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 リーベミオはその小屋の中に、隠し財産も念のためおいている。銀行にもカセルとスーラの名で預けてはいるものの、自分の名で預けているものはない。



 流石にいきなりリーベミオの口座にお金が大量に振り込まれれば、ロベルダ公爵家から何かしらの接触がある可能性がある。



 比較的自由に過ごしている彼女だが、その行動範囲は狭い。

 まだ幼い身なので、そこまで自由に動けないのである。



(……他国とかで銀行口座を作りたいわね。そのためにはもっと私という存在から、関心を外してもらう必要もある)



 リーベミオ・ロベルダの噂がそれこそ王都で一切されなくなるほどの、そのぐらいまでに埋没していたいと彼女は思う。

 そうでないと、動きにくいから。



(今はカセルとスーラが居る。それに【エクスの花】と【オランジュスカ商会】という私の手足になれる存在がいる。だけど一人でもどうにか出来るようにしておいた方がいい)



 彼女は常に、先のことを考えている。幾ら自分のことをカセルとスーラが慕っていても、離れていく可能性があることを頭に思い浮かべている。



 彼女自身が他人に対する信頼がないのは――過去の経験があるからかもしれない。

 心からの言葉を、家族も周りも信じなかった。そして彼女のことをおかしいと口にした。

 その時の記憶は、彼女の頭に刻まれている。




(レリ様と同じ事象が世界で起こってないかを情報を集めさせているけれど、中々見つからない。というか、そういうことが公に起こっているならもっと騒ぎになるはずだもの。ただ前例がなかったとしても、どうにでもしてみせるけれど!! 今、必要なのって、レリ様がどこにいるか探すことよね。レリ様……どこにいるんだろう? レリ様の体を動かしているのは少なくとも別人だけど、内側にいるのか、それとも別の場所にいるのか)



 いくら考えても……、正直リーベミオには分からない。



 彼女はあらゆる可能性を、頭の中に思い浮かべている。その結果、死者蘇生などの情報も集めている。

 基本的に記録として残されているそれに関しては、忌避されるものである。

 何かを犠牲にした上で、叶えようとして失敗した記録。

 リーベミオ本人の考えとしては、レリオネル・ユウディスが手に入るのならばそれでいいと思っている。



(それは最終手段。レリ様は誰かを犠牲にした上で取り戻したら、悲しまれる可能性が高い。なるべく自分の力だけでどうにかした方がいいわ)



 彼女は目的のために何かを犠牲にすることは厭わないという精神は持ち合わせている。



 とはいえ、何よりも重要なのはレリオネル・ユウディスのことである。

 彼女の王子様を取り戻せたときに悲しまれてしまうようなことをやる気はないのである。

 全ての基準が、大切な王子様。




(そもそも記録に残されている死者蘇生に関しては、失敗した記録しかない。きちんとした方法でレリ様を取り戻さないと、レリ様風の別の何かだと要らないし……)



 リーベミオは死者蘇生に関する資料をいくつも読み漁った。それこそ他国の言語で記述されているものも見つけ次第、集めて読んでいる。

 幼くしてそれだけの言語を読めるのは王妃教育の賜物である。またそれだけではなく、レリ様のためにと学び続けた結果である。

 彼女はしばらくの間、その小屋で過ごした後、その場を後にする。



「レリ様、また来るから」



 それだけ口にして、山を下った。



 真夜中の時間帯に、彼女はひっそりと誰にも気づかれないように移動している。次に向かった場所は、彼女の拠点の一つの建物である。

 傭兵ギルドと商会の設立、そしてその利益により彼女は一般的に考えてお金を所有している。



 そういうわけでいくつかの拠点を構えている。



 それもすべてレリオネルを取り戻すための準備である。

 彼女の毎日は常にそんな繰り返しだ。レリオネル・ユウディスを取り戻すために自分の力を磨きつづけ、傭兵ギルドと商会を発展させるための案を考え続ける。そして彼女の王子様を取り戻すために何かしらの事例がないかと調べ続けている。



 乱心令嬢と呼ばれ、部屋に閉じこもって、堕落したと言われているがそんなことは全くないというのが彼女を見ると分かるだろう。



 さて、そうして過ごしている中でリーベミオは一つの報告を聞いた。



「リーベミオ様、幽霊を見ることが出来るという方がいるそうです。詐欺師である可能性もありますが、一度お会いしてみてもいいかもしれません」



 それは幽霊を見ることが出来るという噂をされている人物がいるということ。

 スーラはなぜ、リーベミオがそういう情報を集めているかは聞かされていない。しかしその言葉を聞いた時、彼女の表情は大きく変化した。



 「ええ。お会いする手はずを整えて」



 そしてリーベミオはそんな命令を口にするのだった。



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