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「レリ様、私、ずっとずっとレリ様を探していたの。だから、レリ様が居てくれて嬉しいの。もしかしたらレリ様がこの世界から消えてしまうのではないかって思っていたから。あ、でもね、レリ様。私はそうなったとしてもレリ様をどこからでも取り戻すつもりだったの」



 フィーチャレエがレリオネルが居る場所が何処かというのを伝えると、そちらに向かってリーベミオは一生懸命話しかけ続ける。

 他のことなど目に入っていないとでもいう風に、年相応に笑っている。



 フィーチャレエがレリオネルの言葉を通訳すれば、それだけで花が咲くような、本当に幸福そうな笑みを浮かべる。



 その笑みを見るとドキリッとして、その度にレリオネルの視線が鋭くなる。

 リーベミオの愛は重いだろうが、それと同じぐらいにきっとレリオネルもリーベミオを大切に思っているのだろうということはフィーチャレエには分かった。

 通訳として入らなければならないフィーチャレエは、正直滅入っている。だって、リーベミオとレリオネルは、いちゃついているのである。

 その間に入らなければならないことに……何とも言えない気持ちだ。




「……主様、あの、そろそろ説明していただけるとありがたいです」

「レリオネル・ユウディスとは……主様の元婚約者の名前ですよね?」


 そんな風にカセルとスーラから声をかけられたリーベミオは、そう言えば二人も居たんだったとようやくそこで思い出す。

 大切な王子様がいるとなると、それ以外の物は目に入っていなかったのだ。



「説明……そうね。端的に言うと、私が乱心したと言われる時期の少し前に、私のレリ様が居なくなってしまったの」



 どう説明したらいいかと思考し、一瞬躊躇を見せたのち、そう伝える。

 レリオネルのことをリーベミオはカセルとスーラに伝える気もなかった。こういう説明しなければならない状況に陥らなければ何も言うことはなかっただろう。

 だけど、こういう状況になったので仕方がないと説明を始める。




「いなくなった……?」

「でも王太子殿下は……」

「レリオネル・ユウディスの姿をした別の何かはいるわ。だけれど、私のレリ様は居なかったというのが私は分かったの。だから私は家族にレリ様が居なくなったと口にした。それが私が乱心令嬢と呼ばれるきっかけね」




 リーベミオが冷めた目付きでそう告げる。その言葉を聞いて、何とも言えない表情になる。

 彼女が乱心令嬢と呼ばれるきっかけがそんなところにあると思っていなかったのだろう。




「誰も私のことを信じなかった。だから私も周りに期待するのはやめたの。私は自分の力でレリ様を取り戻すことを決意した。私にとってレリ様が居ないことの方が一番嫌だったから。だから、今はレリ様を取り戻すために行動している最中なの。それでようやくフィーチャレエのおかげで、レリ様がこの場にいらっしゃることが分かったわ。本当になんて素晴らしいことかしら!」



 意気揚々とそう語るリーベミオには、悲壮感などは欠片もない。ただ彼女は、レリオネルがきちんとまだ存在していたことを喜んでいる。



「……主様は、前々から敢えて乱心令嬢と呼ばれるように動いているように見えました。それもその……レリオネル殿下を取り戻すために?」

「ええ。だって私が真っ当な公爵令嬢として生きていたら、他に婚約者を作ることになるでしょう? それにあのレリオネル・ユウディスの視線とか、私は嫌いだったの。そのまま婚約者としているのも、レリ様じゃない人をレリ様と呼ぶのも嫌だった。それに私の話も聞いてくれなかったもの。そういう人たちは要らないの」



 リーベミオははっきりとそう言い切って、周りを見渡す。



「フィーチャレエは、私の下へついてもらうとして」

「決定事項かよ」

「カセルとスーラは私の話を聞いた上で、私の目的を叶えるために協力してくれるつもりはある? ないなら、貴方達の記憶、無理やり消すけど」



 カセルとスーラに軽い調子でそういうリーベミオ。

 驚いた顔になる二人にリーベミオは笑いかける。




「私をおかしいと言ったりする人は、要らないの。私はレリ様を何が何でも取り戻すの。レリ様と一緒に生きていくようにするの。だからそれに賛同しない人は不必要だわ。ただフィーチャレエだけは、嫌がっても私がレリ様と話せるようになるまでは傍にいてもらうけれど」



 まるで決定事項のようにそう告げる彼女は、全くぶれない。



「……私はもちろん、主様に付き従います」

「私もです。主様の目的には驚きましたが、それでもそれを教えていただけたことが私は嬉しいと思います。主様がそれだけレリオネル殿下のことを大切に思っているということですからね」



 カセルとスーラはそれぞれ、真剣な表情でそう言い切る。

 ――彼らにも躊躇はない。

 その様子を見て、リーベミオは微笑んだ。




「貴方達が引き続き私の下についてくれることは喜ばしいことだわ。実はというと、記憶を消す魔法はまだ不完全なの。出来れば使いたくなかったから」



 闇魔法にそういうものはあるけれども、精神に影響するようなものだと当然難しいのだ。



 それにカセルとスーラのことをリーベミオは特に嫌いではない。だからこういう形になったのは良かったと素直にリーベミオは思っているのだった。



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