! 今のままではその目標が達成できないわ)




 彼女の目標は、幼いころから変わらない。

 大好きなレリオネルの奥さんになって、子供を産んで、そして幸せに生きていきたい。共に歩んでいきたいとそれしか考えていない。




 彼女は相変わらず世間では乱心令嬢だとか、落ちぶれた公爵令嬢だとか好き勝手噂されているが、全く気にした様子はないのであった。



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